安萬純一 『ガラスのターゲット』
2011年8月30日 読書
東京創元社、2011。1作目を読んでいないけれど、シリーズ2作目らしい。※まだ読まれていない方は、以下、いつものようにネタバレには気をつけてください。毎度毎度、すみません。
感想というかは、これも意外と面白かったです。センテンスが短めで、わりと読みやすくてよかった(総合点で70点くらいあげてもいいかな)。ただ、文章にしても内容にしても、ちょっとふわっとしたところがある? 地に足がついていないというか。例えば、同窓会で14人も犠牲になっているのに、卒業中学の名前が出てこないとか。5人が犠牲になっている事件の、卒業高校名も出てこない。事件が起こった場所(すべて都内)については書かれている(その場所に応じて、どこどこ署の刑事たちが登場してくる)。なんていうか、全体的にネーミングが駄目な感じなのかな…、タイトルからして(たぶん「ガラス」=透明くらいの意味)もっといい言葉があったのではないか、と思える。でも、「名前」がキーワードの1つになっている小説だから、全体としてはそれでいいのか。漠然としているほうが。あと、ちょっと気になったのは、遺体の損傷ぐあい。最初のアパート火災&爆発では、犠牲者(というか被害者)の後頭部が殴られていることが早めにわかったり…なのに対して、レストラン爆破事件のほうの被害者たちは、ばらばらで黒焦げ――でも、そのうちの1人・暴力団関係の男性には刺青が入っていることがわかったり…。ややご都合主義?
それと、全体的に引っぱりすぎなような気が…。遠出すると(?)なかなか帰ってこないらしい鉄砲玉探偵、行方不“名”探偵こと被砥功児(ピート・コージ)。やっと戻ってきたと思ったら、事件がまだまだ解決しない(てっきりこの探偵がいれば、もうぱぱっと解決するもんかと…)。冒頭のシーンで高校生くらいの女の子が、2人で会話をしていて――というか、小説冒頭は<「へえ、また学校入るの?」>となっていたりするのに、被砥くんが「転校生(転入生)」という言葉を口にするまでがやけに長い(涙)。ほかにも、読者に対して犯人目線の箇所を見せてしまうと(要するにヒントを与えてしまうと)、刑事たちor探偵たちがあれこれと可能性を(脳内/脳外で)検討していても、その可能性についてはゼロ、みたいなことがあるわけで――要するにこの小説には“引っぱりすぎ”な箇所がある、という話。そう、ながなが読んで最後の最後、だいぶネタバレしてしまうけれど(作者の意図はわからないけれど)、結局、『トッカータ』がドッカーン、という駄洒落オチになっているし(ちょっと脱力…)。
私立中学だっけ? 公立中学あるいは同じ地元どうしなら、1月の成人式で再会していそうな気もするけれど、それはともかく。20歳の人が結局、えーと…、14人+5人+3人=合計22人死亡? ほとんど大学生だよね、もっといろいろな人がいてもいいと思うんだけれど。「大学生」と言われるから、成人している20歳でもまだ若い、親がかり、みたいなイメージになる? …まぁそれもそれとして。最後の3人は元予備校生の、現在は大学生。「予備校」というのは匿名性が高い場所らしい(ミステリー的には戦中、あるいは戦後の闇市のような? 要するにスケキヨか!)。でも、いくら生徒管理が(中学や高校に比べて)ゆるい学校であるにしても、さすがに2年前=前々年度の生徒名簿(受講生リスト)くらいまだ残っているのではないか? 授業料だってたいてい銀行振込とかでしょう?(うーん…)。いちおう浪人生も出てくる。
<「ああ、この三人なら見たことありますよ」/藤崎という予備校生は、口の両脇にまるで仙人のように髭を長く伸ばしており、とても二十代前半には見えない。予備校職員でも知らぬ人がないという、名物男だった。>(p.191)
ちょい役にしてはキャラクターが十分(笑)。予備校の寮とかにならいそうだよね、「仙人」とか「長老」とか「ヌシ」みたいな、素敵な(?)あだ名をつけられちゃっている多浪生が。
ぜんぜん関係ないけれど、最後のほうにありがちな間違い。…間違いというか、<デヴュー>(p.285)は「デビュー」のほうがいい。綴りが“debut”だから。ピーくん、アメリカ帰りらしいのにな。(もともとフランス語らしいけれど。)
