宮崎博史 『クラスに忍者あり』
2011年10月10日 読書秋元文庫、1974(レビュー機能、この本の画像が出てこないな…)。微妙な面白さが漂っている小説かも(笑)。※以下いちおうネタバレ注意です。
<目高高校三年の真木律太は、忍者としてクラス中の人気を集めている。なにしろ、一番前の席で目をあけていねむりしたり、マンガを読んだりすることは、あさめしまえのことなのである。>(表紙カバー後ろより)
どこが忍者だよ!(笑)。なのに、同級生も先生も、家族も、みんな律太のことを忍者(っぽい)と思っていて、何の疑いも抱いていない。ちょっとシュール? そう、疑問符(?)も感嘆符(!)も使われていなくて、淡々と書かれているから、笑いどころがよくわからないんだよね、この小説。
口数が少なくクールで、わりと天邪鬼な律太くん。――「クラス」(教室)の場面はそれほどないけれど、えーと、忍者律太のクラスメイトで親友というかは、19歳の高校生・大谷弘一。病気で「二落」(2年留年)しているらしい。「めだか正宗」という銘酒の酒造家のひとり息子。田辺すみ子は律太のいとこで、真木家(産婦人科の医院)に出入りしていて、律太のお母さんと通じていたりする(「女忍者」とも書かれている。くのいち?)。ほかにクラスメイトは、なぜか律太のお父さん(産婦人科医、目高高校の校医も)に自分の日記を売りつけにくる、「文学少女」磯辺八重子がいたりする。設定がいいかげん――というわけではないかもしれないけれど、上で挙げた全員が最初2年A組で、4月からは3年B組に。担任が立花先生(教科は国語)であるのも変わらない。
でも(?)いとこの田辺すみ子も、日記少女の磯辺八重子もそうだけれど、学校よりも、律太の家にやって来る人が多いんだよね。商売で成功している大阪の叔父さん(お父さんの弟)は、ときどきやってきては、お父さんの昔のことを暴露するので、お母さんがひやひやする、みたいな…。律太たちが修学旅行に行って泊まった仙台の旅館の娘・木下妙子が突然、訪ねてきたり、律太は3年の夏休みに東京の予備校に通うのだけれど、そこで知り合った「老受験生」中根一成も突然やってきたり――。そういえば、なぜか担任の先生(の奥さん)が流産する、みたいなビターな(?)挿話も出てくる。叔父さんも、息子(当時高1)を中耳炎の手術の失敗で亡くしているらしい(ほかに子どもはいないとのこと)。そういうのは、必要な設定なの? (ん? 中耳炎の手術というのは、人は亡くなるほどの?)そういえば、教頭先生の名前がぶれていたような。最初「田村教頭」(p.98)とあるのに、あとのほうでは「木村ルノー」(p.173、「ルノー」はあだ名)になっている。
“浪人生小説”としての読みどころはけっこうある(と思う)けれど、えーと、その前に、この小説は「一」から「十五」までの全15章という構成になっていて、「一」は1月、「二」は2月…と1ヶ月ずつ進んでいき、最後の「十五」は翌年の3月になる。もともと何か月刊誌の連載だったのかな? …それはともかく、「一」~「三」だけだけれど(ネタバレしてしまうけれど)、律太の兄・真木永助が浪人生(1浪)。もちろん家を継ぐために医学部志望――だったのだけれど、フェイクというか、勝手に薬科大学を受験して合格してしまう。で、そのとばっちりは、もちろん弟の律太くんに行くわけだけれど、…それはそれとして。1箇所くらい引用させてもらえば、
<「にいさん、浪人てほんとにいやなもんかい」/「そうだな、そんなにいやなもんじゃないよ。これが二年三年と連続ではどうか知らないが、一年ぐらいならそうでもないよ。だいいちだれにもこうそくされないで好きな本がゆっくり読めるしな。浪人でもしなくては一生涯小説なんかゆっくり読めないよ」/永助浪人のことばは意外であった。(略)>(p.23)
「浪人は嫌か?」――直球な質問だよね(汗)。お兄ちゃん、逆のこと(=浪人はつらい、みたいなこと)も言っていたと思うけれど、…まぁいいか。律太忍者は、その後、夏期講習(帰省して空いたお兄ちゃん・永助大学生の本郷の下宿から神田の予備校へ)で、2浪3浪どころか、5浪の「老受験生」(中根一成)と知り合ってしまうわけだけれど(笑)。そう、私は「老受験生」という言葉は初めて聞いたかもしれない。作者の造語――というわけでもないのかな?(昔の受験雑誌とかを見れば出てくる?)。あ、「多浪生」ではなくて、どこかに「長浪人(ちょうろうにん?)」という言葉が使われていなかったっけ?(…見つからないな、私の頭が勝手に造語したかもしれない)。第10章というか「十」のタイトルは、その「老受験生」となっている。10月、律太に会うために(というか旅行好きなんだっけ?)中根一成が目高市にやってくる。そう、あと、律太&永助のお父さんも、昔、医専(医学専門学校)に入るのに2浪しているようだ。だから息子が浪人することに対しては、お母さんよりも寛大というか。学歴がないと思われていた叔父さんに関しても、実は…みたいな話がある。
もっとユーモア部分について触れたほうがよかったかな…。「アベック勉強法」とか。まぁいいか。――とにかく微妙に面白い“受験生小説”だと思うので、興味がある方は、読んでみてください。お薦めです(あ、面白くてもつまらなくてもそこは自己責任で)。
