そのうちに単行本に収録されると思うけれど、いま手もとにあるのは、雑誌『文學界』2011年9月号(文藝春秋)。読んでいて、なんで地方の三流大学卒の、現在お先真っ暗な年長フリーターである私が、わざわざこんな“T大生小説”を読まなくてはいけないのか? みたいな怒り混じりの疑問が…。というか、そんな義務も、必要性もまったくないので、なけなしのお金は、海猫沢めろん『ニコニコ時給800円』(集英社)でも買うのに使ったほうがよかったかもしれない。とりあえず読み通した自分に拍手です(パチパチ…)。で、誰がどこの高校卒とか、何浪しているかとか、どうでもいいといえばどうでもいいことだと思うけれど、世の中にはどうでもよくない人もいるみたいで、だから(?)「私」=藤井は男子高校卒の1浪のT大生で、大学へは実家から通っている――みたいな、あからさまな属性を持っていることになる(最初のころは、アルバイトはしていない)。入学して外国語の授業がらみでクラス分けがあるらしく、名前付きの同級生がたくさん出てきて――“読書あるある”かな、少なくとも自分には誰が誰やら覚えきれない(涙)。今日は早めに本題に。庄司薫の“高校3年生小説”『赤頭巾ちゃん気をつけて』では、なんと言ったっけ? 「おどかしっこ」ではなくて……思い出せないけれど、「そんなことも知らんの?」的なプライドの傷つけ合い?(ちょっと違うか)。大学入学以前にはあまり鍛えられていないらしい「私」を、特におどかしてくる(?)のがジュンシュー(というのはあだ名で、本名は玉木淳秀、静岡出身現役合格)。少し引用させてもらうと、T大といえば学外的には五月祭?(違うかな)、

 <安田講堂前で、ジュンシューが、知り合いの女性に会ったらしく、やあやあと言葉を交わしていたが、これは、浪人している同じ高校の人だった。私にはケバい女に見えたが、ちょっと美人で、高校では別のクラスだから知らなかったらしいが、ジュンシューは、どういうわけかその女とも付き合い始めていたようなのである。>(pp.113-4)

とのこと。この人と、最後のへん(pp.150-1)でジュンシューが付き合っていて、今年もどこかの大学に落ちたとかいう一浪の女というのは、同じ人なのかな? …それはともかく、なんていうか、この“浪人生”はどうなのかな? 1982年、静岡から上京して浪人している女の子(たぶん予備校にも通っている)。別に珍しくはないか。「私」が「ケバい」と言うのは、化粧もしているということ? 付き合っている相手もいる…(彼氏が複数の相手と付き合っていることは承知の上?)。東京の予備校に通うまでして偏差値高めの有名な大学をねらっているのか、あるいはたんに東京という名の都会に出てきたかっただけなのか…。あ、元同級生(別クラス)でT大生の玉木くんには、勉強(苦手な科目とか)を教えてもらったりしていたのかな? 21世紀な現在でもそうかもしれないけれど(同じ人であれば)1983年でも、女子で2浪するとなれば、かなり少数派になるかもしれない(酔っ払ったジュンシューの、<「どこか受かってくれえ」>(p.150)という叫びはけっこう切実だったり?)。T大というか「私」の同級生には1人いるみたいだけれど、元2浪の女性が。(2浪目は1981年か。)そう、あと、大学に入って最初にもらった成績の悪かった「私」が、通っていた予備校のあたりに行って、また頑張ろう、みたいな気合いを入れ直す(?)場面もある(どこだっけ…、あ、ここか、p.126)。ま、大学も予備校も東京であれば、交通網的にすぐに行けそうでいいやね。

あまり関係ないけれど、高橋留美子の漫画『めぞん一刻』に触れている箇所があって(p.135)。小谷野氏の『恋愛の昭和史』(文春文庫)で、五代くんが2浪、と書かれているけれど、たしか五代くんは1浪しかしていない(うろ覚えだけれど。単行本で全巻持っているのだけれど、場所が積んである本の下のほうすぎてすぐに取り出せない)。音無さんが「ひとなみですから」と口にする場面もあったと思う。たぶん「一浪」は「ひとなみ(人並み)」と読む、という有名な受験生ジョーク(?)を踏まえている。ぜんぜん関係ないけれど、そういえばこの前、少し本を片付けていたら、下のほうから紫門ふみ『P.S.元気です、俊平』の文庫版全7巻が出てきて。まったく読んでいない(涙)。これ、連載開始は『めぞん一刻』とどちらが先だったのかな?(あとで調べておくか)。

~・~・~・~・~・~・~・~・~
“私小説”の看板を掲げている小谷野敦(こやの・とん)。1962年生まれ。上の小説の最初のへんで、<予備校生の当時、御茶ノ水の駅前では、(略)>(p.103)みたいなことが書かれているけれど、これはつまり、「私」=作者はS台に通っていたということ? と、学校のモデル探しをしてみる(汗)。ま、別にどこでもいいけれど。朝日新聞社会部『神田川』(未来社、1982→新潮文庫)という本の「御茶ノ水/――大学と病院の街――」という章に……完全な孫引きになってしまうけれど、次のような引用がある。

