光文社、2010.12。今回初めて読んだ作家。平成5年=1993年で「大日本帝国」って、ここはいったいどういう世界?(第2次大戦の結果は? 「平成」だから昭和天皇は亡くなっているんだよね?)。文章は意外と読みやすかったし、内容的にも、なんとなく想像していたより面白かったけれど(※以下いちおうネタバレ注意です)、読み終えたいま、けっこう“もやもや”が残っている感じ(読み返せば消えるたぐいのものかもしれないけれど)。逆に(?)こことここは結局つながらないのか、みたいな箇所も、けっこう多かったかな(この名前とこの名前はどうして同じ苗字なの? とか。蓋然性の問題、偶然なら偶然でひと言あって欲しい)。あと、どうせなら(?)平面図というか俯瞰図というかが、もっとたくさんあってもよかったかな。読解力や想像力がない…という個人的な事情もあるけれど(情けない(涙))、例えば噴水があるへん以外の邸周辺とか(2つの橋それぞれがある場所とか)がよくわからなかったです。というか、もう少し頭の中に絵が描かれやすい説明をしてほしい(…ちょっと説明不足に感じたのは私だけ?)。

 <浪人中の「元女子高生」渡辺夕佳のもとにとどいた、<夢路邸>内覧パーティの誘い。恋人の東京帝大生・イエ先輩こと八重洲家康と連れだって訪れたそこには、個性的でいわくありげな招待客たちが集っていた。>(ごちゃごちゃしている帯の文句の一部)

私は本格ミステリのファンではないので(別に客の1人・新聞社に勤める似臼夏子のようにそういう人たちを「変態」だと思っているわけではないけれど)、盛りだくさんな“ガジェット”はすべて無視させてもらって……というのはやっぱりよくないかな(汗)、でも、読書量がかなり少ないので(例えば“雪の山荘”とかを)どう評価すればいいやら? な感じです(そのへん、ご理解いただければと)。――大部分が浪人生(1浪)の「あたし」(=渡辺夕佳)目線で書かれている小説。その部分はもちろん“1人称小説”。「~して。」とか「~のよう。」みたいな文末には既視感があったというか、どこかで見たことがある気がする(けれど、思い出せない)。東京帝大生のイエ先輩(本名を呼ばれるのは嫌いらしい)は天才ピアニストで、ハイレベルないわゆる“絶対音感”を持っている。「あたし」が高校2年のときに転校してきて、2人は音楽室で運命的に(?)出会う。あ、2人は1学年違い(先輩は現役合格で現在2年生らしい)。高校=勁草館高等学校があるのは、姫山市(どこだっけ? 太平洋側みたいなことは書かれていたような)。高校を卒業しても浪人中の「あたし」はそこで暮らしているようだし、東京にいる先輩(住んでいるのは吉祥寺のマンションらしい)とは、いわゆる遠距離恋愛中というか。「あたし」はかなりイエ先輩の性格(悪魔と天使、大人と子どもが同居)やら思考・行動のパターンやらを把握している模様。でも(ちょっとネタバレしてしまうけれど)なんていうかイエ先輩は、いまだに「あたし」には手を出していないらしい。

『夢路邸』(2人は東京から特急『あさま』に乗って長野県の小諸駅、そこから迎えの車に乗って矢吹山)に着いて高校の制服(勁草館の冬のセーラー服)に着がえた「あたし」を見て、イエ先輩は「(略)女子高生コスプレ?」(p.49)と訊いている。「あたし」によれば、フォーマルなドレス代わり、みたいなことらしいけれど、一般に(?)浪人中であると(1~2浪くらいであると)突然のお葬式だけでなく、何か公式なお呼ばれ(?)とかもけっこう困るよね…。あ、イエ先輩はピアニストだから(?)大丈夫っぽいけれど、大学生でも(1~2年生くらいの)たいていの人は、ちょっと困るかな…(さすがにもう高校のときの制服は着ていけないのでは? あ、入学式用に購入したものが1着あればどうにかなるか)。その後「あたし」は、ほかの招待客に対して「高校生」と嘘をついている(!)。だから(?)「元~」というより(本文中でも使われている言葉だけれど)「にせ女子高生」。なんていうか(「もう高校生ではない」でもなく「まだ大学生ではない」でもなく)“最近まで高校生だった浪人生”、“高校生の延長としての浪人生”という感じかな(意味不明?)。そう、別にツッコミどころではないけれど、「コスプレ」という言葉にしても、「女子高生」や「テロ」という言葉(概念)にしても、1993年のそれっぽくはないような…。携帯電話どころかポケットベルもあまり普及していない1993年? “女子高生ブーム”が来るのはまだ先だし、地下鉄サリン事件(無差別テロ@東京)が起こるのは1995年だし。直接登場してくるわけではないけれど、「SF作家・科学ライター」の「森博人」(p.91)――ミステリ作家の森博嗣がデビューしたのは、えーと…、調べてみると、1996年であるようだ(『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞)。逆に(?)「ハリセン」は……まぁいいか(漫画っぽいかな)、最初のへんには「パーペキ」という言葉が使われている(なんか微妙…、私の中では(1993年-2年=)1991年よりもだいぶ前に死語。…違うのかな、1990年代の流行語だったりして(汗))。

自分勝手というか“上から目線”の彼氏の前だからかもしれないけれど(関係ないか)、先輩がいる東大(東京帝大)を目指しているわりに「あたし」は、けっこう楽観主義的で、ややおバカな浪人生?(それほどでもないか、「おばか」というより「おとぼけ」な感じ?)。あ、受験(大学不合格)と関係があるのかないのか、高校の後輩がらみでシリアスな話も出てきているけれど。――少し引用させてもらえば、

 <(略)週末に日程を組んでいるのは、あたしのような曜日から浮いている浪人生だけじゃなく、ほかの招待客さんがいるからだろう。>(p.25)
 <コメンテーターで見たことあるんだ。石矢英世教授。お昼や夕方のニュースに(ここらへんが浪人生っぽい)しょちゅう出ている。(略)>(p.59)
 <(略)完全夜型浪人生のあたしがいちばん好きな空。(略)>(p.156)

という感じ。昼~夕方にTVを見ていると「浪人生っぽい」の?(うーん…)。↑のような箇所からは、語り手は自宅浪人生で、勉強は少なくとも夜中にしているのかな? などと思わせられるけれど、次のような箇所もある。

 <「ユカ」とイエ先輩。「おまえこないだの六月二十四日、何してた?」/「ええっと」このカレンダーによれば、「木曜日ですね。名古屋の鎮台予備校に行ってました。真っ当な浪人生ですから」/「ゆたかなのは結構だけど」とイエ先輩。「胸をはることじゃない(略)」>(p.246)

姫山市は愛知県かその近く? 『鎮台(ちんだい)予備校』は大手予備校らしい(p.86)。東大志望でもあるし(?)やっぱりS台がモデルなのかな? いままでに「門台予備校」とか「スンダン予備校」とか(小説ではなくて漫画だけれど)「台予備学校」というのは、見たことがあったけれど、今回は「鎮台~」…ですか(汗)。というか、どういう意味?(一発変換するのでそういう言葉があるっぽい、…まぁ意味はいいか)。――雪が降らないといけないし(?)季節は、もう12月。年明けにあるセンター試験は迫っているし、とりあえず、早めに朝型(昼型)の生活に戻したほうがいいよね。(また忘れちゃったよ、共通一次試験がセンター試験に変わったのって、いつだっけ? 1990年? 1つ上のイエ先輩が受験したとき=1992年はもう「センター」になっている?)

[追記] その後、文庫化(光文社文庫、2013.8)。
 

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