日下圭介 「女怪盗が盗まれた」
2012年5月3日 読書
同名書(光文社文庫、1994)所収、7篇中の4篇目。初出誌は(本の後ろのほうによれば)『小説宝石』1984年10月号・11月号らしい(「問題編」と「解答編」に分かれている小説で、後ろの「解説」(山前譲)によれば、もともと<犯人当ての懸賞のために書かれた作品>とのことだから、たぶん「問題編」が10月号に、「解答編」が11月号に…だと思う)。※以下、いちおうネタバレ注意です。
<私鉄沿線のとあるマンション。彼女の部屋で二人きり、ぼくらは楽しい一夜を過ごすはずだった。ところが、ひょんなことから女泥棒を捕まえてしまった! しかも、マンションの住人の中に共犯者がいるらしい。とりあえず朝まで、女泥棒をマンションにおいてやることになったが、それが殺人事件の幕開きだった!/謎解きの興味を満喫できる全七編。贅沢な傑作推理小説集!>(表紙カバー後ろより)
文体というか、雰囲気でいえば(ちょっと上品な?)ユーモア・ミステリーかな。ちょっと薄味だけれど、ドタバタ・コメディでもあるかな。「ぼく」と彼女の恵美は大学生なので、「青春」を付けてもいいかもしれない(青春ユーモア・ミステリー)。「ぼく」は、事件と聞くとときめいてしまう(?)恵美に少し振り回されている感じ。「ぼく」が期待している、体の関係もなかなか前進していかない(ちょっと漫画っぽいかな)。…ま、それはともかく。
ヨーロッパに旅行している伯母さんのマンションの部屋を、その間だけ借りている恵美。そこに遊びに来ていた「ぼく」(恵美からは「ヒロシさん」と呼ばれている)は、いったん帰りかけたのだけれど、途中で忘れものに気づいて引きかえすと、部屋の前で泥棒(若い女性)と鉢合わせして、捕まえてしまう。そのさいに騒ぎを聞きつけて部屋から出てきた住人たち――あやしい面々、のなかに泥棒(空き巣)に留守宅を教えていた共犯者が…、みたいな話に。なんていうか意外とあっけない終わり方だったかな。言われてみれば「なんだ、そんな単純なオチか」みたいな。うーん…、マンションだから、とりあえず部屋の上下関係には気をつけて読んではいたけれど。
「ぼく」はマンションに泊まることに。恵美の部屋ではなくて、いちばん年齢が近くて同性だからか、鴨居明の部屋。
<鴨居明 二浪中の予備校生だ。とても明るい顔をしている。浪人が、こんな楽天的でいいのかと思ってしまう。原宿辺りの街角で、ダンスでも踊ってた方が似合いそうだ。>(p.150)
竹の子族? 初出が1984年の小説、<明るい顔>というあたり、やっぱり1980年代っぽいかな(1970年代であるとまだ暗い感じの浪人生が多いと思う。…あ、少なくとも小説の話)。小説における浪人生登場パターンとしては、明らかに“アパートやマンションのあやしい住人の1人”、“犯人候補の1人”という感じだけれど、この鴨居くんの部屋の隣が泥棒(=麻矢)を閉じ込めておいた部屋で、そこから誰かに電話をしている声が漏れ聞こえてきたりもして――そもそも「ぼく」と一緒ということもあるし、この浪人生は、早々に犯人(泥棒の共犯者)候補からはずされてしまう感じ。鴨居の部屋は、壁にポスターがたくさん貼ってあったり、ステレオやビデオデッキがあったり、なぜか大きな熊のぬいぐるみがあったり、サイドボードには高そうな酒が並んでいたり…(p.159)。実家というか、父親は長崎で何軒かホテルを経営しているらしい。要するにお金に困っていない(たぶん勉強もしていない)放蕩息子?
