西村京太郎 『七人の証人』
2011年12月25日 読書
手もとにあるのは、講談社文庫(1983)。後ろの「解説」(山下康彦)によれば、もともと1977年に実業之日本社から書き下ろしで刊行されたものだそうだ。久しぶりに読んだ西村京太郎、意外と面白かったです。※以下、ネタバレ注意です。
<十津川警部は帰宅途中を襲われ、不覚にも誘拐された。彼が気付いたときには、彼は奇怪な無人島にいた。しかもそこには、ある町の一部分がそっくり再現されていたのだ。/次々建物から現われる人間は、皆或る事件の目撃者、そしてやがて展開される狂気のシーン。会心サスペンス長編。>(カバー後ろより)
最初から最後まで十津川警部目線の小説。ちょうど1年前に起こった殺人事件で捕まり、無実を訴えたまま刑務所内で病死したらしい佐伯信夫。18年前、妻子と別れて渡ったブラジル(牧場主として成功)から戻ってきたというその父親=佐々木勇造によって(荒っぽい手段で)、法廷などで証言をした7名と公平な立場の十津川は、事件現場付近がほとんど忠実に再現された孤島に集められて――。東京というか家に帰りたくても船はないし、老人ではあっても銃を持っている佐々木に逆らうことはできないし、佐々木の望みどおり(大金を投じて作られた「私設法廷」で)それぞれの証言が再検討されていく。――読んでいて、証言に含まれる嘘や(警察の誘導的な質問のせいもあっての)思い込みが訂正されていくのは、いいと思ったのだけれど、最後のほう、真犯人を決定するさいの十津川の論理が、なんていうかちょっと不十分に感じたかな(あ、“孤島もの”でもあるというか、新たな殺人事件も起こっている)。そう、ナイフに関しては納得したけれど、財布とりんごに関しては個人的には、なんかちょっともやもやが…。結局、財布はなんで盗ったんだっけ?(読み直せば書かれているかな)。あと、佐々木は、証言者たちの身元は探偵を雇って(だっけ?)調べたと言っていたと思うけれど、でも、真犯人の経歴(過去)はちゃんと洗え切れていなかった…ということになる?(それがわかっていれば、被害者=大下誠一郎との接点もわかって…、というか、それじゃ推理小説が成立しなくなるな(汗))。
十津川警部が目覚めて最初に出会うのが、浪人生(2浪・19歳)の山口博之。本文中で「山口少年」と書かれていたり、(接続語でいえば「ところで」や「さて」みたいなものかな)「お腹が減った」と言う係(?)だったりして(登場人物の中でいちばん歳下というのもあるけれど)、子どもっぽい(ちょっと無邪気)みたいな設定になっている。だいぶ前に読んでよく覚えていないけれど、『おれたちはブルースしか歌わない』(1975)の語り手とは、かなり違うタイプの浪人生かもしれない(眼鏡をかけているし、…って眼鏡は関係ないか(汗))。小説における浪人生登場パターンとしては、わりと典型的な“深夜の事件目撃者もの”かな。そう、ちょっと思ったのだけれど、1人暮らしの浪人生の部屋に、娯楽要素=TVは要らないよね?(しかもこの小説が出たのは1970年代後半で、TVなし生活の上京貧乏大学生も多かっただろうし、けっこう贅沢?)。あと、2浪と言っているのだけれど、事件が起こったのが昨年の3月26日(の深夜、正確には日付が変わって27日)で、――少し引用させてもらえば、
<「[部屋は]一人で借りていたのかね?」/「ええ。北海道の両親が、予備校に通うのに便利だろうって、借りてくれたんです。最初は、姉と一緒に住んでいたんですけど、姉が結婚してからは、僕が一人で住んでいるんです。一年半前から」>(p.14、[括弧]は引用者補足)
とのこと。マンションの名前は「中央スカイマンション」(場所はどこだっけ? 世田谷区と書かれていた気もするけれど、ちゃんと読み直さないとわからないな)。で、↑けっこう矛盾していると思う。高校時代から両親と離れて暮らしていた(東京の高校に、そして現役受験生として予備校に通っていた)可能性もあるけれど、高校を卒業してから上京したのだとすれば(上の箇所はふつうそう読まれるのでは?)、昨年の3月下旬というのは上京したばかりのはずだから、1年半前からというのはおかしい。――あれこれと矛盾を解消するには、えーと、事件が起こった季節をもっとあとにするか(“浪人生小説”では微妙な2,3月は避けたほうがいい?)、あるいは山口くんを3浪にする……しかないかな(後者の場合、19歳=まだ少年、という設定がなくなってしまうけれど)。
えっと、どこだっけ? …わからなくなってしまったけれど、刑事ドラマが好きで、将来、刑事になりたいみたいなことも言っていたと思うけれど、それはやめたほうがよさそうだよね。殺人事件がらみで嘘の証言をしたり(嘘つきはむしろ泥棒の始まり?)、観察力もあまりなさそうだし。あ、大学受験に失敗している理由は、本人曰く、英語が苦手だから、だそうだ。でも、大学不合格の本当の(?)理由は、要するに深夜でもTVを見ていて勉強していなかった(勉強不足)みたいなことかな。
