読書メモ。

2014年1月2日 読書
去年(2013年)読んだ、有本倶子編『山田風太郎新発見作品集』(出版芸術社、2013.8)所収の「早春の追憶」を再読した。未完の小説。

廃墟と化した東京で回想している、という外枠があって。中学校卒業の前後から軽く肺を病んで、進学するまで母方の祖父の家(諸寄という小漁村)で療養していた霧島千尋。そこに小学校の同級生の西垣が訪ねてくる。級長をしていた彼は、でも、金物屋の息子で(進学した千尋とは違い)卒業後は、兄の小間物屋の手伝いに。その一足早く世に出て働いていて、要するに「大人」になっている西垣から、千尋は、温泉(湯村温泉)に遊びに行きませんかと提案され、その日、行くことになる。途中で、千尋は西垣から「あなたは、あの冬の海のようですな」と言われるー。

2月末の話で、春というより冬。読んでいて、しんみりしてしまうというか、主人公と一緒に考えさせられるような小説かな(エンタメ系というより純文学系?)。

行ったことがないし、私にはぜんぜんわからないのだけれど、この、鳥取県に近い兵庫県の諸寄(もろよせ)の海は、尾崎翠の「初恋」(初出は『随筆』1927年7月号)や「花束」(初出は『水脈』1924年3月号)に出てくる海とかなり近い? あ、季節は違うけれど。「初恋」には「漁村A」と書かれていて、これは網代(あみしろ)という場所らしい。「花束」は“追憶″がキーワードになっているし、設定というか、主人公が置かれている状況も少し似ているかな(ちゃんと読み直してみないとわからないけれど)。

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