手もとにあるのは、朝日文庫(2009)。書名が微妙に変化しているらしいけれど、最初はトクマ・ノベルズ(1996)、そのあと幻冬舎文庫からも出ているようだ。触覚(触姦)から味覚(味姦)までの五感(五姦)で、全5巻(だじゃれになっちゃったよ)。この1巻目、けっこう面白かったです。ただ、後ろの法月綸太郎の解説を読むと、5冊ぜんぶ読んだほうがよさそうな感じ。そんなに読んでいる時間がないんだよなぁ…。文字を読むのがかなり遅いし。※以下、いつものようにネタバレ注意です。

「本格ミステリ」とか言われても、やっぱり山田正紀(2,3冊しか読んだことがないけれど)だったというか。例えば「精液」とか「野獣」とか。そう、いまなら防犯ビデオの分析とか、DNA鑑定とかでもっと早く犯人が絞れていたのではないか? 15年くらい前に書かれた小説、血液型どまりだもんなぁ…。携帯電話の普及率はこんなくらいだったっけ?(思い出せないな…)。“おとり捜査官”の北見志穂は、科学捜査研究所(科捜研)の特別被害者部(SVB)に所属している“みなし公務員”。科学は科学でも、物質を扱う科学ではなくて、人の心を扱う犯罪心理学のほう。そう、だいぶ前に新刊で買った本なので、帯が付いたままなのだけれど、TVドラマ版(見たことがないけれど)では、志穂と“おとり”である志穂を護衛する中年の袴田刑事を演じているのが、松下由樹&蟹江敬三らしい。帯には2人のツーショットの写真(たぶんTVドラマの1シーン)が使われている。そのせいで小説を読んでいるとき、どうも頭の中で松下&蟹江の声で読んでしまって――でも、意外と違和感がなかったな(汗)。

12月3日、殺人事件がらみで志穂が最初に“おとり”になっているというか、尾行しているのは、予備校生の阿部貢(20歳、島根出身。すでに2浪、ひとり暮らし、品川駅で清掃のアルバイト)。この小説も、いちおう“疑わしきは浪人生もの”ではあるけれど、夜遅くまで起きているから(それは現役受験生にもいえるけれど)とか、下を向いて歩いていて雰囲気が暗いからとか、勉強ばかりしていて欲求不満(?)だからとかではなくて――ちょっとネタバレしてしまうけれど、バイトが休みの曜日なのに品川駅に来ていた理由は、本人によれば、

 <「つい淋しいもんだから――」/「淋しい?」/「アパートにひとりでいるとたまらなく淋しくなってくるんですよ。友達はみんな大学に行ったり働いたりしているし、ガールフレンドもいない。淋しいけどやることがない。仕方がないから、休みだというのに、品川駅まで出てくるんです。駅に来たってやっぱりやることなんかないんだけど――」>(pp.43-4)

とのこと。また「浪人生=淋しい/孤独」か。淋しいのは浪人生だけじゃないだろうけれど。というか、もう12月にもなっているんだし、とりあえず予備校に行って勉強しようよ、授業がなくても自習室とかがあるでしょ? あ、でも、受験生がたくさんな場所のほうが、かえって孤独を感じてしまう?(よくわからないけれど)。

少し前に何かを読んでいたら「浮浪者」は差別用語、みたいなことが書かれていて。知らなかった、もっと早く教えて欲しかったよ(涙)。このブログでは何度も使ってしまったと思う(もちろん差別的な意図はないです)。でも、「ホームレス」と言い換えたのでは、「浪」の字がなくなっちゃうから、…これは痛恨だな(涙)。何度か書いているけれど、小説では浪人生&ホームレスのカップリングは定番というか。この小説では、浪人生が出てきたあと、ホームレスが登場してくる。あと、さらに九州から単身赴任中の中年男性(実は家出中の高校生の娘がいる)や、若い司法試験浪人(奥さんあり、キオスクに商品を納入するアルバイトをしている)も出てくる。うーん…、ちょっと被疑者というか容疑者候補たちがイメージ的に似すぎている?
 

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