| メイン |
大谷羊太郎 『完全密室殺人事件』
2011年9月6日 読書
大陸ノベルス、1990。いま手もとにあるのは図書館本(地元ブック○フでは見つけられず。表紙カバーがはずされているむき出しの本で、内容紹介というか宣伝文句がまったくわからず)。これはけっこう面白かったな…。なぜか意外と“青春ミステリ”になっている? 文章も装飾が少なくて(ごてごてしていなくて)いいと思う。読みやすいし、説明的な部分もわかりやすかったような気が。警視庁の刑事たち(須賀班の面々)もふざけすぎず、まじめすぎず…な、ちょうどいい按配(?)だし(あ、※以下ネタバレ注意です、だいぶネタを割いてしまいそうな予感が)、殺人事件は年月を隔てて2件起こっているのだけれど、被害者の2人は幼なじみ(小中高、短大の同級生)で、その2人を知る人たちの話を聞くために、刑事たち(増川&添田)が2人の故郷の群馬県桐生市を訪れて、すると(?)幼なじみがもう1人いることがわかって(=山谷芳一、20歳で病死)、翌日、その、生前付き合っていた元彼女(結婚して引っ越している)に会うためにJR足尾線に乗って――たいした箇所ではないけれど、読んでいてちょっと“自然”がいいな、と思った(汗)。渡良瀬川とか、草木湖とか。大谷羊太郎のトラベル・ミステリが読んでみたいとまで思った(読まなくてはいけない小説本がたくさんで、そんなひまはないけれど。というか自分はどこか疲れているのか?(涙))。
7年前の10月半ば、場所は埼玉県草加市のアパート・青葉荘。国立大学に落ちて上野の予備校に通う浪人生・氏家正人(浜松出身)が、いつもと同じ勉強終わり時間の午前2時――すぎて、でも、この日は寝ようと思っても寝付かれずいたところ、真上にあたる女子短大生・平沼美奈子の部屋から、人がもみ合っている音、さらに助けを呼ぶ声が聞こえてきて。カーテンを開けてみると外には梯子がかかっていて、黒い人影が去っていくのも見えて…。氏家やほかの住人たちが駆けつけてみると、部屋主は無事。あとで、残されていたペンキなどから、最近近くで連続発生している痴漢事件(女性を全裸&ロープ縛り、足にはオリジナル配合のペンキで丸印)と同じ犯人によるものではないか、と疑われたけれど、犯人は捕まらず。氏家は想いを寄せていた、でも度胸がなくて告白できずにいた美奈子(性格もよくて誰もが認める美人)と、事件をきっかけに少し言葉を交わすことができたけれど、残念ながら彼女は引っ越していくことに。その空いた部屋――2階建て2階の南西角部屋、窓が2つ取れたいちばんいい部屋――には、別の部屋を借りていた、彼女の幼なじみで同じ大学に通う原木千枝が入居することに。で、まさか同じ部屋が同じように侵入を受けることはないだろう、と思っていたら、今度は命まで、すなわち千枝は殺害されてしまう。ロープによる絞殺、部屋はいわゆる密室のような状態、もちろん(?)下の部屋の氏家はまた黒い人影を目撃――。というか内容を詳しく書きすぎ(涙)。でも、もう少し先まで書かないとか。
そして犯人が捕まらないまま7年後。氏家くんは「実力相応の大学」を卒業して製薬会社に勤めるサラリーマンに。住み続けていた青葉荘からは3年前に引っ越して、現在は同じ市内のマンションに入居している。まだ独身。そんな氏家のもとを、過去の性犯罪を調べて脚色して、友人と共同で通俗大衆誌に発表していると言う加賀良樹なる人物が訪ねてくる。7年前、こちらに住んでいたこともあり(当時は写真愛好会に参加していたり)、“あの事件”に興味があって、氏家から話を聞きたいという。髭をはやしていて色付き眼鏡、もと芸術家志望で現在は花屋さん(実家を継いでいる)――ルポライターな加賀さん、あやしさ満点?(汗)。氏家くん、もう少し疑ってもいいのにな。…それはともかく、草加市といえば、やっぱりお煎餅? 地元老舗せんべい屋のご主人と結婚した、かつての青葉荘の住人の1人・章子のおかげで、居場所がわかって氏家&加賀は、美奈子に会いに行くことに。平沼改め、戸田美奈子(バスケ部つながりで、同じ高校の4年先輩だったご主人・戸田貞道は、飛行機事故ですでに死亡していて、いまは独身、渋谷でレストランを経営している)は、変わりようでは(?)いい意味で氏家くんの想像を裏切っていて――。で、数日後、その美奈子も自宅の2階で殺害されてしまう。……内容紹介はこれくらいでいいかな、書いていて疲れた(涙)。というか例によってぐちゃぐちゃ(涙)。