ちなみに1つ手前(3篇目)に収録されている「犯人は誰だ刑事は誰だ」でも、「ぼく」&恵美(たぶん4篇目と同じコンビ)が活躍(?)している。こちらの作品によれば、2人は同じ大学の3年生で、でも、「ぼく」のほうは2浪していて年上であるらしい(「ぼく」は23歳で、恵美は21歳)。そう、このシリーズ(?)2篇だけでなく、もっとないのかな? あればもう少し読んでみたいな。
<私鉄沿線のとあるマンション。彼女の部屋で二人きり、ぼくらは楽しい一夜を過ごすはずだった。ところが、ひょんなことから女泥棒を捕まえてしまった! しかも、マンションの住人の中に共犯者がいるらしい。とりあえず朝まで、女泥棒をマンションにおいてやることになったが、それが殺人事件の幕開きだった!/謎解きの興味を満喫できる全七編。贅沢な傑作推理小説集!>(表紙カバー後ろより)
文体というか、雰囲気でいえば(ちょっと上品な?)ユーモア・ミステリーかな。ちょっと薄味だけれど、ドタバタ・コメディでもあるかな。「ぼく」と彼女の恵美は大学生なので、「青春」を付けてもいいかもしれない(青春ユーモア・ミステリー)。「ぼく」は、事件と聞くとときめいてしまう(?)恵美に少し振り回されている感じ。「ぼく」が期待している、体の関係もなかなか前進していかない(ちょっと漫画っぽいかな)。…ま、それはともかく。
ヨーロッパに旅行している伯母さんのマンションの部屋を、その間だけ借りている恵美。そこに遊びに来ていた「ぼく」(恵美からは「ヒロシさん」と呼ばれている)は、いったん帰りかけたのだけれど、途中で忘れものに気づいて引きかえすと、部屋の前で泥棒(若い女性)と鉢合わせして、捕まえてしまう。そのさいに騒ぎを聞きつけて部屋から出てきた住人たち――あやしい面々、のなかに泥棒(空き巣)に留守宅を教えていた共犯者が…、みたいな話に。なんていうか意外とあっけない終わり方だったかな。言われてみれば「なんだ、そんな単純なオチか」みたいな。うーん…、マンションだから、とりあえず部屋の上下関係には気をつけて読んではいたけれど。
「ぼく」はマンションに泊まることに。恵美の部屋ではなくて、いちばん年齢が近くて同性だからか、鴨居明の部屋。
<鴨居明 二浪中の予備校生だ。とても明るい顔をしている。浪人が、こんな楽天的でいいのかと思ってしまう。原宿辺りの街角で、ダンスでも踊ってた方が似合いそうだ。>(p.150)
竹の子族? 初出が1984年の小説、<明るい顔>というあたり、やっぱり1980年代っぽいかな(1970年代であるとまだ暗い感じの浪人生が多いと思う。…あ、少なくとも小説の話)。小説における浪人生登場パターンとしては、明らかに“アパートやマンションのあやしい住人の1人”、“犯人候補の1人”という感じだけれど、この鴨居くんの部屋の隣が泥棒(=麻矢)を閉じ込めておいた部屋で、そこから誰かに電話をしている声が漏れ聞こえてきたりもして――そもそも「ぼく」と一緒ということもあるし、この浪人生は、早々に犯人(泥棒の共犯者)候補からはずされてしまう感じ。鴨居の部屋は、壁にポスターがたくさん貼ってあったり、ステレオやビデオデッキがあったり、なぜか大きな熊のぬいぐるみがあったり、サイドボードには高そうな酒が並んでいたり…(p.159)。実家というか、父親は長崎で何軒かホテルを経営しているらしい。要するにお金に困っていない(たぶん勉強もしていない)放蕩息子?
ちなみに1つ手前(3篇目)に収録されている「犯人は誰だ刑事は誰だ」でも、「ぼく」&恵美(たぶん4篇目と同じコンビ)が活躍(?)している。こちらの作品によれば、2人は同じ大学の3年生で、でも、「ぼく」のほうは2浪していて年上であるらしい(「ぼく」は23歳で、恵美は21歳)。そう、このシリーズ(?)2篇だけでなく、もっとないのかな? あればもう少し読んでみたいな。
コメント