高2予備校生もの2、高3もの2、大学1年もの1、の計5作。どれも基本的に「浪人」は関係なし。この夏のあいだ(現在8月の終わりくらい)、なんとなく“高校生もの”が読みたくなって(読まなくてはいけない“浪人生もの”は見て見ぬふりをして)手もとにあった小説の中から、テキトウに選んで読んだもの、など。上から順に読み終わった順。※以下、すべてネタバレ注意です。

工藤水生「笑えよ」
第6回ダ・ヴィンチ文学賞の受賞作、『ダ・ヴィンチ』2011年7月号(メディアファクトリー)に掲載されている。最初のへん、文章がぎこちないな、と思ったけれど、読み終わってみれば、意外と面白かったな、みたいな感想に。でも、主人公の「私」(や、これを書いているという意味で、作者)には、なんとなくあまり共感できずじまい。――「私」(柏木葉)、橋立、仲平の3人は高校のクラスメイトで、同じ予備校に通っている(あ、まだ高校2年生)。現役受験生に力を入れているらしい予備校――高校生と浪人生でいえば、高校生は時間的、労力的に、家(または学校)からあまり離れたところにある塾や予備校には通いづらいよね、やっぱり。ほかの学校に通わなくてもいい浪人生なら、大手予備校を目指して例えば片道2時間くらい、どうってことないかもしれないけれど。(どうってことあるか、往復4時間(汗)。)ミスドで勉強――マクドで勉強よりは自然と糖分が摂れそうでいいよね。ほかのお客さんも、なんとなくマックよりは静かそうな印象が…。それは、うちのへん地元店舗だけのイメージか(汗)。そう、マーク式の国語の問題の選択肢が…うんぬんみたいな話のなかで、「ゲシュタルト崩壊」(別名・意味飽和?)という言葉が使われているけれど、これはうーん…、別にそれほど変ではないのか。“受験生あるある”、たしかに繰り返し読んでいると(見つめていると)どれも意味が無いように見えてくる。ゲシュタルトって「形」みたいな意味だっけ? あまりセンテンスに対して使われる印象がないな、個人的には。ちなみに季節は冬で、場所は雪の降る地方。([追記]単行本はメディアファクトリー、2012.3。1作しか収録されていないようだ。)

十文字青『ヴァンパイアノイズム』
一迅社文庫、2009.10。「ノ」は「の」で、とりあえず「吸血鬼の主義」みたいな意味っぽい。例えば谷川流『絶望系 閉じられた世界』よりは、ずっとついていける感じだけれど、この小説もかなりテンションが低いよなぁ…。“心中小説”ではなくて…、なんていうんだろう、こういうのは?(わからないな)。病み上がり、浪人するつもりで勉強していない高校3年生の「僕」(片桐ソーヤ)。家の隣には同学年の幼なじみで「僕」の部屋にも出入りしている、同じ高校でクラスメイトの詩歌(苗字は四條)がいて――人物紹介はいいや(汗)。なんだかんだで「僕」は、クラスメイトの萩生(下の名前は季穂)の吸血鬼になりたい、という願望を叶える手伝いをすることに。クラシック&J-POP、血液&コーヒー…。ちょっと思ったのだけれど、すっぽんの血なら、扱っている料理屋でふつうに飲めそうだよね。あ、継続的にであると、高校生だから財力が続かないか(というか人間に近い動物ではないと意味がないんだっけ?)。喫茶店の名前が「ブラジル」。おいしいらしいけれど、豆はブラジルに限定? 「萩生(はぎお)」ってちょっと「蘇生(そせい)」のもじりっぽいな(見た感じがちょっと似ているだけか)。生&死、ミイラ取りがミイラにみたいな感じで(違うか)「僕」も、死そのものが怖くなってしまう。でも、いまはインターネットで、そんなことについても調べられちゃうんだね…。やむにやまれず心理学の本とか、哲学書(例えば中島義道のものとか)を手に取らなくても済んでしまうのか。そういえばこの小説、全体的になんとなく村上春樹っぽい? クラシックとか、手を繋いだりとかは『1Q84』、ちらっとアジカンの(だけれど)『アフターダーク』も出てくるし。登場してはこないけれど、詩歌が付き合っていて別れたという元彼氏(同学年別クラス)の名前が、常世田(とこよだ)ハルキ。…関係ないか。そう、詩歌といえば、カバー(後ろ側のほう)のイラストが、ちょっと安易な感じ? 少し溶けぎみな棒状のアイスをくわえようとしている。小説中の「僕」&萩生の“ヴァンパイア・プレイ”というか“モスキート・プレイ”みたいなもののほうが、よっぽどエロい(汗)。あと、どこだっけ、わりと最後のほうで(p.287)、浪人するとどれくらい無駄か、みたいなことがちらっと語られていて。残り60年のうちの1年、2浪なら2年が無駄になる――1パーセント以上? けっこう大きいよね。ただ、なんだか前提が少しおかしいような…。高校時代にも、ほかのことを犠牲にして、勉強している人は勉強しているわけだし、人生の時間って一生涯、そんなに均質に流れている(?)わけではないし。そう、逆に「人生80年だから、1年くらい浪人したところで、どうってことない」みたいなことを言う人はけっこう多いと思う(分母を平均寿命ではなく、今後の60年と考えてしまうと、必然、浪人期間の無駄率が上がっちゃうよね)。

