岬兄悟 『ハートでジャンプ!』
2012年5月2日 読書
ソノラマ文庫、1985。第2巻というか続編の『東京バッド・ボーイズ』(同、1986)も合わせて読む。『ハート~』は長篇、『東京~』は短篇連作(3篇)。ミステリーではないですが、※以下、いちおうネタバレ注意です。ひと言でいえば、アニメやマンガに近いドタバタ冒険青春SF小説?(毎度、ひと言になっていない(汗))。主人公の2人(+1人)の漫才的な部分(かけあい)を楽しむような小説かもしれないけれど、冗長というか冗漫というかで、話(ストーリー)がなかなか前に進んでいかなくて…(涙)。いや、でも、読みやすくてよかったし、なんとなく想像していたよりも、何割増しかで面白かったけれど。うーん…、思うに出版された当時(1980年代半ば)に読んでいれば、冗長に感じる部分も含めて、もっと面白く読めたかもしれない(わからないけれど)。あと、この作者の小説って(あまり読んだことがないけれど)全体的に固体よりも液体…というか、固形物よりも液状のものが出てくることが多い? 個人的には(自覚があったりなかったりするけれど)容器が必要とされそうな捉えどころがないものよりも、なんていうか、もっとカチっとしたもののほうが好きなんだよね(そう、何度も書いているけれど、私は基本的にホラー小説が苦手です)。あ、でも、一般に子どもって、どろどろしたものやぐちゃぐちゃしたものとかをけっこう好む傾向がある? 子ども(男の子)向けのソノラマ文庫だもんな…。内容は――引用させてもらえば、
<都心に近い3DKの一戸建てが月4万という超格安で貸家に出ていれば、出物だと喜ぶ前に当然何かあると疑ってみるのが人情だ。一家心中か、床下の腐乱死体か。そして現に、一緒に家を見に行った弟分の高志は悲鳴をあげ続けていた。/――兄貴、なんかこの家ソフト・フォーカスだね。ボンヤリ見える。――兄貴、絵やの中央で変な爺さんが逆立ちしてた。――兄貴、壁の中にピンクの服を着た女の子が見えたよ~~。/だが幸か不幸かタイミングがずれ、修が爺さんも少女も目撃しなかったのが、奇ッ怪至極の次元冒険の旅の始まりとなった。この家は、次元航行船[ジャンプ・シップ]に衝突され、重なり合っていたのだ。修はいやがる高志をこづいて家を借りることを宣言し、不動産屋の親父は万歳をした。/気鋭がおくるハチャメチャ痛快作!>([括弧]はルビ、「~~」はもっと細かい波。『ハートで~』のカバー折り返しより)
という感じ。別に全文を引かなくてもよかったか(長い)。↑入居するまでの展開は、ザ・ドリフターズのコントみたいだけれど、えーと、4流私大の大和大学に通っている大学2年生の修(苗字は長渕)とその大学を目指している浪人生の高志(苗字は宇地木)は、高校のときに『フォーク&ロック研究会』というクラブに所属していて、1年違いの先輩と後輩。なんていうか、TVドラマの脇役として登場してきそうな、チンピラの“兄貴”とその子分みたいな感じ? ツッコミとボケというより、ドツキとボケ? ほとんどの部分がいちおう修目線なのだけれど、後輩の高志目線の箇所や、船長というか放浪者(ジャンパー)の花丸老人(=ダダ花丸)目線の箇所もある。えーと、あと、上の「少女」というのは(ちょっとネタバレしてしまうけれど)、家(当時は赤石家)が花丸老人の次元航行船(=『ラブリー花丸号』)に衝突されたさいに幽体離脱してしまい、幽体(意識)だけの存在になっている愛ちゃん(赤石愛)。肉体と両親は次元をさまようことになって、行方知れずに。そういえば、男の子向けで男の子が活躍する小説だからか、全体的に女の子/女性がちゃんと描かれていないような? いちおう萌え要素(やエロ分)もあることはあるけれど。逆に(?)BLっぽさもあるというか、2巻目=『東京~』では(これもちょっとネタバレしてしまうけれど)高志が卵(!)を産んだりしている。