 <当駅利用の学校は東京大学、東京医科歯科大学、順天堂大学、明治大学、日本大学、芸大付属高校、明治高校、明治中学、駿台予備校、千代田予備校、池ノ坊学園、ニコライ学院、タイプ専門校、美術校など二十八校(五五年度『駅業務概況』から)>(pp.87-8、文庫版)

昭和55年=1980年ごろには、S台以外にまだ(といったら失礼か)千代田予備校もあったようだ(吉村昭や大江健三郎が通っていた正修予備校はもうなかったのかな?)。個人的には人の学歴とか学校歴とか、現在の職業とかぜんぜん興味がないのだけれど――そんなことを言っていると作業効率が下がるな…、とっとと書いてしまおう(小谷野氏の本を読んでいるとある種の“勇気”が湧いてくるけれど、それはともかく)。1981年はわからないけれど、それより少し前なら少しはわかる。いま小説家にしか興味がないのだけれど(“浪人生が出てくる小説”を探し出して読む、という無意味で無駄な作業を続けているので。小説家以外の人はあまり小説を書かないから)、小谷野氏と同じ芥川賞候補作家の石黒達昌は1961年生まれ、S台(1浪)→東大医学部(医学部というか理科3類?)。『チーム・バチスタの栄光』そのほか、ベストセラー作家の海堂尊も1961年生まれ、S台(1浪)→千葉大医学部。ともに医学部志望だから、2人とも早生まれか、2人ともそうでなければ予備校時代に接点があるかもしれない(ないか)。よくわからないけれど、1962年早生まれの芥川賞作家・藤野千夜(1浪→千葉大教育学部)も、“予備校生小説”「午後の時間割」(『少年と少女のポルカ』講談社文庫)を読むと、S台に通っていたんじゃないか、と思えてくる(いや、わからないけれど)。あー、思い出した、そういえばこの前(もう1ヶ月以上も前かな)TVを見ていたらニュース番組か何かで、帰宅困難者@東京の特集をしていて、「これが例のミラノボウルか」と思ったことがある。「午後の時間割」に名前の出てくるボーリング場――御茶ノ水なS台生にとって、身近な“息抜き”の場の1つ?(ま、人によるか、知らない人は知らないだろうしね)。

~・~・~・~・~・~・~・~・~
そういえば(毎度のこと、書いているとあれこれと思い出してくるけれど)、ずっと書き忘れていたことがある。小谷野氏のどの著書だか忘れてしまったけれど、受験生時代にYゼミから出ている世界史の年号の語呂合わせ本を使っていた、みたいなことが書かれていて。それはたぶん、

  山村良橘『代々木ゼミ方式 世界史年代記憶法』(代々木ライブラリー)

だと思う。よくわからないけれど、当時としては、年号語呂合わせの定番の参考書だったのではないか(あ、「参考書」といっても新書サイズ)。私もいちおう持っているのだけれど、手もとにあるのは、表紙には<改訂版>とあって、奥付に、

  1976年1月5日第1刷発行
  1992年4月5日第64刷発行

とあるもの。初版が1976年でいいのかな?(改訂されたのはいつ? 64刷というのは初版から通して?)。それで、かれこれ4年半くらい使っていて、いまさら言うのもなんだけれど、ここのブログ名=「浪人2年、マホメット。」の出典はいちおうその本です(最初に見かけたのは別の本だけれど。何かおおもとの出典があるかもしれないけれど、とりあえず)。要するに意味(?)は「622年」。これも一応、引用しておいたほうがいいか(原文には赤字があったりするけれど、再現できない)、

 <マホメットのヘジラ(聖遷)→イスラム教の成立>(p.26=左頁)
 <浪人2年、マホメット/メッカのクライシュ族の迫害でメジナに移住。イスラム紀元元年。>(p.27)

こんな感じ。この語呂合わせ集、現在でも代々木ライブラリーから出ていたと思うけれど、「浪人2年」は載っていなかったような覚えもある(ちゃんと確認してみないとわからないけれど)。関係ないけれど、日本史のほうの当時の定番本は、といえば、たぶん、

  宮沢嘉夫『日本史の年代暗記法』(旺文社、1977)

というもの。書名が書かれていないけれど、1964年生まれの作家・堀田あけみ(“妊娠小説”ではない作品で文藝賞を受賞してデビュー)の“高校3年生小説”『さくら日記』(河出文庫)に出てくる(というか触れられている)のは、たぶんこの本(新書サイズ)。こちらも、いまでも書店で売られているっぽいけれど、改訂されて中身はだいぶ変わってしまっているのではないか、と思う。
 

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