<目高高校三年の真木律太は、忍者としてクラス中の人気を集めている。なにしろ、一番前の席で目をあけていねむりしたり、マンガを読んだりすることは、あさめしまえのことなのである。>(表紙カバー後ろより)
どこが忍者だよ!(笑)。なのに、同級生も先生も、家族も、みんな律太のことを忍者(っぽい)と思っていて、何の疑いも抱いていない。ちょっとシュール? そう、疑問符(?)も感嘆符(!)も使われていなくて、淡々と書かれているから、笑いどころがよくわからないんだよね、この小説。
口数が少なくクールで、わりと天邪鬼な律太くん。――「クラス」(教室)の場面はそれほどないけれど、えーと、忍者律太のクラスメイトで親友というかは、19歳の高校生・大谷弘一。病気で「二落」(2年留年)しているらしい。「めだか正宗」という銘酒の酒造家のひとり息子。田辺すみ子は律太のいとこで、真木家(産婦人科の医院)に出入りしていて、律太のお母さんと通じていたりする(「女忍者」とも書かれている。くのいち?)。ほかにクラスメイトは、なぜか律太のお父さん(産婦人科医、目高高校の校医も)に自分の日記を売りつけにくる、「文学少女」磯辺八重子がいたりする。設定がいいかげん――というわけではないかもしれないけれど、上で挙げた全員が最初2年A組で、4月からは3年B組に。担任が立花先生(教科は国語)であるのも変わらない。
でも(?)いとこの田辺すみ子も、日記少女の磯辺八重子もそうだけれど、学校よりも、律太の家にやって来る人が多いんだよね。商売で成功している大阪の叔父さん(お父さんの弟)は、ときどきやってきては、お父さんの昔のことを暴露するので、お母さんがひやひやする、みたいな…。律太たちが修学旅行に行って泊まった仙台の旅館の娘・木下妙子が突然、訪ねてきたり、律太は3年の夏休みに東京の予備校に通うのだけれど、そこで知り合った「老受験生」中根一成も突然やってきたり――。そういえば、なぜか担任の先生(の奥さん)が流産する、みたいなビターな(?)挿話も出てくる。叔父さんも、息子(当時高1)を中耳炎の手術の失敗で亡くしているらしい(ほかに子どもはいないとのこと)。そういうのは、必要な設定なの? (ん? 中耳炎の手術というのは、人は亡くなるほどの?)そういえば、教頭先生の名前がぶれていたような。最初「田村教頭」(p.98)とあるのに、あとのほうでは「木村ルノー」(p.173、「ルノー」はあだ名)になっている。
“浪人生小説”としての読みどころはけっこうある(と思う)けれど、えーと、その前に、この小説は「一」から「十五」までの全15章という構成になっていて、「一」は1月、「二」は2月…と1ヶ月ずつ進んでいき、最後の「十五」は翌年の3月になる。もともと何か月刊誌の連載だったのかな? …それはともかく、「一」~「三」だけだけれど(ネタバレしてしまうけれど)、律太の兄・真木永助が浪人生(1浪)。もちろん家を継ぐために医学部志望――だったのだけれど、フェイクというか、勝手に薬科大学を受験して合格してしまう。で、そのとばっちりは、もちろん弟の律太くんに行くわけだけれど、…それはそれとして。1箇所くらい引用させてもらえば、
<「にいさん、浪人てほんとにいやなもんかい」/「そうだな、そんなにいやなもんじゃないよ。これが二年三年と連続ではどうか知らないが、一年ぐらいならそうでもないよ。だいいちだれにもこうそくされないで好きな本がゆっくり読めるしな。浪人でもしなくては一生涯小説なんかゆっくり読めないよ」/永助浪人のことばは意外であった。(略)>(p.23)
「浪人は嫌か?」――直球な質問だよね(汗)。お兄ちゃん、逆のこと(=浪人はつらい、みたいなこと)も言っていたと思うけれど、…まぁいいか。律太忍者は、その後、夏期講習(帰省して空いたお兄ちゃん・永助大学生の本郷の下宿から神田の予備校へ)で、2浪3浪どころか、5浪の「老受験生」(中根一成)と知り合ってしまうわけだけれど(笑)。そう、私は「老受験生」という言葉は初めて聞いたかもしれない。作者の造語――というわけでもないのかな?(昔の受験雑誌とかを見れば出てくる?)。あ、「多浪生」ではなくて、どこかに「長浪人(ちょうろうにん?)」という言葉が使われていなかったっけ?(…見つからないな、私の頭が勝手に造語したかもしれない)。第10章というか「十」のタイトルは、その「老受験生」となっている。10月、律太に会うために(というか旅行好きなんだっけ?)中根一成が目高市にやってくる。そう、あと、律太&永助のお父さんも、昔、医専(医学専門学校)に入るのに2浪しているようだ。だから息子が浪人することに対しては、お母さんよりも寛大というか。学歴がないと思われていた叔父さんに関しても、実は…みたいな話がある。
もっとユーモア部分について触れたほうがよかったかな…。「アベック勉強法」とか。まぁいいか。――とにかく微妙に面白い“受験生小説”だと思うので、興味がある方は、読んでみてください。お薦めです(あ、面白くてもつまらなくてもそこは自己責任で)。
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