早めに本題に。本題というのは、小説中浪人生の高志くんがどういう浪人生か(浪人生としてどう描かれているか)ということだけれど、とりあえず、4流大学にも落ちるような、ぜんぜん勉強ができないお馬鹿な受験生…という感じかな。お金には困っていないというか、かなり大きな家に住んでいるらしい。お父さんは、建築会社『宇地木建設』の社長。小学校しか出ていなくて、日雇いからの叩きあげらしい。お母さんのほうは中学校までしか出ていないらしい。…ま、息子には大学まで出てもらいたいと思うかな。高志は以前、いちおう予備校にも通っていたらしい。
<「おれと住むのがいやなのか?」/「おれ受験生だぜ。浪人だぜ。毎週三人の家庭教師も来るんだぜ。予備校はむずかしくてついて行けないから、やめちゃったけどもよ」/「勉強なら、おれが教えてやる。おまえが目指している大学の先輩が教えんだから、まちがいねえだろ。おまえん所の親にはおれが説得してやっから」/(略)>(p.52、『ハートで~』)
お母さんと話をして、修はまんまと(?)教師代として月々15万円(+家賃と水道光熱費)をもらうことになるのだけれど、2巻目の話、(修が)競馬などで使ってしまうので、結局、2人は貧乏生活を送っている。大学生&浪人生の共同生活といえば、やっぱり“貧乏”が定番? 予備校と家庭教師3人とでは、どちらが授業料は高いんだろう?(家庭教師の時間数にもよるか)。そう、実際に修が勉強(世界史)を教えている場面があるのだけど、高志くん、やっぱりぜんぜん勉強(暗記)ができない模様。あ、そもそもどうして大和大学を目指しているか、といえば、もちろん(?)愛する兄貴と同じ大学に入りたいから(笑)。
~・~・~・~・~・~・~・~・~
あまり関係がない話だけれど、ソノラマ文庫は、昔のコバルト文庫と比べると“浪人生”があまり出て来ない?(そもそもコバルト文庫のほうが刊行点数が多そうだし、内容的にも地に足がついていそう=日常系のものが多そうだし、…ま、そんな感じで納得はできるけれど)。ソノラマ文庫では、以前(だいぶ前に)とりあげた皆川ゆか『太陽系アイドル伝説』(上下巻)以外にも、笹本祐一『ARIEL』シリーズや辻真先“スーパー&ポテト”シリーズには、浪人生が出てくる。出てくるというか、メインキャラの1人が途中で浪人生になっている。『ARIEL』(ノベルス化もされている)は読む気がせず(文体と巻数が多いせい)、スーパー&ポテトは(創元推理文庫から再刊されているもの以外)いまだに入手できず。
<都心に近い3DKの一戸建てが月4万という超格安で貸家に出ていれば、出物だと喜ぶ前に当然何かあると疑ってみるのが人情だ。一家心中か、床下の腐乱死体か。そして現に、一緒に家を見に行った弟分の高志は悲鳴をあげ続けていた。/――兄貴、なんかこの家ソフト・フォーカスだね。ボンヤリ見える。――兄貴、絵やの中央で変な爺さんが逆立ちしてた。――兄貴、壁の中にピンクの服を着た女の子が見えたよ~~。/だが幸か不幸かタイミングがずれ、修が爺さんも少女も目撃しなかったのが、奇ッ怪至極の次元冒険の旅の始まりとなった。この家は、次元航行船[ジャンプ・シップ]に衝突され、重なり合っていたのだ。修はいやがる高志をこづいて家を借りることを宣言し、不動産屋の親父は万歳をした。/気鋭がおくるハチャメチャ痛快作!>([括弧]はルビ、「~~」はもっと細かい波。『ハートで~』のカバー折り返しより)
