鴻上尚史 『八月の犬は二度吠える』
2011年3月23日 読書
講談社、2011。小説(特にエンタメ系のそれ)としては、ちょっといまいちどうかな、と思ったけれど、読んでいくうちに意外と面白く感じられてきて…、点数を付ければ、63点くらいで。内容は、“青春に悔いありもの”というか、“青春やり直しもの”という感じかな。文体というか文章というかは、センテンスがシンプルで短め、あまり小説っぽくないかもしれない。ときどき使われている比喩もかなり陳腐な感じ。あ、ただ、そのせいか作中に挟まれている、言葉遊びに満ちた(?)『八月の犬通信』が、逆に目立っていていいかも。※以下、ネタバレ注意です。
物理的に(?)“浪人生が出てくる”と言えるのは、「第一章」までかな(~p.90、「プロローグ」「エピローグ」を除いて全9章ある)。小説の冒頭は、2006年春、出版社で編集者をしている山室(太一、妻子あり)が京都にいる長崎(省吾)に呼び出されて、24年ぶりに2人が再会する場面、になっている。山室は長崎から、彼が余命半年であることを告げられる。そしてかつて(1982年)失敗に終わった「八月の犬」という計画をもう一度やろう、と提案される。山室が初めて長崎と出会ってともに過ごしたのは、1978年、京都にある予備校の寮(大手予備校と契約している西賀茂(至誠)寮、1人3畳の部屋で4階建て、寮生は計80人いたらしい)。その後も山室は、大学が夏休みのときなどに京都へ戻ったり。
団塊Jr.中学生小説、宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川文庫ほか)は、学校の教師や親たち(いわゆるPTA)に対して抵抗する、みたいな話だったと思うけれど、ポスト団塊の世代小説(いわゆるシラケ世代、三無主義の世代)であるこの小説では、無意味なことをすることに意味が……ま、そんなことはどうでもいいか(※だらだら書いていると節電が…(涙))。予備校の寮生小説つながり、竹内真『風に桜の舞う道で』(新潮文庫)が関東版(東京以北版?)だったのに対して、この小説は関西版? そう、京都の予備校生つながり、意味不明な(?)松原好之『京都よ、わが情念のはるかな飛翔を支えよ』(集英社)を読んだあとに、この小説を読むといいかもね、意味(というか頭の中)がすっきりして。1978年、予備校に行く途中に見える京大文学部のキャンパスには、<『成田空港開港絶対阻止!』>(p.42)と書かれた立て看板があったりしたらしい。
6匹のワンコたちというか、4人プラス2人で計6人の(元)寮生たちについて、少しまとめれば、
1978年 山室(1浪→早稲田)、長崎(1浪)、関口(1浪→阪大)、吉村(3浪)
1979年 長崎(2浪→立命館&寮監)、伊賀(1浪)、久保田(1浪→京大)、吉村(4浪)
1980年 伊賀(2浪→神戸大)、吉村(5浪→関西大)
という感じ(年というか年度。4月から翌年の3月)。伊賀の出身地ってどこだっけ? ――読み直さないとわからないな。山室と吉村さんが愛媛、久保田が高知。長崎が岡山で、関口が滋賀――予備校の寮生小説、木村紅美『花束』(朝日新聞社)ほどには、メインキャラたちの出身地が離れていない模様。それはともかく、第1志望に合格できているのは、関口と久保田だけ? 山室は東大(文Ⅲ)を落ちていたり、長崎も2浪して京大がダメだったり。でも、京大に受かって京大卒の久保田くんのその後(20数年後)の状態とか、…ま、何が幸せかは人生の終りごろになってみないとわからないよね、やっぱり。そう、18歳で人生が終わった、と言う医者の息子・吉村さんへの山室(&作者)の優しさに満ちた眼差しは、この“(元)浪人生小説”の読みどころの1つかもしれない。
ちなみに作者は、1958年生まれ。1978年に1浪……だと、1年(早生まれなら2年)ずれちゃうな。