<十津川警部は帰宅途中を襲われ、不覚にも誘拐された。彼が気付いたときには、彼は奇怪な無人島にいた。しかもそこには、ある町の一部分がそっくり再現されていたのだ。/次々建物から現われる人間は、皆或る事件の目撃者、そしてやがて展開される狂気のシーン。会心サスペンス長編。>(カバー後ろより)
最初から最後まで十津川警部目線の小説。ちょうど1年前に起こった殺人事件で捕まり、無実を訴えたまま刑務所内で病死したらしい佐伯信夫。18年前、妻子と別れて渡ったブラジル(牧場主として成功)から戻ってきたというその父親=佐々木勇造によって(荒っぽい手段で)、法廷などで証言をした7名と公平な立場の十津川は、事件現場付近がほとんど忠実に再現された孤島に集められて――。東京というか家に帰りたくても船はないし、老人ではあっても銃を持っている佐々木に逆らうことはできないし、佐々木の望みどおり(大金を投じて作られた「私設法廷」で)それぞれの証言が再検討されていく。――読んでいて、証言に含まれる嘘や(警察の誘導的な質問のせいもあっての)思い込みが訂正されていくのは、いいと思ったのだけれど、最後のほう、真犯人を決定するさいの十津川の論理が、なんていうかちょっと不十分に感じたかな(あ、“孤島もの”でもあるというか、新たな殺人事件も起こっている)。そう、ナイフに関しては納得したけれど、財布とりんごに関しては個人的には、なんかちょっともやもやが…。結局、財布はなんで盗ったんだっけ?(読み直せば書かれているかな)。あと、佐々木は、証言者たちの身元は探偵を雇って(だっけ?)調べたと言っていたと思うけれど、でも、真犯人の経歴(過去)はちゃんと洗え切れていなかった…ということになる?(それがわかっていれば、被害者=大下誠一郎との接点もわかって…、というか、それじゃ推理小説が成立しなくなるな(汗))。
十津川警部が目覚めて最初に出会うのが、浪人生(2浪・19歳)の山口博之。本文中で「山口少年」と書かれていたり、(接続語でいえば「ところで」や「さて」みたいなものかな)「お腹が減った」と言う係(?)だったりして(登場人物の中でいちばん歳下というのもあるけれど)、子どもっぽい(ちょっと無邪気)みたいな設定になっている。だいぶ前に読んでよく覚えていないけれど、『おれたちはブルースしか歌わない』(1975)の語り手とは、かなり違うタイプの浪人生かもしれない(眼鏡をかけているし、…って眼鏡は関係ないか(汗))。小説における浪人生登場パターンとしては、わりと典型的な“深夜の事件目撃者もの”かな。そう、ちょっと思ったのだけれど、1人暮らしの浪人生の部屋に、娯楽要素=TVは要らないよね?(しかもこの小説が出たのは1970年代後半で、TVなし生活の上京貧乏大学生も多かっただろうし、けっこう贅沢?)。あと、2浪と言っているのだけれど、事件が起こったのが昨年の3月26日(の深夜、正確には日付が変わって27日)で、――少し引用させてもらえば、
<「[部屋は]一人で借りていたのかね?」/「ええ。北海道の両親が、予備校に通うのに便利だろうって、借りてくれたんです。最初は、姉と一緒に住んでいたんですけど、姉が結婚してからは、僕が一人で住んでいるんです。一年半前から」>(p.14、[括弧]は引用者補足)
とのこと。マンションの名前は「中央スカイマンション」(場所はどこだっけ? 世田谷区と書かれていた気もするけれど、ちゃんと読み直さないとわからないな)。で、↑けっこう矛盾していると思う。高校時代から両親と離れて暮らしていた(東京の高校に、そして現役受験生として予備校に通っていた)可能性もあるけれど、高校を卒業してから上京したのだとすれば(上の箇所はふつうそう読まれるのでは?)、昨年の3月下旬というのは上京したばかりのはずだから、1年半前からというのはおかしい。――あれこれと矛盾を解消するには、えーと、事件が起こった季節をもっとあとにするか(“浪人生小説”では微妙な2,3月は避けたほうがいい?)、あるいは山口くんを3浪にする……しかないかな(後者の場合、19歳=まだ少年、という設定がなくなってしまうけれど)。
えっと、どこだっけ? …わからなくなってしまったけれど、刑事ドラマが好きで、将来、刑事になりたいみたいなことも言っていたと思うけれど、それはやめたほうがよさそうだよね。殺人事件がらみで嘘の証言をしたり(嘘つきはむしろ泥棒の始まり?)、観察力もあまりなさそうだし。あ、大学受験に失敗している理由は、本人曰く、英語が苦手だから、だそうだ。でも、大学不合格の本当の(?)理由は、要するに深夜でもTVを見ていて勉強していなかった(勉強不足)みたいなことかな。
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