という感じ。別に全文を引かなくてもよかったか(長い)。↑入居するまでの展開は、ザ・ドリフターズのコントみたいだけれど、えーと、4流私大の大和大学に通っている大学2年生の修(苗字は長渕)とその大学を目指している浪人生の高志(苗字は宇地木)は、高校のときに『フォーク&ロック研究会』というクラブに所属していて、1年違いの先輩と後輩。なんていうか、TVドラマの脇役として登場してきそうな、チンピラの“兄貴”とその子分みたいな感じ? ツッコミとボケというより、ドツキとボケ? ほとんどの部分がいちおう修目線なのだけれど、後輩の高志目線の箇所や、船長というか放浪者(ジャンパー)の花丸老人(=ダダ花丸)目線の箇所もある。えーと、あと、上の「少女」というのは(ちょっとネタバレしてしまうけれど)、家(当時は赤石家)が花丸老人の次元航行船(=『ラブリー花丸号』)に衝突されたさいに幽体離脱してしまい、幽体(意識)だけの存在になっている愛ちゃん(赤石愛)。肉体と両親は次元をさまようことになって、行方知れずに。そういえば、男の子向けで男の子が活躍する小説だからか、全体的に女の子/女性がちゃんと描かれていないような? いちおう萌え要素(やエロ分)もあることはあるけれど。逆に(?)BLっぽさもあるというか、2巻目=『東京~』では(これもちょっとネタバレしてしまうけれど)高志が卵(!)を産んだりしている。
早めに本題に。本題というのは、小説中浪人生の高志くんがどういう浪人生か(浪人生としてどう描かれているか)ということだけれど、とりあえず、4流大学にも落ちるような、ぜんぜん勉強ができないお馬鹿な受験生…という感じかな。お金には困っていないというか、かなり大きな家に住んでいるらしい。お父さんは、建築会社『宇地木建設』の社長。小学校しか出ていなくて、日雇いからの叩きあげらしい。お母さんのほうは中学校までしか出ていないらしい。…ま、息子には大学まで出てもらいたいと思うかな。高志は以前、いちおう予備校にも通っていたらしい。
<「おれと住むのがいやなのか?」/「おれ受験生だぜ。浪人だぜ。毎週三人の家庭教師も来るんだぜ。予備校はむずかしくてついて行けないから、やめちゃったけどもよ」/「勉強なら、おれが教えてやる。おまえが目指している大学の先輩が教えんだから、まちがいねえだろ。おまえん所の親にはおれが説得してやっから」/(略)>(p.52、『ハートで~』)
お母さんと話をして、修はまんまと(?)教師代として月々15万円(+家賃と水道光熱費)をもらうことになるのだけれど、2巻目の話、(修が)競馬などで使ってしまうので、結局、2人は貧乏生活を送っている。大学生&浪人生の共同生活といえば、やっぱり“貧乏”が定番? 予備校と家庭教師3人とでは、どちらが授業料は高いんだろう?(家庭教師の時間数にもよるか)。そう、実際に修が勉強(世界史)を教えている場面があるのだけど、高志くん、やっぱりぜんぜん勉強(暗記)ができない模様。あ、そもそもどうして大和大学を目指しているか、といえば、もちろん(?)愛する兄貴と同じ大学に入りたいから(笑)。
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あまり関係がない話だけれど、ソノラマ文庫は、昔のコバルト文庫と比べると“浪人生”があまり出て来ない?(そもそもコバルト文庫のほうが刊行点数が多そうだし、内容的にも地に足がついていそう=日常系のものが多そうだし、…ま、そんな感じで納得はできるけれど)。ソノラマ文庫では、以前(だいぶ前に)とりあげた皆川ゆか『太陽系アイドル伝説』(上下巻)以外にも、笹本祐一『ARIEL』シリーズや辻真先“スーパー&ポテト”シリーズには、浪人生が出てくる。出てくるというか、メインキャラの1人が途中で浪人生になっている。『ARIEL』(ノベルス化もされている)は読む気がせず(文体と巻数が多いせい)、スーパー&ポテトは(創元推理文庫から再刊されているもの以外)いまだに入手できず。
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