“浪人”は関係ないけれど、堀川アサコ『幻想映画館』(講談社文庫、2013.5/単行本は『幻想電氣館』講談社、2012.4)という小説本を読了。『幻想郵便局』に続くシリーズ2作目。※以下、1作目も含めてネタバレにはご注意ください。

たまたま父親が不倫しているのを見かけ、2人のあとをつけて行き、偶然、「ゲルマ電氣館」という不思議な映画館(つぶれそう)に迷い込む。で、なんだかんだで、あとでそこで働くことに。

個人的には前作よりこちらの面白かったかな。いろいろ盛り込まれていて(動きもあるし)、だから(?)たんなるミステリーなら許されないくらい(?)それらが偶然によって繋がっていたりして。主人公の行動範囲が限られている(狭い)にしても、ちょっと偶然が多いかな。

語り手(楠本スミレ、高校1年生)はシリトリが好きなキャラクター。うーん、シリトリって何だろうね? 列挙される言葉(単語)の意味はバラバラ、たんなる言葉遊びだから不毛といえば不毛(物理的な生産性はない)。でも、2人でするなら相手のネガティブ単語をポジティブ単語に変えて、返せるし(うるさい→いとしい)、言葉だからこそ自分の想いを伝えられたりも。 

あと、最後のほう、真理子さんがリクルートスーツを着ていて、「おお!」と思った。最初から焦げていない真理子さんだし、「パンチパーマの人」(というか青木さん)への言及は多くて、ーー前作の主人公アズサちゃん(安倍アズサ)の不在感が私のなかで強くなっていたからかもしれない。

関係ないけれど、幽霊船ならぬ幽霊建物が立ち並ぶ(『Always三丁目の夕日』ではなく)駅裏三丁目(ウラウラのさらにウラ)みたいな場所は、現実にもあればいいなと思った。全国各地にはシャッター商店街がたくさんあるから、つぶれてしまった、でも個人個人想い入れのあるお店が、そういうところでいまでも経営しーーま、もちろん小説というか「幻想」だけれどね(汗)。そう、前作では主人公が真理子さん(幽霊はお金が持てない)にビールをおごっていたと思うけれど、本作では、ビミョーな味らしい美味美味焼き(笑)をおごっている。

文体というかは、「のです・ます」口調。ユーモアを醸し出している浮遊感のある語り?(読み始めて最初、「軽井沢からのお手紙」文体?とか思ってしまった)。主人公はちょっとお嬢さんで、天然(?)というのもあるけれど、現実(「幽霊が見えます」発言で学校ではいわゆるぼっち、父親は現在不倫中)を受け入れたくないというか、そういう自分自身からちょっと距離をとっているというか?(違うか)。そう、同級生の平井さんみたいな人(何か飛躍していて、決めつけをしてくる人)は、実際にもいそうで、大伯母さまのアドバイスが「あーなるほど」とか思える(汗)。

火星の歌、ウラウラ~。山田火星氏の名前はなんとなくデジャブかな。小林亜星ーーよりももっと似ているものがありそうな。。一般に(ほかの小説でもありそうだけれど)降霊中に亡くなるーーというのは、霊が逃げちゃうのかな?(腹上死ではなくて、何死? あ、場合によっては過労死に認定される?)。

あと、映画館も冷凍庫も電気が必要? 単行本時の「幻想電氣館」というタイトルのほうが少し(あくまで少し)よかったかもしれないね(と個人的には思える)。

最後の場面が好きだな。スミレさんが、インスタントコーヒーの空き瓶(真理子さんは元『club・alibi』のホステスなのに?お客さんにコーヒーを淹れる係)に「忘れ物」の花束を生ける。
 

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