三上康明『恋の話を、しようか』
ガガガ文庫、2009.6。浅いというか、けっこうシンプル? ちょっとスピード感もあって、読みやすくてよかった。最初のへん、4人の主要メンバーがそろっている状態で、電気が消えたり点いたりしていて――ちょっと舞台劇っぽいな、とは思った。そう、あと、この分量で(文庫本で280ページくらい)こんなに予備校の場面が多く描かれている小説は、初めて読んだかも(最近記憶力がなさすぎで、何かいろいろと忘れているかもしれないけれど)。でも、生徒をしかってくるマンドリル先生とか、あまり予備校っぽくもないような…?(ふつうに中学・高校っぽいかな)。いちばんの主人公は、基本的に明るくてよくしゃべる、でも、高校生なのに胃薬携帯キャラの桧山ミノル。きっかけがあって別の高校に通う、同じ予備校の生徒――神野若葉市川(男)、霧原かずみ――と“停電仲間”を結成(?)する。4人とも高校2年生。恋愛小説としては、ネタバレしてしまうけれど、想いの向かう矢印が1方向で、きれいな四角関係になっている(おおー)。家や予備校があるのは、中途半端な田舎、とのこと。ミノルのお父さんは、町役場の課長で町(街)づくりにも関係している。――町(街)が“父性”を帯びちゃっているよね。ただ、昔の小説に比べて(?)“東京”に対する憧れみたいなものは、ほとんどない感じ。ま、インターネットな世の中だしね。若葉のお姉ちゃんについては、いまどきこんなに妹を束縛してくる人がいるのかな、とは思った。そう、あと、武士道セブンティーンな市川くん、のお兄さんの名前がちょっと知りたかったな。でも、おもしろネームでも笑えないよね、亡くなっているから。(というか浅い感想ばかりで、申し訳ない(涙)。)あ、季節は冬で、雪も降る地方らしい。[追記]肝心なことを書き忘れていた。この予備校には生徒を呪い殺す(?)“幽霊”の噂があるらしい。ミノル&若葉のやりとり、<「で、その怖い話ってアレだろ? この予備校に通ってた生徒で、二浪しても志望大学には入れなかったもんだから、それを苦にして自殺っていう」/「し、知ってるの!?」/「つーか、その手の話ってありふれてる感じしねえ?」>(p.87)。ま、たしかにありふれた話かも。全国、あちこちの予備校でその手の噂が? でも、まだ1度も大学に落ちたことがない現役受験生たちの間にだからかな…、少なくとも1度は落ちている(ことが多い)浪人生のあいだにも同じ噂が?(ふつうに3浪中の人なら、たかが2浪くらいで、みたいなことは思うかな)。

紅玉いづき『ガーデン・ロスト』
メディアワークス文庫、2010.1。切ないというよりは、痛々しい感じ。この作者、ある種の“ヘタウマ”なのかな?(私にはけっして読みやすくはない文章)。「わかりにくいこと」というか「わかってもらいにくいこと」を伝えるには、小説という形態がふさわしい? ――それはともかく、内容というかは、高校1年から高校3年の現在まで、同じ4人だけの、ガーデン=庭というか温室のような放送部…。1章ごとに視点が変わって(すべて1人称)、春、夏、秋、冬それぞれ1人ずつ――あー、説明が下手で申し訳ない(汗)、えーと、後ろのへん(カバーの文句)から引用しておけば、

