「殺人」には「コロシ」とルビ、集英社文庫コバルト・シリーズ、1983。ジュニア向け文庫なのでもっと“ゆるゆるミステリー”かと思ったら(差別意識、すみません)意外とちゃんとしている小説でした。※毎度すみません、以下いちおうネタバレ注意です。

 <雅美は浪人生。長野の造り酒屋である京介とふたりで彼の生家までドライブした帰り道、彼と別れて、ひょんなことから見知らぬ女性と一緒に温泉へ泊まることになった。ところが翌朝、その女性は近くの神社で殺されていた。京介も同じ温泉郷に宿泊したため、当然容疑がふたりにかかった。東京へ戻った雅美と京介が、真犯人さがしを始めようとしたとき、ひとりの男の訪問を受けた……。>(表紙カバーの折り返しより)

1箇所、日本語がちょっとへん? 「長野の造り酒屋」であるのは、上京して大学に通っている京介の「生家」(実家)。「温泉(郷)」というのは、群馬県の戸沢温泉(郷)。わりとありがちな、感情的で行動派の女性(倉地雅美)と穏やかで推理派の男性(佐村京介)という探偵役コンビ? 京介くんは大学では一応、ミステリー・クラブに所属しているらしい。被害者女性は、東京の小さな芸能プロダクション(「ミューズ・プロダクション」)に所属していた、「峰岡貞代」という名前の女性であることがわかるのだけれど(妊娠していたこともわかる)、2人が最重要(?)容疑者候補として目を付けるのが、同じ事務所に所属するプレイボーイである波加奈男。――個人的には読んでいて、この嘘を繰り返す波の“アリバイ崩し”に関する部分がかなり長く感じた(涙)。短篇作品ではないし、登場人物は多いけれど、ほかにも同じ事務所のタレント(複数)やら社長やら、波が付き合っている女性やら、被害者の元恋人やら、私立探偵やら、あともちろん刑事なども出てくる。

浪人生の雅美は4年前に両親を亡くしていて現在は、会社勤めをしている姉(里美)とふたり暮し。大学生の京介と知り合ったきっかけは昨年(高校3年のとき)、家の隣にあるマンションの1階に入っているスーパーでの出来事。京介はその上のほうの階で暮らしていて、いまでは倉地姉妹の家に出入りして、ご飯を食べさせてもらったりしている(雅美は、京介は美人の姉のほうが好きなのではないか、などと想像したりしている)。予備校は、その好きな相手である京介が通っている城東大学(@神田)の近くにあるところを選んで、通っている。事件以前から(特に相談することがなくても)一緒に通学していたのだろうか、この2人は?(女の子にとっては勉強よりも恋愛……というのは少なくとも小説的にはベタな発想?)。あ、家があるのは練馬区とのこと。思うに、親の残してくれた財産で生活している身分、経済的には大学には一発で受かりたかったところだよね、本当は。

そう、浪人生(しかも女子)が探偵役を勤めている長めの推理小説は珍しいと思うけれど、でも、この主人公は“浪人生意識”がかなり薄いほうだと思う。一応、…どこだっけ、1箇所……あ、ここか、(事件が解決しないと)<落ち着いて勉強できない。>(p.175)という台詞もあるけれど。ちなみにドライブに行ったのが5月16日(日曜日)で、最後、犯人がわかるのが6月11日(金曜日)。犯人探しのために予備校は何度もさぼっている? そう、あと、登場してこないけれど、第2の殺人事件が起こったときに現われる部長刑事の娘は、――引用させてもらおう、

 <「うちの娘も、よくヒスを起こす。やはり二浪だが、OLになってくれると、こっちは助かるんだが……」/「わたしは一浪です。部長さん、殺人事件現場で、こんな個人的悩みに浸っていて、いいんですか」>(pp.206-7)

1浪の人は「2浪でしょ?」みたいなことを言われると心外? 女子浪人生の浪人年数は、男子のそれに1とか2とかを足したほうがいい、みたいな話も聞くけれど(1浪なら2浪or3浪、2浪なら3浪or4浪)、ま、お父さんも心配だよね。志望大学・学部にもよるだろうけれど、本人も2浪するくらいなら就職しておけばよかった、とか思っているかもしれないし。(でも、いまだに――21世紀の現在でも、婚期が遅れるから“娘は現役で短大”以外にあり得ん! みたいな親御さんもけっこう多い?)
 

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