角川スニーカー文庫、1998。たぶん5年くらい前に古本で買ったものだけれど、電撃文庫から再刊もされている? どんなシリーズなのか事前情報なしで、いきなりこの巻を読んでみた(汗)。でも(?)かなり読みやすかったし、ここ最近、読んだ小説のなかでは、いちばん面白かったかもしれない。主人公はわりと明るくて元気な、夢を持って頑張っている女の子。ライトノベルかもしれないけれど、ちょっと児童文学っぽくもある? ※以下いちおうネタバレ注意です。

 <どうして、わたしだけ試験に落ちるわけ!? わたし、パステルは、冒険者を志してエベリンにやってきた。でも冒険者になるには、試験に合格しなければならないなんて……旅の途中で知り合った、ルーミィ、クレイ、トラップと成績はいいのになぜか冒険者になれないキットンといっしょにバイト生活をしながら、わたしは予備校に通うはめになった。今度こそ、テストに受かるかしら? 「フォーチュン・クエスト」はじまりの物語その2>(表紙カバーより)

浪人生は浪人生でも、受験した(/する)のは、どこか学校の入学試験ではなくていちおう資格試験。しかも、口絵の登場人物一覧みたいなものを見ると、詩人(バード)志望の「わたし」(=パステル・G・キング)はまだ14歳であるらしく、大学受験浪人(現代日本のそれ)と直接比べても、あまり意味はないかもしれない(そんなこともないか、心理面とかいろいろあるし)。えーと、エベリンは都市ゆえ物価が高いらしくて――ちょっとネタバレしてしまうけれど、「わたし」は午前中に予備校に通って、午後は、口数が少なく謎めいている女主人(リア・ボンド)のいる雑貨屋で店番などをして、そのあとは、滞在している宿屋の皿洗いもしている(皿洗いは、子どものルーミィを除いて全員)。「苦学生」という言葉は似合わないかもしれないけれど、でも、まぁそんな感じかもしれない。お金の問題は、ちょっと現実的だよね。単位は(「円」とか「ドル」とかではなく)「G」だけれど。

読み終わって、個人的には最初のレオナの話がいちばん印象に残っているかな…。せつなかったというか、ちょっと苦味(「わたし」にとっては後悔)が残る感じだったというか。「わたし」は「スンダン予備校」の詩人コースに通い始めるのだけれど、そのコースには「わたし」を含めて5人の生徒がいて、そのうちの1人がレオナ(本名はメリッサ・ギル)。詩人(志望)には美しい人が多いらしく、カップルのサキとドリは美男美女で、あとエンニオも美男子。でも(?)レオナさんは、「わたし」と同じくふつうな容姿らしい。あとでお嬢様であることもわかったりするのだけれど、詩人になる気はないらしく、「わたし」に自分の話を聞いてもらいたがってばかりいて…。「わたし」というかパステルは、バイトや勉強で忙しかったからしかたがなかったのかもしれないけれど。でも、もう少しどうにかならなかったのかな、と思ってしまう。

予備校風景というか、「わたし」は詩人志望の人向けの授業だけでなく、一般の授業も受けていて、それは、

 <一般の学科は、それこそ雑多な職業の人たちばかり。ファイターもいれば、魔法使いもいる……あ、ちがった。正確に言うと、ファイター志望もいれば、魔法使い志望もいる……だった。/だって、まだわたしたちは冒険者カード、もらってないんだもんね。/そう思うと、なんだか気楽。/隣の、いかにも大魔導師然とした白いヒゲのおじいさんも、筋肉むきむきのファイターおにいさんも、みーんな浪人生なんだもんね。/何だか、そう思うと、仲間! って感じで、すっごく親近感がわいてくる。>(pp.37-8)

という感じらしい。体型や容貌だけでなくて年齢もバラバラな感じ? でも、みんな浪人生仲間なのか(おー)。なかには性格の歪んでしまった万年浪人生が混じっているかもしれないよね(汗)。受験がらみでは、ネタバレしてしまうけれど、彼女のドリと違って歌(実技試験)に難のあるサキくんがね…。そう、読んでいて一瞬、これは何の歌だっけ? とか思ってしまったけれど、あぁ『ウルトラマン・タロウ』か、と(汗)。でも、「わたし」は(これもネタバレかな)は、結局、試験に受かるのだけれど(サキのことがあっても)、予備校(3ヶ月通った)の先生に合格の報告に行く場面なんかも、“受験生小説”としてはいい感じかも。読んでいて微笑ましい気持ちになるひとコマというか。
 

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