二宮敦人 「穴」

2011年10月8日 読書
『! ビックリマーク』(アルファポリス、2009/アルファポリス文庫、2011)所収、全3篇中の2篇目。手もとにあるのは文庫版。単行本が出たときには見逃していたようだ。基本的にホラー小説が苦手なのだけれど(怖いのやら“曖昧”なのやらが好きではなくて)、でも、これはけっこう面白かったです(ある種の理屈はちゃんと通っているし)。ただ、良かれ悪しかれ、たくさんの人が死んでいるうえ、「私」(=漢字不明で「リョウコ」)はわりと平気な感じだけれど、私というか個人的には、死体の描写もちょっと…。でも、なにげなく読んだ推理小説のその手の場面のほうが、逆に残酷だったりもすることもあるし、これくらいは大丈夫――と自分に言い聞かせて(汗)。(そういえば、以前読んだ、村田基『恐怖の日常』に収録されている「山の家」は、いまだに記憶に残っている。ちょっとトラウマっぽい。)

同級生たちが楽しそうな高校生活(部活や恋愛、文化祭など)を送っているのを横目に、両親の意向にも沿ってずっと勉強してきた「私」は、両親――難関大学の卒業生で、勉強が得意ではない娘の気持ちが理解できない――とともに訪れた大学の合格発表で、不合格であることを知って涙する、というか、母親が見つけてきた予備校の寮に入って、友人が1人もいない状態で予備校通いをしている。バラ色の大学生活を目指して、ピンク色の(?)高校生活を犠牲にしたのに、灰色の浪人生活が待っているなんて! みたいなことは、予備校の難関大学を目指すコースなら、1人や2人どころか、生徒の半分くらいがそういう人たちなのでは?(“高校至上主義”的な現在ではそれほど多くはないか。たいていの人が高校生活をエンジョイ?)。

ところでコーヒー(というかカフェイン)には、そんなに精神を落ち着ける作用があるの?(うーん…)。「私」は別にコーヒー好きというわけではないのに、缶コーヒー(たぶん苦いもの)を1日5本、帰宅してからもインスタントのものをたくさん…。ふつうに飲みすぎだよね(笑)。でも、女の子ってあまり缶コーヒーを飲まないイメージがあるけれど。ストロー付きのカップのものを買っていそうな? で(?)買い置きしてあったインスタントコーヒーを、椅子を使って高いところから取ろうとして、ぐらっと来て壁に体当たり。亀裂が入ってしまう。のちに広げて、自分が入れる穴にまで拡大。穴の向こうにはコンクリートの空間があって、そこはどうやら、殺人鬼さんが殺した死体(ゴミ袋入り)の置き場にしているようで…、みたいな話。――死体を発見した時点で、警察に通報しろよ! とか思ってしまうけれど(これはミステリ思考? or 市民の義務?)、「私」は共感して(?)その姿が見えない人物と、置き手紙方式で文通を始めたり…。

“浪人生小説”としても意外と面白かった気が。細かいところで違和感はあるけれど(例えば模擬試験の重要性とか)、設定とストーリー(物語)とがちゃんと噛み合っているというか、浪人設定がたんなる設定(記号)になっていない。でも、置かれている状況が、女の子にしてはちょっと悲惨すぎる?(この予備校には気軽に相談できるチューターとか、カウンセラーやアドバイザーはいないのか?)。でも、読んでいると「私」の性格がわかってきて、大学に現役合格できなかった理由もなんとなくわかるような気もする(汗)。えーと、「穴」=人生の落とし穴、蟻地獄――とまでは書かれていなかったっけ(汗)。「受験地獄」という言葉なら、世間的にもう死語になっているかな(そうでもない?)。そう、「寮」というより、予備校生向けのたんなるアパートっぽいかもしれない(通っている予備校が経営しているところとか?)。「私」は101号室らしいけれど、隣の102号室の人とも交流がないらしい。「寮」としての長所――友だちたくさんor入居者たちの愛憎劇?――をぜんぜん享受できていないよね、この人。あと、まかない付きではなく、自炊をしているようだ。でも(作れば作れるのに)カップ麺やレトルトカレーが多いらしい。一般的な話、1人暮らしの予備校生って何を食べているのかな? ま、大学生と同じで、だんだんと外食が多くなっちゃうかもしれないよね(大学生よりも予備校生のほうが、1年を通して勉強が忙しそうだし)。

そういえば「私」の実家はどこなのかな? 自宅からは予備校に通えないのか? えーと、季節はいちおう夏だっけ? 「私」の誕生日が7月18日で、カレンダーの印を見たらしい殺人鬼さんからプレゼントをもらっている。でも、夏季のわりに死体の腐敗ぐあいが遅そうな?(ま、そういう細かいことはいいか)。――「私」目線の箇所だけでなく、太字で手記(【殺人鬼の考えたこと】)が載っていて、読者にはわりと早めに殺人鬼さんも、浪人生(一応)であることがわかる。音楽家(ピアニスト?)が夢で音楽大学に行きたくて、高校時代、それに反対する両親と衝突をしたらしい。でも、それくらいで(最終的に)人を殺すまでに至るかな?(うーん…)。いや、読んでいてそれほど不自然には感じなかったけれど。というか、大量殺人犯じたい、世の中にそれほどいないか(いたら困るな)。
 

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