朝井リョウ 「もういちど生まれる」
2011年12月27日 読書
初めて読む作者のもの。同名の連作短篇集(幻冬舎、2011.12)所収、5篇中の4篇目。5篇とも1人称小説で(あ、※以下ネタバレ注意です)、同じ時期(5月の数日)のことが、同じ歳(19歳~20歳)の5人それぞれの視点から語られている。語り手というか主人公は1~3篇目は大学生で、ひと言でいえばすべて“青春モラトリアム小説”?(違うか)。でも、おのおの現状はこれでいいのか(小さいころ想像していた19~20歳はこんな感じではなかった)とか、将来はどうするのか(1、2篇目の主人公は大学2年生で、就職活動ならもう少し先)みたいなことを口に出したり、頭の中で考えていたりする。もちろん、具体的には人それぞれな感じ。持っている携帯音楽プレイヤーの種類や、それで聴いている音楽が人それぞれ異なるように、同じ空でも見上げ方が人によって異なるように(?)。あ、一方では(というか同時に)“片想い”=不毛な恋、報われない想いも描かれている。
読んでいて新鮮といえば新鮮だったかな。ただ、でも、新しい革袋に古い酒を入れただけのような気も…。ま、私はいい歳をしたおっさんなので、そういう読み方になっちゃうのかも。内面が繊細に(わりと感傷的に)丁寧に描かれているせいか、1篇1篇がちょっと長いようにも感じる(それは、個人的に文字を読むのがとても遅いので、そのせいかもしれないけれど)。そう、全体的に角張ったものや刺々しいものより、角のない丸いものが肯定されている世界かもしれない。カタカナよりもひらがな、な感じでもあるし。あ、ただ、ガリガリ君は溶けないうちに食べたほうがよくない?(余計なお世話か(汗))。あと、光というか、きらきらしたものも好まれている感じ(久しぶりに見た気がする、区切りの記号が「☆」。村上春樹とか新井素子とか、…あと誰だろう、けっこう使われているよね?)。そう、固有名詞はけっこう多めだけれど、文章にちゃんと溶け込んでいる感じがする。あ、でも、もし10年後にこの小説を読み返したときに自分は、例えば「奥華子」とか覚えているかな?(うーん…、まさかウィキペディアは消滅していないだろうね?)。逆に(?)比喩がけっこう浮いている感じがしたけれど、…まぁいいか。ほかには、読んでいて(推理小説ではないけれど)伏線がわかりやすすぎるような…? 例えば最初の、誰がキスをしたのか、とかにしても、もう2回くらい捻りがあるのかと思ったら、そのまま「ああやっぱり」みたいな。
表題作である4篇目について。「私」(=柏木梢)は、<美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生>(帯より)。いちおう姉の椿(R大2年)と共通の幼なじみに風人(かざと、R大2年)がいる。ときどき偶然、会って予備校(@高田馬場)まで同じ電車に乗って行ったりする。予備校――というより高校や塾っぽい? 黒板ではなくてホワイトボード、先生と生徒の関係が近い……まぁどうでもいいか(そういう予備校も多いのかも)。「私」には好きな日本史の先生(=堀田先生)がいて、昨年の友達(仲間)は1人もいないけれど、昨年と同じ予備校に通っている。現役のときには茨城の国立大学(筑波大?)に12点足りずに落ちて、今年はさらに偏差値の高いH大学(堀田先生に勧められた)を受けてまた12点足りずに落ちたらしい(本人は、その12点ぶんは堀田先生がし始めた指輪が原因…みたいなことも語っている)。あれ? いま国立大学ってどこでも点数を公表しているの?(大学によるのかな)。そういえば、2浪女子がちゃんと主人公になっている短篇小説は、今回初めて読んだかもしれない(何かすっかり忘れているような気もするけれど)。でも、1浪ではなくて2浪に設定されているのは、この連作集的には、とりあえずほかの主人公と年齢(学年)を合わせただけ…なのかな? ――そう、双子ってどうなのかな? よくわからないけれど、1浪して落ちて1つ下の弟や妹に追い抜かれる(先に大学生になられる)よりは、まだましかも。悲惨さにおいて。
姉に対して劣等感があるというか、自分に自信がない浪人生。MDプレイヤーという時代遅れ(?)の産物を使い続けていたりする。姉とは違って誕生日を祝ってくれる人が1人もいなかったり…。で、姉の振りをして学生映画に出演――。わりとよく見かける“浪人生変装(変身)もの”かもしれないけれど、監督さん(映画『レイン』…ではなくて『レオン』が好きで、色がレインボウな眼鏡をかけている)には、なりすまし(?)が早めに見抜かれている。で、そのあとは“浪人生自殺もの”のバリエーションかな? ま、いちど死ななければ生まれ変われないもんね(アンソロジー『19―ナインティーン―』所収の紅玉いづき「2Bの黒髪」を思い出したりもした)。なぜか忘れがちだけれど、考えてみれば「誕生日」って、文字どおり「誕生した日」なんだよね。読んでいて(いい意味で)ちょっと鳥肌が…。でも、<「この世界に生まれ落ちたみたいだったよ」>(p.219)なんて、同じ歳くらいの学生が言うかな?(ちょっと現実味がないような気も…。あ、作者じしん、まだ現役の大学生だっけ? 言える人には言えるのか)。
