読書メモ。

2017年10月10日 読書
内海隆一郎『遅咲きの梅』
図書館本。筑摩書房、1998.12。昭和30年代半ばくらいの話。地味だけど、いい小説だった。青春小説といえば青春小説。あからさまではないけど、周りの人たち(職場やアパートの人たち、友人たちなど)にも人情がある感じでよかった。連作短篇(掌篇?)集で、初出については〈本書収録の21篇は、1997年1月より1998年9月まで、日本ダイナースクラブ機関誌『シグネチャー』に、「人びとの小径」の標題で連載された作品です。〉と書かれている(原文では漢数字)。1958年、主人公(「私」)が21歳のときから始まっている。岩手のI市から上京してきていて、最初の1篇では仕事を探して、働き始めている。高校の5つ上の先輩(吉川さん、とてもいい人)と一緒に住み始めるまでは、大塚のお姉さん(長姉)の洋裁工房に両親と一緒に。(シリーズものらしいのだけど、手前の巻を読んでいないので、私には主人公とその両親が東京に来るまでの経緯がわからない。読みたいな。)。次のような箇所がある。

〈大塚駅周辺には進学予備校が三校ほどあり、予備校生らしい若者たちが一様に陰気な表情で駅前を行き来している。働きもせずに勉強できる恵まれた彼らが、私には別の人種のように思えていた。〉(p.41、「街の風景」)

数年後だけど(1966年だっけかな)北重人『鳥かごの詩』の主人公は新聞配達をしながら大塚の予備校に通っている(毎日ではなくて週に3日くらいだっけ?)。そういう予備校生もいるよね。「私」も働きながら勉強して、大学に入っている(私立のR大)。でも、学費を稼ぐためにアルバイトの日々。あと、友田という小学校から高校までの同級生と偶然再開しているんだけど、友田は、東大入試に4度落ちているという。この友田くんは(ネタバレしてしまうけど)結局、5度目にも東大に受からず、そのあと女性との間に子供ができて、帰郷することに。(城山三郎『今日は再び来らず』をちょっと思い出した。)そのほかにも、三上という同級生もいて、早稲田を目指していたらしいけど、諦めている(パントマイムを始めている)。

三木笙子『竜の雨降る探偵社』
PHP研究所、2013.3/PHP文芸文庫、2016.3。文庫で読んだ。私にはよくわからないけど、戦後10年くらい話でいい? 意外と(?)面白かったです。新宿の浄水場(淀橋浄水場)の話があったりして、へぇと思った。起こっている事件(というか)も時代が感じられてよかった(昭和30年頃がどんな時代なのかほとんど知らないけど(汗))。探偵社(「水上探偵社」)は2階にあるのだけど、1階には喫茶店があって、

〈店主の前歴のせいか、もともとは映画関係者や美術畑の客が多かったという。/しかし最近では予備校生が増えたそうだ。/数年前に大学受験者数は六十万人を超えていたが、(略)〉(p.10)

と書かれている。でも残念ながら(?)予備校生が登場してくることはなくて、代わりにというか早大生なら出てくる(全4話中の「第三話」に)。(そういえば、読んでいるとときどき数値が出てくるんだけど、参考文献が1冊も挙げられていない。)
 

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