感想というかは、これも意外と面白かったです。センテンスが短めで、わりと読みやすくてよかった(総合点で70点くらいあげてもいいかな)。ただ、文章にしても内容にしても、ちょっとふわっとしたところがある? 地に足がついていないというか。例えば、同窓会で14人も犠牲になっているのに、卒業中学の名前が出てこないとか。5人が犠牲になっている事件の、卒業高校名も出てこない。事件が起こった場所(すべて都内)については書かれている(その場所に応じて、どこどこ署の刑事たちが登場してくる)。なんていうか、全体的にネーミングが駄目な感じなのかな…、タイトルからして(たぶん「ガラス」=透明くらいの意味)もっといい言葉があったのではないか、と思える。でも、「名前」がキーワードの1つになっている小説だから、全体としてはそれでいいのか。漠然としているほうが。あと、ちょっと気になったのは、遺体の損傷ぐあい。最初のアパート火災&爆発では、犠牲者(というか被害者)の後頭部が殴られていることが早めにわかったり…なのに対して、レストラン爆破事件のほうの被害者たちは、ばらばらで黒焦げ――でも、そのうちの1人・暴力団関係の男性には刺青が入っていることがわかったり…。ややご都合主義?
それと、全体的に引っぱりすぎなような気が…。遠出すると(?)なかなか帰ってこないらしい鉄砲玉探偵、行方不“名”探偵こと被砥功児(ピート・コージ)。やっと戻ってきたと思ったら、事件がまだまだ解決しない(てっきりこの探偵がいれば、もうぱぱっと解決するもんかと…)。冒頭のシーンで高校生くらいの女の子が、2人で会話をしていて――というか、小説冒頭は<「へえ、また学校入るの?」>となっていたりするのに、被砥くんが「転校生(転入生)」という言葉を口にするまでがやけに長い(涙)。ほかにも、読者に対して犯人目線の箇所を見せてしまうと(要するにヒントを与えてしまうと)、刑事たちor探偵たちがあれこれと可能性を(脳内/脳外で)検討していても、その可能性についてはゼロ、みたいなことがあるわけで――要するにこの小説には“引っぱりすぎ”な箇所がある、という話。そう、ながなが読んで最後の最後、だいぶネタバレしてしまうけれど(作者の意図はわからないけれど)、結局、『トッカータ』がドッカーン、という駄洒落オチになっているし(ちょっと脱力…)。
私立中学だっけ? 公立中学あるいは同じ地元どうしなら、1月の成人式で再会していそうな気もするけれど、それはともかく。20歳の人が結局、えーと…、14人+5人+3人=合計22人死亡? ほとんど大学生だよね、もっといろいろな人がいてもいいと思うんだけれど。「大学生」と言われるから、成人している20歳でもまだ若い、親がかり、みたいなイメージになる? …まぁそれもそれとして。最後の3人は元予備校生の、現在は大学生。「予備校」というのは匿名性が高い場所らしい(ミステリー的には戦中、あるいは戦後の闇市のような? 要するにスケキヨか!)。でも、いくら生徒管理が(中学や高校に比べて)ゆるい学校であるにしても、さすがに2年前=前々年度の生徒名簿(受講生リスト)くらいまだ残っているのではないか? 授業料だってたいてい銀行振込とかでしょう?(うーん…)。いちおう浪人生も出てくる。
<「ああ、この三人なら見たことありますよ」/藤崎という予備校生は、口の両脇にまるで仙人のように髭を長く伸ばしており、とても二十代前半には見えない。予備校職員でも知らぬ人がないという、名物男だった。>(p.191)
ちょい役にしてはキャラクターが十分(笑)。予備校の寮とかにならいそうだよね、「仙人」とか「長老」とか「ヌシ」みたいな、素敵な(?)あだ名をつけられちゃっている多浪生が。
ぜんぜん関係ないけれど、最後のほうにありがちな間違い。…間違いというか、<デヴュー>(p.285)は「デビュー」のほうがいい。綴りが“debut”だから。ピーくん、アメリカ帰りらしいのにな。(もともとフランス語らしいけれど。)
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