日本推理作家協会編『宮部みゆき 選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎002』(講談社文庫、2007)に収録されている1篇。この本では初出の発表媒体がわからないけれど、とにかく1981年のものらしい。ちょっと短めの短篇かな。日時を除けば、電話での会話の内容だけで構成されている小説。1人の女性が2人の男性のどちらか――見知らぬ予備校生(最初はいたずら?電話)または交際している相手――と電話で話をしている。短篇をばらばらとしか読んだことがないけれど、佐野洋ってなんていうか、騙りがうまい? ただ、作者の話術がうまいのはわかるけれど、登場人物(たいてい犯人)のそれがうまいのは、何かしらの理由が必要なような気が…。えーと、受験生――が勉強部屋としてひと部屋借りているなんて、贅沢な!(そうでもないか)。小説中の受験生、ありがちだけれど、勉強はあまりしていない感じ。おなじみ(?)言い訳としての「息抜き」…。あと、双眼鏡というと、個人的にはこの前たまたま読んだ小林久三『錆びた炎』を思い出すかな(小説中の浪人生、向かいの女性宅をのぞき見していることってけっこう多いけれど)。選者(1960年生まれらしい)は触れていないけれど、1981年の前年(=1980年)には、例の金属バット殺人事件が起きていて(起きていなくても同じだったかもしれないけれど)、当時「予備校生」という存在(あるいは、少なくともその言葉)は身近なものだったかもしれない。あ、本文では「浪人(生)」という言葉は使われていない。でも、たぶん浪人生でいいと思う。

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そういえば、この前、本屋に行ったとき、文庫新刊コーナーで『松本清張傑作選 戦い続けた男の素顔 宮部みゆきオリジナルセレクション』(新潮社、2009.7/新潮文庫、2013.4)という本を見かけて、思わず買ってしまった。基本的にお金がないのに、書籍に関してはあいかわらずけっこう無駄遣い(涙)。読んでいない松本清張の短篇集なら家に何冊かあるのに。ま、買うのは文庫本ばかりだけれど。それはともかく、この選集には「父系の指」(初出は『新潮』1955年9月号)も収録されている。個人的にあいかわらず、この作品に出ている『受験と学生』が実名なのかどうか、つまり、研究社から出ていた同名の雑誌と同じものなのか否か、がわからない。創刊年を考えるとちょっと違うのかな…? えーと、だから「西田民治」のモデルになっている人(松本清張の血縁上の父方の叔父さん、『半生の記』に名前が書かれている)を調べればわかるのかもしれないけれど、私にはそんな調査能力はない(涙)。

あ、思い出した。最近(そんな最近でもないか)では岩波文庫の日本近代文学なんとか選――うろ覚えすぎる(涙)――みたいなシリーズの本に収録されている、永井龍男「胡桃割り」という短篇小説があって。回想的に書かれているのだけれど、小学校のとき(中学校受験生のとき)に母親が亡くなって……みたいな話(個人的には芥川龍之介「お律と子等と」をちょっと思い出す)。初出は『学生』1948年10月らしい(いま手もとにあるのは『日本文学全集68 永井龍男・田宮虎彦集』集英社、1968。その後ろの年譜によれば)。この『学生』というのは、研究社の『受験と学生』の後身雑誌でいいのかな?(しかも「主筆」が大佛次郎で、受験雑誌からいったん読物雑誌化していた時代の?)。なんていうか、昔のことは、あれこれわからないことが多くて、もやっもやする(涙)。([追記(2016.11.18)]「胡桃割り」の初出は1948年の10月ではなくて7月であるようだ。あと、この『学生』はやっぱり研究社の雑でいいようだ。国会図書館デジタルコレクションで目次が見られる。)

[追記] 「暗い窓」の初出は『小説現代』1980年1月号らしい。あー、なんだよ、先に知りたかった(涙)。
 

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