中央公論新社、2001/中公文庫、2004。手もとにあるのは文庫版。夏の小笠原(父島)を舞台とした青春ミステリー。これは、ふつうに面白かったです。ただ、できれば暑い夏に読みたかったかな。もちろん自分がいけないのだけれど。いまもう10月(涙)。※以下いちおうネタバレ注意です。

 <東京の竹芝桟橋から<小笠原丸>に揺られること二十六時間。ぼくは二年振りに中学高校時代を過ごした父島の土を踏むが、同級生だった一宮和希が三日月山展望台から転落死する。和希は本土から来たストーカー男に脅えていたというが、男は逮捕されることもなく島に居座り続ける。そして、ついに“洋上の楽園”で殺人事件が――。>(表紙カバーより)

登場人物が多くて、「ぼく」(=木村洋介、大学3年?)の元同級生としては、山屋浩司(漁師、父親と「第二やまや丸」に)や棚橋旬子(家の民宿「たなはし荘」手伝い)、丸山翔子(中学3年から白血病で自宅療養、家は財閥で大金持ち)に一宮和希(東京の大学生、父親は前村長で「小笠原興業」社長)、藤井智之(無職、家は自動車修理「藤井自動車」)が登場してくる。東京組=「ぼく」・和希・藤井の3人が島に戻っているのは、いちおう偶然。ほかには「ぼく」が帰宅すると、有名な画家である父親・木村輪一が新しいモデルの干川雪江を描いていて。一方(?)悪友の浩司は、「ぼく」とともに高校のときから出入りしているマスター(=安西つとむ)の店「トムズハウス」の新しいアルバイト・坂戸可保里に熱をあげていたり…。あと、死んでしまう和希の妹・高校2年生の夏希やら、和希のストーカーという噂が立っている真崎(下の名前は何だっけ?)やらも出てくる。雪江・可保里・真崎が本土から来ている一時滞在組というか。あ、浩司がナンパ(?)してきた観光客・田村亜矢という大学生も出てくる。あと、そう、わりとお父さんが出てくるよね、この小説。「ぼく」・和希&夏希・藤井、あと翔子のお父さんもか。旬子の父親は病弱らしいけれど、代わりに(?)お祖父さんがちょっと出てくる(民宿の釣り舟を出している、言葉に上州弁が混じっている?)。あ、病気の翔子を(亡くなったお祖母さんの代わりに)世話している早苗(遠い親戚)も出てくる(翔子の両親はふだんは本土に)。だから要するに登場人物が多い(涙)。ま、長篇小説だからね(しかたがない)。

「島」というのは、たいてい海に囲まれているものだろうけれど、芸術家のお父さんの持論(?)が“海イコール女”らしく、けっこう裸の女性(というか女性の裸)が出てくる。「ぼく」はクールだったりもするけれど、女性たちに囲まれている(モテモテ?)というか、交わってもいる(汗)。私はこの作者の小説は、いままでに『風少女』しか読んだことがなくて、勝手に“キス止まり”なイメージを持っていたのだけれど――ちょっとびっくり(汗)。ま、亜熱帯だし、夏でもあるし、服を脱ぎたくもなるか(人にもよるだろうけれど)。どうでもいいけれど、カメを食べる人(=木村画伯)とはセッ●スできないと言うモデルの雪江が、海でお●っこをしている場面は、海亀の産卵の逆っぽい? そう、読んでいてちょっと気になったのは“青と赤”。青海亀/赤海亀とか、青灯台/赤灯台とか、何か文学的な(象徴的な)意味でもあるのかな? あ、でも、青いペディキュアとか、青い口紅とか――海に囲まれた南の島だから“青”のイメージ?(違うか)。

私は見たことがない、「グリーンペペ」というキノコ(「夜光茸」の俗称とのこと)は、暗い夜に放つ弱い光がみどり色?(蛍光グリーン?)。白血病を治せる薬「グリーンペペシン」を完成させるために、日夜、CIAのスパイたちの目も気にしながら、草木の陰に隠れていたり孤軍奮闘(?)、神出鬼没な、三日月山で電波も受信できるらしい藤井くん。ネタバレしてしまうけれど、お父さんの話によれば、去年の秋から今年の4月くらいまで東京で入院していたそうだ。であれば、2浪めの途中で完全におかしくなったのかな? 原因としては失恋が関係ないなら、単純に受験だけのせい?(いわゆる受験ノイローゼ?)。大学生になってから「ぼく」は、藤井に東京で1度会ったことがあるそうで、そのときすでにおかしな兆候(?)もあったらしい。そう、自首した藤井くんに対して「ぼく」は、中学生のときのようにまた目立ちたかったんだろう、みたいなことを言っているけれど、うーん…、そうなのかな?(まぁいいか)。高校は奨学金をもらって東京の学校――どんな高校生活を送っていたんだろう? でも、プレッシャーに負けた…というより、ちょっとプライドが高くて真面目な、中学校時代の優等生――医学部志望の動機が好きな女の子の病気を治すため、という純粋さ――のその後の(高校以降の)受験がらみの悲劇がここにもある、というか。…意味不明か(汗)。そう、どうでもいいけれど、この『海泡』(読み方は「かいほう」、単行本は中央公論新社、2001.6)のほうが、“白血病もの”片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館、2001.4→小学館文庫)よりも、2ヶ月あとに出ているようだ。2ヶ月差、…ま、偶然の一致だろうね。そう、『セカチュー』はたしか、出版されてすぐに売れたわけじゃなかったよね?(よく覚えていないけれど)。

ちなみに浪人がらみでは、文庫版「あとがき」が作者の自伝エッセイにもなっているので、過去の浪人ぐあいなどが知れる。
 

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