(※やっぱり短く、短時間で書こうと思っても私には無理(涙)。節電にならない。しばらくパソコンじたい使うのをやめようかな。とりあえず、読んだ小説の感想は、紙のノートにペンで手書きでもしておくか。)
[追記]のち文庫化。講談社文庫、2014.7。
物理的に(?)“浪人生が出てくる”と言えるのは、「第一章」までかな(~p.90、「プロローグ」「エピローグ」を除いて全9章ある)。小説の冒頭は、2006年春、出版社で編集者をしている山室(太一、妻子あり)が京都にいる長崎(省吾)に呼び出されて、24年ぶりに2人が再会する場面、になっている。山室は長崎から、彼が余命半年であることを告げられる。そしてかつて(1982年)失敗に終わった「八月の犬」という計画をもう一度やろう、と提案される。山室が初めて長崎と出会ってともに過ごしたのは、1978年、京都にある予備校の寮(大手予備校と契約している西賀茂(至誠)寮、1人3畳の部屋で4階建て、寮生は計80人いたらしい)。その後も山室は、大学が夏休みのときなどに京都へ戻ったり。
団塊Jr.中学生小説、宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川文庫ほか)は、学校の教師や親たち(いわゆるPTA)に対して抵抗する、みたいな話だったと思うけれど、ポスト団塊の世代小説(いわゆるシラケ世代、三無主義の世代)であるこの小説では、無意味なことをすることに意味が……ま、そんなことはどうでもいいか(※だらだら書いていると節電が…(涙))。予備校の寮生小説つながり、竹内真『風に桜の舞う道で』(新潮文庫)が関東版(東京以北版?)だったのに対して、この小説は関西版? そう、京都の予備校生つながり、意味不明な(?)松原好之『京都よ、わが情念のはるかな飛翔を支えよ』(集英社)を読んだあとに、この小説を読むといいかもね、意味(というか頭の中)がすっきりして。1978年、予備校に行く途中に見える京大文学部のキャンパスには、<『成田空港開港絶対阻止!』>(p.42)と書かれた立て看板があったりしたらしい。
6匹のワンコたちというか、4人プラス2人で計6人の(元)寮生たちについて、少しまとめれば、
1978年 山室(1浪→早稲田)、長崎(1浪)、関口(1浪→阪大)、吉村(3浪)
1979年 長崎(2浪→立命館&寮監)、伊賀(1浪)、久保田(1浪→京大)、吉村(4浪)
1980年 伊賀(2浪→神戸大)、吉村(5浪→関西大)
という感じ(年というか年度。4月から翌年の3月)。伊賀の出身地ってどこだっけ? ――読み直さないとわからないな。山室と吉村さんが愛媛、久保田が高知。長崎が岡山で、関口が滋賀――予備校の寮生小説、木村紅美『花束』(朝日新聞社)ほどには、メインキャラたちの出身地が離れていない模様。それはともかく、第1志望に合格できているのは、関口と久保田だけ? 山室は東大(文Ⅲ)を落ちていたり、長崎も2浪して京大がダメだったり。でも、京大に受かって京大卒の久保田くんのその後(20数年後)の状態とか、…ま、何が幸せかは人生の終りごろになってみないとわからないよね、やっぱり。そう、18歳で人生が終わった、と言う医者の息子・吉村さんへの山室(&作者)の優しさに満ちた眼差しは、この“(元)浪人生小説”の読みどころの1つかもしれない。
ちなみに作者は、1958年生まれ。1978年に1浪……だと、1年(早生まれなら2年)ずれちゃうな。
(※やっぱり短く、短時間で書こうと思っても私には無理(涙)。節電にならない。しばらくパソコンじたい使うのをやめようかな。とりあえず、読んだ小説の感想は、紙のノートにペンで手書きでもしておくか。)
[追記]のち文庫化。講談社文庫、2014.7。
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