連作短篇集(といえば連作短篇集)『鉄のライオン』(光文社文庫、2011.4)の最初の1篇(全12篇)。単行本は『ブルーベリー』(光文社、2008.4)。

 <一九八一年三月。大学の合格発表のため遠く離れた西の田舎町から東京に来た「僕」。その長旅には同級生の裕子という相棒がいて、彼女は、東京暮らしの相棒にもなるはずだった――。ロング・バケイション、ふぞろいの林檎たち、ボートハウス、見栄講座……。「’80年代」と現代を行き来しつつ描く、一人の上京組大学生が経験する出会いと別れ。『ブルーベリー』を改題・加筆>(カバー背より)

1981年3月の某日、上京して3日前からユースホステル(部屋が男女別々)に宿泊している「僕」と裕子(ひろこ)。「僕」はいま、玄関ホールで裕子が出てくるのを待っている…のだけれど、彼女はなかなか姿を現さない。まだ翌日に合格発表を残している「僕」に対して、彼女のほうは前日に全敗(もちろん大学受験の話)が決定している。で、約束した時間を過ぎて、やっと現われた彼女と「僕」は歩いて原宿に――。最後のデート(?)と別れとが描かれていて、切ないといえば切ないかもしれないけれど、短い(手もとの文庫で20ページもない)スケッチ風な話なので、例えばいままで(高校時代に)どういう付き合いをしていたのかが、ほとんどわからなくて――でも、彼女はいい性格というか、自分のほうから身を引いた…という感じなのかな? 彼女というか裕子さんは、浪人が決まったら地元の予備校に通うことになっていて(そう親と約束しているらしく)、「僕」はダメ元で(?)東京の予備校に通えないかとか、家出は無理か、とか哀願(というほどでもないか)してみるのだけれど、「無理」と断られてしまう。なんていうか、女の子のほうが現実主義的で、18歳くらいだとまだ男の子よりも“大人”なのかもしれない(いや、よくわからないけれど)。

えーと、あと、時代背景について。中国残留孤児の人たちの初めての訪日(「僕」たちのホテルが代々木オリンピックセンターに隣接している)、原宿・竹下通りのクレープ屋さん、竹の子族、具志堅用高(ボクシング世界ジュニアフライ級チャンピオン)の14度目の防衛戦でのKO負け…。うーん、個人的には(以前、読んだ『さつき断景』でもそうだったけれど)ちょっと取って付けたような感じがしてしまう(それほどでもないかな…)。TV番組のなかで流される「当時はこんな時代だった」的な資料映像を見せられているような、というか。

ちなみに2篇目(=「恋するカレン・みちのく純情篇」)以降に出てくる大学の同級生・梶本(仙台出身)は1浪しているらしい。予備校(仙台)時代に……ま、細かいことはいいか(短いものなので、私の下手な説明を聞く(読む)よりも直接読んだほうが早いです、たぶん)。あ、「僕」(&裕子)は要するに山口県出身?
 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索