タイトルに入れるほど、「密室」な感じもしないけれど、2つの事件ともそうなっているといえばそうなっている。というか、私にはあいかわらず「密室」の定義がよくわからないけれど。あ、全体的にインパクトの弱い小説なので、小粒な「密室」に見えてしまうのかもしれない(よくわからないけれど)。ほかに、推理小説的な部分では、増川刑事が尊敬している須賀警部(2人とも下の名前はあったっけ、…あ、あるな、言い直せば、増川道也が信頼している須賀庄司警部)の演説のような感じになっているけれど、事件に関してちゃんと“仮説”を立てているあたり、読んでいて好感が持てた(そういった肝心の“推理”が、いいかげんな推理小説ってわりと多くない?)。どうでもいいけれど、最後のほうで1箇所、人物名が間違っている。「相川好子」(p.198)は、たぶん「藤沢理加」のこと。そうだ、名前といえば(3人称小説で氏家か、刑事の増川が視点になっていることが多い)この小説、フルネームでない場合、登場人物は男性は上の名前、女性は下の名前で呼ばれている。そういえば、全体的に極悪人みたいな人は出てこなかったっけな。
小説における浪人生の登場パターンとしては、いちおう“深夜の事件目撃者もの”に当てはまるかな。でも、ステレオタイプな描かれ方にはなっていない。そう、氏家くん、純情で消極的な性格というか、けっこう謙虚な人? だから(?)最終的に婚約者をゲットすることが出来ているのかな。あ、でも、この人、そもそも大学はどうして落ちたのかな? あまり高望みをしている感じではないのに。結局、「実力相応」の大学に落ち着いたらしいし。どこかに(社会人になってからの話で)出世欲がない、みたいなことも書かれていたと思う。でも、わざわざ上京して予備校通い――地元に浪人生が通える予備校や塾がなかったのかな?(ないわけないか、浜松市。私の地元県を思い出してみるに、T進の衛星なのとか、けっこうな田舎でも見かけたりする。あ、時代が違うか)。考えてみれば、学生向けアパートな青葉荘、氏家と美奈子(&千枝)とは年齢はあまり違わないんだよね。えーと、氏家が1浪で、美奈子が短大の2年生で、1つ歳上なだけか。そう、自分が好きだった相手が暮らしていた部屋に引っ越したい(実際には別の人=千枝に先を越されたわけだけれど)、移り香が残っていたりするかもしれないから――みたいなのは、あれだ、田山花袋の「蒲団」かよ!(読んだことがないけれど(汗)。というかぜんぜん違うか)。相手にもよるかもしれないけれど、青春時代の初恋はあとをひくもの? 最後に“浪人生語録”も拾っておこうか(社会人になってからのものだけれど)、
<苦しかった浪人生活の中で、美奈子さんは心の慰めだった>(p.42)
そのままか(汗)。作中年がわからないけれど(駅周辺の開発されぐあいから推測できる人には推測できるのかもしれないけれど)、出版年の1990年くらいであるとすれば、7を引いて、1983年くらいの上京浪人生、かな。
7年前の10月半ば、場所は埼玉県草加市のアパート・青葉荘。国立大学に落ちて上野の予備校に通う浪人生・氏家正人(浜松出身)が、いつもと同じ勉強終わり時間の午前2時――すぎて、でも、この日は寝ようと思っても寝付かれずいたところ、真上にあたる女子短大生・平沼美奈子の部屋から、人がもみ合っている音、さらに助けを呼ぶ声が聞こえてきて。カーテンを開けてみると外には梯子がかかっていて、黒い人影が去っていくのも見えて…。氏家やほかの住人たちが駆けつけてみると、部屋主は無事。あとで、残されていたペンキなどから、最近近くで連続発生している痴漢事件(女性を全裸&ロープ縛り、足にはオリジナル配合のペンキで丸印)と同じ犯人によるものではないか、と疑われたけれど、犯人は捕まらず。氏家は想いを寄せていた、でも度胸がなくて告白できずにいた美奈子(性格もよくて誰もが認める美人)と、事件をきっかけに少し言葉を交わすことができたけれど、残念ながら彼女は引っ越していくことに。その空いた部屋――2階建て2階の南西角部屋、窓が2つ取れたいちばんいい部屋――には、別の部屋を借りていた、彼女の幼なじみで同じ大学に通う原木千枝が入居することに。で、まさか同じ部屋が同じように侵入を受けることはないだろう、と思っていたら、今度は命まで、すなわち千枝は殺害されてしまう。ロープによる絞殺、部屋はいわゆる密室のような状態、もちろん(?)下の部屋の氏家はまた黒い人影を目撃――。というか内容を詳しく書きすぎ(涙)。でも、もう少し先まで書かないとか。
