読書メモ。

2014年3月7日 読書
斎藤栄「水色の密室」を読む。同名の廣済堂文庫版で。親本(単行本?ノベルス?)は同社、1973年。10篇中の1篇目。そう、長篇かと思っていたら(手に入れてみたら)短篇だった。「解説」(影山荘一)によれば、初出は『小説推理』1970年3月号らしい。けっこうシンプルで、意外と面白かったというか、雰囲気がちょっといいな、とは思った。えーと、でも、“浪人生小説”としての評価は、星2つくらいかな(満天は5つ星です)。

T大志望、3浪目の「おれ」は、五反田の叔父夫婦のもとに下宿中。3年目ともなると、叔父さんからはうとましがられ(ふつうだったら追い出されている?)、でも、将棋を指す仲の隣の家のおじさん(年齢的にはおじいさん、安田宗助)は優しく接してくれる。で、そのおじさんには歳がいってからできた娘がいて(奥さんは亡くなっている)、「おれ」は、その少し歳上の、笑顔を絶やさないハル子のことが好きで、でも、彼女は小さいながらも貿易会社の社長をしている人と結婚してしまう。で、推理小説です、自宅のサンルームで殺されているのが見つかるのが、その社長の里見三郎。もちろん(?)密室状態。多額の保険金が掛けられていて、妻のハル子が疑われたりで、「おれ」はおじさんから犯人を探す探偵のまねごとをするように頼まれるーー。あとでもう1人亡くなる人も出てくる。

出だしを読んで、個人的にはちょっと面白そうだな、と思ったのだけれど、ーー引用してみれば、冒頭は、

<三浪という立場が、どんなに暗く絶望的か、それはなってみなければ絶対にわからないだろう。>(p.6、「なってみなければ」に傍点)

となっている。その通りという気もするけれど(私は2浪までだったけれど)、うーん、でも、この小説じたいからは、あまり「暗さ」や「絶望」は感じなかったかな。語り手が若者の1人称小説だからか、ちょっと伸びやかさも感じる(私だけ?)。あ、でも(?)、最後の場面、主人公の言動には、ちょっと身勝手さを感じたかな(あ、それも若者らしいのか)。

真犯人というか、実行者に関しては、ああそのパターンが来たか! と思ってちょっと脱力してしまった(汗)。そういえば(ミステリー的な意味ではないけれど)小説的には、将棋がちょっと伏線になっていたかな。「おれ」がおじさんに勝つのは、3回に1回くらいと言っている。

表紙カバーの後ろの文句も一応、書き写しておくか。ありがち、かなりずれている気がするけれど。

<完全な密室で起きた絞殺事件に関わったおれは、事件解明に乗り出す。被害者には愛人が存在し、しかも保険金を掛けられている事実を知ったおれだが、決定的な物証を得られぬまま、第二の変死事件が発生してしまう。ふたつの事件が一本の線で結ばれると見たおれは、その接点を追う。やがて事件の全貌が明かになるにつれ、そこに大胆な殺人トリックを垣間見る。綿密な計画の中に致命的な盲点を見たおれは......。>(最後の1つ以外の「おれ」に傍点)
 

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