  <誰にでも優しいお人好しのエカ、漫画のキャラや俳優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。(略)>

という4人。第2章(マルの夏篇)は、桜井亜美をもっと深くしたような感じ?(うーん…)。全章通じて、キーワードの1つは「優しくされること」? 最後の章(シバの冬篇)は、主人公は人を傷つけないではいられない、…とりあえず“母娘小説”(たんに“親子小説”かな)でもあるけれど、なんだか壮絶な大学受験になっている。どうでもいいけれど、放送部の仕事がほとんど描かれていない。体育祭があるけれど(実況中継はしなくても)人の呼び出しとか、そういう仕事が少しくらいあるのでは?(そういえば、自分が通っていた高校にも、放送部ってあったけれど、部員の人たちがどういうことをしていたのか、まったく記憶にない。あ、お昼に校内放送で、何やらつまらない音楽をかけていたけれど)。あと、どこだっけ、…ここか、第2章の最初のへんで、エカがデパートにある、願い事たくさんで垂れ下がった七夕飾りを、「欲の木」(p.69)と呼んでいて。思わずうわー、とか思ってしまったけれど。女子高校生らしい微妙な“残酷さ”?

竹宮ゆゆこ『ゴールデンタイム3 仮面舞踏会』
電撃文庫、2011.8。あいかわらずテンションのアップダウンが激しい“大学生たち青春恋愛小説”。キーワードな“仮面”はちょっとしつこかったかな。冒頭、アニ林田の「ウヴォイッ!」に笑う。哲学で“ガヴァガイ問題”というのがあるけれどね、異言語人とのファースト・コンタクトは大変だ、みたいな話(違うか)。万里(ばんり)&やなっさんが独自解釈に落ち着いている、My boyfriend巻き舌な香子(こうこ)の「O! M! G!」は、たぶんふつうに“Oh, my god!”では? 大学最寄り駅で万里を待ち伏せていた忠犬・香子。自称ロミジュリで、2人はバカップルぶりを発揮している(おバカというよりシュール?)。ネタバレしてしまうけれど、万里のアパート(マンション)隣の部屋には、なんとあのNANA先輩が暮らしていて。その隣人宅からはリンダこと、林田奈々が出てきたり…。こちらは過去の万里(死亡中)を待ち続ける、もう1人のハチ公だよね(読んだことがないけれど、マンガ『NANA』参照)。逮捕された記憶もまだ新しい、大学生といえばいわゆる“家飲み”? 宴のあとは、夜空を見上げたりとか、シリーズもの小説として、まだあまりシュリンクしてほしくないけれどね(もっと東京を暴走しておけ、万里。東京タワーとか、できたてほやほやなスカイツリーとか、都庁とか、あとついでに高尾山も登っておけ、万里。打倒『ちい散歩』or『モヤモヤさまぁ~ず』だよ、万里!)。私は1、2巻の内容をほとんど覚えていないけれど(読んだ記憶はあるから大丈夫)、万里は千波ちゃんのことをこんなに言葉攻めするキャラだったっけ? 言葉ではなくリアル方面、いまのところ万里のキノコは、エッフェル塔な巴里に行かないと活躍できないらしいけれど。あ、文字どおりな“万里の長城”に行くことはないのかな? 卒業旅行で(鬼が3回くらい笑っちゃうほど先の話やな(汗))みんなで行けばいいのにね、チャイナへ行っちゃいな! くらいな大学生らしい(?)だじゃれノリで。えーと、鬼のぶっかけファブリーズ――いまちょっと言ってみたかっただけ(汗)。あとは、あいかわらずのテンションの低さを見せている、万里の文字どおり過去の亡霊・セルフ守護霊な「俺」(場所いらずなゼロ次元くん?)。自動車にひかれても死なない(すでに死んでいるから)。ま、最後のほうで、いままでの膠着状態(?)に大きな変化が見られるけれど。そう、最後のほう、薔薇で黄金で太陽だった香子も、「黄金ロボ子」を返上、「あけぼの」を通り越して(?)入梅というよりスコールな雨が降ってきちゃっているし…。このブログでは何度も書いているけれど(繰り返しておけば)、わしゃ、明るい話とハッピー・エンドが好きなんじゃ!(涙)。
 

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