ちなみに、3篇目の「俺」=渡辺新(あらた)は美大1年生で、1年浪人している。その先輩の「ナツ先輩」(3年生)も、5篇目を読むと1年浪人しているようだ(関係ないけれど、2篇目を踏まえて5篇目と読むと、要するにツンデレ?)。そう、5人分も読まされた(?)わけだけれど、あと5人くらいの言い分(?)も聞いてみたかったような…。ひーちゃん、風人、結実子、椿、ナツ先輩…。
※少し修正(削除&加筆)しました(2012/02)。
[追記] 収録本はその後、文庫化される(幻冬舎文庫、2014.4)。
読んでいて新鮮といえば新鮮だったかな。ただ、でも、新しい革袋に古い酒を入れただけのような気も…。ま、私はいい歳をしたおっさんなので、そういう読み方になっちゃうのかも。内面が繊細に(わりと感傷的に)丁寧に描かれているせいか、1篇1篇がちょっと長いようにも感じる(それは、個人的に文字を読むのがとても遅いので、そのせいかもしれないけれど)。そう、全体的に角張ったものや刺々しいものより、角のない丸いものが肯定されている世界かもしれない。カタカナよりもひらがな、な感じでもあるし。あ、ただ、ガリガリ君は溶けないうちに食べたほうがよくない?(余計なお世話か(汗))。あと、光というか、きらきらしたものも好まれている感じ(久しぶりに見た気がする、区切りの記号が「☆」。村上春樹とか新井素子とか、…あと誰だろう、けっこう使われているよね?)。そう、固有名詞はけっこう多めだけれど、文章にちゃんと溶け込んでいる感じがする。あ、でも、もし10年後にこの小説を読み返したときに自分は、例えば「奥華子」とか覚えているかな?(うーん…、まさかウィキペディアは消滅していないだろうね?)。逆に(?)比喩がけっこう浮いている感じがしたけれど、…まぁいいか。ほかには、読んでいて(推理小説ではないけれど)伏線がわかりやすすぎるような…? 例えば最初の、誰がキスをしたのか、とかにしても、もう2回くらい捻りがあるのかと思ったら、そのまま「ああやっぱり」みたいな。
表題作である4篇目について。「私」(=柏木梢)は、<美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生>(帯より)。いちおう姉の椿(R大2年)と共通の幼なじみに風人(かざと、R大2年)がいる。ときどき偶然、会って予備校(@高田馬場)まで同じ電車に乗って行ったりする。予備校――というより高校や塾っぽい? 黒板ではなくてホワイトボード、先生と生徒の関係が近い……まぁどうでもいいか(そういう予備校も多いのかも)。「私」には好きな日本史の先生(=堀田先生)がいて、昨年の友達(仲間)は1人もいないけれど、昨年と同じ予備校に通っている。現役のときには茨城の国立大学(筑波大?)に12点足りずに落ちて、今年はさらに偏差値の高いH大学(堀田先生に勧められた)を受けてまた12点足りずに落ちたらしい(本人は、その12点ぶんは堀田先生がし始めた指輪が原因…みたいなことも語っている)。あれ? いま国立大学ってどこでも点数を公表しているの?(大学によるのかな)。そういえば、2浪女子がちゃんと主人公になっている短篇小説は、今回初めて読んだかもしれない(何かすっかり忘れているような気もするけれど)。でも、1浪ではなくて2浪に設定されているのは、この連作集的には、とりあえずほかの主人公と年齢(学年)を合わせただけ…なのかな? ――そう、双子ってどうなのかな? よくわからないけれど、1浪して落ちて1つ下の弟や妹に追い抜かれる(先に大学生になられる)よりは、まだましかも。悲惨さにおいて。
姉に対して劣等感があるというか、自分に自信がない浪人生。MDプレイヤーという時代遅れ(?)の産物を使い続けていたりする。姉とは違って誕生日を祝ってくれる人が1人もいなかったり…。で、姉の振りをして学生映画に出演――。わりとよく見かける“浪人生変装(変身)もの”かもしれないけれど、監督さん(映画『レイン』…ではなくて『レオン』が好きで、色がレインボウな眼鏡をかけている)には、なりすまし(?)が早めに見抜かれている。で、そのあとは“浪人生自殺もの”のバリエーションかな? ま、いちど死ななければ生まれ変われないもんね(アンソロジー『19―ナインティーン―』所収の紅玉いづき「2Bの黒髪」を思い出したりもした)。なぜか忘れがちだけれど、考えてみれば「誕生日」って、文字どおり「誕生した日」なんだよね。読んでいて(いい意味で)ちょっと鳥肌が…。でも、<「この世界に生まれ落ちたみたいだったよ」>(p.219)なんて、同じ歳くらいの学生が言うかな?(ちょっと現実味がないような気も…。あ、作者じしん、まだ現役の大学生だっけ? 言える人には言えるのか)。
ちなみに、3篇目の「俺」=渡辺新(あらた)は美大1年生で、1年浪人している。その先輩の「ナツ先輩」(3年生)も、5篇目を読むと1年浪人しているようだ(関係ないけれど、2篇目を踏まえて5篇目と読むと、要するにツンデレ?)。そう、5人分も読まされた(?)わけだけれど、あと5人くらいの言い分(?)も聞いてみたかったような…。ひーちゃん、風人、結実子、椿、ナツ先輩…。
※少し修正(削除&加筆)しました(2012/02)。
[追記] 収録本はその後、文庫化される(幻冬舎文庫、2014.4)。
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