そして犯人が捕まらないまま7年後。氏家くんは「実力相応の大学」を卒業して製薬会社に勤めるサラリーマンに。住み続けていた青葉荘からは3年前に引っ越して、現在は同じ市内のマンションに入居している。まだ独身。そんな氏家のもとを、過去の性犯罪を調べて脚色して、友人と共同で通俗大衆誌に発表していると言う加賀良樹なる人物が訪ねてくる。7年前、こちらに住んでいたこともあり(当時は写真愛好会に参加していたり)、“あの事件”に興味があって、氏家から話を聞きたいという。髭をはやしていて色付き眼鏡、もと芸術家志望で現在は花屋さん(実家を継いでいる)――ルポライターな加賀さん、あやしさ満点?(汗)。氏家くん、もう少し疑ってもいいのにな。…それはともかく、草加市といえば、やっぱりお煎餅? 地元老舗せんべい屋のご主人と結婚した、かつての青葉荘の住人の1人・章子のおかげで、居場所がわかって氏家&加賀は、美奈子に会いに行くことに。平沼改め、戸田美奈子(バスケ部つながりで、同じ高校の4年先輩だったご主人・戸田貞道は、飛行機事故ですでに死亡していて、いまは独身、渋谷でレストランを経営している)は、変わりようでは(?)いい意味で氏家くんの想像を裏切っていて――。で、数日後、その美奈子も自宅の2階で殺害されてしまう。……内容紹介はこれくらいでいいかな、書いていて疲れた(涙)。というか例によってぐちゃぐちゃ(涙)。
タイトルに入れるほど、「密室」な感じもしないけれど、2つの事件ともそうなっているといえばそうなっている。というか、私にはあいかわらず「密室」の定義がよくわからないけれど。あ、全体的にインパクトの弱い小説なので、小粒な「密室」に見えてしまうのかもしれない(よくわからないけれど)。ほかに、推理小説的な部分では、増川刑事が尊敬している須賀警部(2人とも下の名前はあったっけ、…あ、あるな、言い直せば、増川道也が信頼している須賀庄司警部)の演説のような感じになっているけれど、事件に関してちゃんと“仮説”を立てているあたり、読んでいて好感が持てた(そういった肝心の“推理”が、いいかげんな推理小説ってわりと多くない?)。どうでもいいけれど、最後のほうで1箇所、人物名が間違っている。「相川好子」(p.198)は、たぶん「藤沢理加」のこと。そうだ、名前といえば(3人称小説で氏家か、刑事の増川が視点になっていることが多い)この小説、フルネームでない場合、登場人物は男性は上の名前、女性は下の名前で呼ばれている。そういえば、全体的に極悪人みたいな人は出てこなかったっけな。
小説における浪人生の登場パターンとしては、いちおう“深夜の事件目撃者もの”に当てはまるかな。でも、ステレオタイプな描かれ方にはなっていない。そう、氏家くん、純情で消極的な性格というか、けっこう謙虚な人? だから(?)最終的に婚約者をゲットすることが出来ているのかな。あ、でも、この人、そもそも大学はどうして落ちたのかな? あまり高望みをしている感じではないのに。結局、「実力相応」の大学に落ち着いたらしいし。どこかに(社会人になってからの話で)出世欲がない、みたいなことも書かれていたと思う。でも、わざわざ上京して予備校通い――地元に浪人生が通える予備校や塾がなかったのかな?(ないわけないか、浜松市。私の地元県を思い出してみるに、T進の衛星なのとか、けっこうな田舎でも見かけたりする。あ、時代が違うか)。考えてみれば、学生向けアパートな青葉荘、氏家と美奈子(&千枝)とは年齢はあまり違わないんだよね。えーと、氏家が1浪で、美奈子が短大の2年生で、1つ歳上なだけか。そう、自分が好きだった相手が暮らしていた部屋に引っ越したい(実際には別の人=千枝に先を越されたわけだけれど)、移り香が残っていたりするかもしれないから――みたいなのは、あれだ、田山花袋の「蒲団」かよ!(読んだことがないけれど(汗)。というかぜんぜん違うか)。相手にもよるかもしれないけれど、青春時代の初恋はあとをひくもの? 最後に“浪人生語録”も拾っておこうか(社会人になってからのものだけれど)、
<苦しかった浪人生活の中で、美奈子さんは心の慰めだった>(p.42)
そのままか(汗)。作中年がわからないけれど(駅周辺の開発されぐあいから推測できる人には推測できるのかもしれないけれど)、出版年の1990年くらいであるとすれば、7を引いて、1983年くらいの上京浪人生、かな。
| メイン |
コメント