手もとにあるのは図書館本『河野多惠子全集 第3巻』(新潮社、1995)。単行本は『骨の肉』(講談社、1971)に収録されているようだ。初出は『文學界』1967年1月号であるらしい。

私はまったく“読めて”いないです。ぜんぜんピンと来なくて(涙)。主人公は(アンニュイまでいかないくらいの?)無目的な女子大生・敏子(苗字は塚本)。頭の中身が読者にダダ漏れ気味だけれど、何が言いたいのやら私にはよくわからず(涙)。冒頭はタクシーをとめて乗って、運転手と言葉を交わしたりする場面で――そんなに詳しく書いてもしかたないか。先を読むと、夏休みなので友人たちと帰郷の予定…だったけれど、自分は帰郷を取りやめる、ということをみんなに伝えに東京駅に…ということがわかる。現在は大学3年生(有名な私大、とのこと)。高校で同じクラスだった芸大(洋画科)志望の浪人生・梶井と上京してから付き合っている(梶井の下の名前は…なんだっけ? あ、「八起」か)。で、タクシーの場面から言うと回想に当たるのだけれど、もう1人、梶井の画塾(絵画の研究所)つながりの友人・倉田(美大生)が絡んできて、あるきっかけもあって、敏子は梶井に、

  <「梶井さん。ちょっと思いついたんだけれど、あなた、気楽な気持ちでわたしと死ぬ気はない?」>(p.32)

という提案をして。死にたい理由も私にはいまいち(というかぜんぜん)わからないけれど、実際に2人はロマンティックではない死に場所を求めて、睡眠薬を飲んで――もちろん(回想ができているわけだから)それは未遂に終わる。で、帰郷しないことにしたから、主人公はお金が必要になって(だったっけ?)父親から緊急のときのために渡されていた名刺のうちの1枚を持って、人を訪ねる。――というような内容。というか、説明があまりに下手で申し訳ない(涙)。

浪人生(3浪)の梶井くんも、何を考えているのかよくわからない感じ。でも、東京芸大にかぎらず、美大を志望する浪人生は、けっこうこんな感じになってしまいがち? 「こんな感じ」というのは、美術研究所(画塾、美大予備校)で自分と似たような友達がたくさんできて、研究所のほうでは美大生(や若手画家)なんかとも知り合って、もう大学合格なんかどうでもよくなってしまう、的な…。ま、浪人ドロップアウトは、美大志望の人にかぎらないか。梶井くん、敏子さんから予備校に通って学科も勉強したほうがいいのではないか、と言われても、学科は自分で勉強するからと言っていた、ようだ。高校時代、敏子さんと比べて勉強はけっこうできたみたいで、よくわからないけれど、ちょっとプライド高めで、自分の方法に固執するタイプ?(そんなことはないか)。ま、いずれにしても、不安定な浪人生活はやっぱりつらいものかもしれない。あと、最後に主人公が会いに行く丸山さん(「丸山化学工業」の社長)は1人息子に自殺をされている、らしい。

 <(略)浪人中に遊びはじめ、遂に家出をした。丸山さんは、人を遣って、もう二度と家に帰ってこないか、或いは工場で働くか、どちらか返事をしろと訊ねさせた。すると、息子は戻ってきた。謝り、工場で働きはじめたが、五、六日目に自殺をしたと、敏子は聞いている。>(p.48)

こういう(元)浪人生の顛末もあるかもしれない。だから(?)教訓としては、安易に死んだらあかん! ということでいいでしょうか(違うか)。
 

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