清水義範 「昭和御前試合」
2008年4月30日 読書この本も画像が出てこないな。同名書(CBSソニー出版、1981/光文社文庫、1989)所収、7篇中の1篇目。時代小説をその当時の人が読んだらどう思うか、とか思ったことがある人は多いと思うし(そんなに多くない?)、書名は覚えていないけれど、ここが変だよ時代劇、みたいな本も何冊か出版されていたと思う(例えば、戦国時代の侍があんな西洋馬に乗っているわけがない、とか)。だから(?)この短篇もそんな感じなのかな、と思う、資料の乏しいなかで未来の人が書いた現代を舞台にした小説を、私たち現代人が読むとどれくらい不思議な読みごこちになるか、が体験できる感じ。
で、これほどカッコよく描かれている小説中浪人生は、ちょっとほかにはいないのではないかと思う。昭和56年(1981年)、浪人である秋月新之助は、彼女のみつ(OL)の父親で刑事である明智耕介から頼まれて、武道館で開かれるアメリカ大統領来日記念の御前試合に出場することになる。――面白いのでおすすめはおすすめなのだけれど、でも、この小説自体が4半世紀以上前に書かれたもので、いまの浪人生は、たぶん三船敏郎も(現役の)北の湖もロッキード事件も知らないのではないか、と思う、そのへんはちょっとどうなのかな、うーん…。
小説を読んでいて「浪人」の2つの意味がかけられているのは、わりと見かけるかな(それほどでもないか)。本がどこかに行ってしまって見つからないけれど、これも時代小説のパロディっぽい、結城恭介「美琴姫様騒動始末」(同名書所収)の冒頭ってどうなっていたっけ?(思い出せないな(涙))。あと、室井光広の小説だっけな、それにも浪人生の定番アルバイトといえば、傘張り、みたいな冗談が書かれていたような。
で、これほどカッコよく描かれている小説中浪人生は、ちょっとほかにはいないのではないかと思う。昭和56年(1981年)、浪人である秋月新之助は、彼女のみつ(OL)の父親で刑事である明智耕介から頼まれて、武道館で開かれるアメリカ大統領来日記念の御前試合に出場することになる。――面白いのでおすすめはおすすめなのだけれど、でも、この小説自体が4半世紀以上前に書かれたもので、いまの浪人生は、たぶん三船敏郎も(現役の)北の湖もロッキード事件も知らないのではないか、と思う、そのへんはちょっとどうなのかな、うーん…。
小説を読んでいて「浪人」の2つの意味がかけられているのは、わりと見かけるかな(それほどでもないか)。本がどこかに行ってしまって見つからないけれど、これも時代小説のパロディっぽい、結城恭介「美琴姫様騒動始末」(同名書所収)の冒頭ってどうなっていたっけ?(思い出せないな(涙))。あと、室井光広の小説だっけな、それにも浪人生の定番アルバイトといえば、傘張り、みたいな冗談が書かれていたような。
遠藤周作 「ニセ学生」
2008年4月30日 読書手もとにあるのは、講談社文庫の『怪奇小説集』(1973)。15篇中の15篇目。同書の「あとがき」(1970年)を参考にすると、この「ニセ学生」は、たぶん単行本『蜘蛛―周作恐怖譚』(新潮社、1959)には収録されていなくて、それが『遠藤周作怪奇小説集』(講談社、1970)として出版されなおしたときに、付け加えられたという4篇のうちの1篇(たぶん)。でも、これが初出ではないかもしれない(ほかを調べてみないとわからない)。あと、これも確認していないけれど、文庫(講談社文庫)はあとで分冊にもなっている模様。『新撰版 怪奇小説集 「恐」の巻』/『同 「怖」の巻』の、たぶん後者に収録されていると思う(画像が出せない(涙)。楽天のほうで検索するとあるのだけれど)。※以下、いつものようにネタバレにはご注意ください。
浪人3年目でT大の受験に失敗した「俺」は、でも、「病人の附添婦」をしている母親の、やつれた顔が浮かんだりなどして、新潟の家に「ゴウカクス」と電報を送ってしまう。――現在でもいそうだけれど、T大生と偽って家庭教師をしてしまうと、詐欺罪に当たるのか、知らなかったです(というか、考えたことがなかった)。“ニセ学生”の常として(?)この「俺」も、翌年合格して嘘を真に、みたいに考えているのだけれど、実家が裕福でないと仕送りも頼めないし(嘘を付いているから頼みにくいし)、アルバイトしないといけないしね。家庭教師はやっぱり短時間で高収入? 「土方やキャンディー売り」(p.308)とかだと疲れて勉強に支障をきたすのかな?(飴を売るだけならそれほどでもないか…、わからないけれど)。話としては、その家庭教師がほったんで知り合った1人のT大生(角田)に嘘がばれてしまい、全共闘のスト(時代が時代だよね)に巻き込まれて……という感じ。内容をあまり書きすぎてもあれだけれど、ニセ者がさらにニセ者に、みたいなことに。……それはともかくとして、最後の1文を引用してみると、
<俺はその時、心のなかでもう来年はこんな大学を受けるのをよそう、故郷に戻り、叔父の家で農作を手伝おうとぼんやり考えていた。>(p.325)
とのことで、浪人生がT大を諦めるまでが描かれている短篇、と言えるかもしれない。あ、叔父さんというのは父親のいない主人公の後見人、とのこと。この小説のように3浪してダメだったあと、何か諦めるきっかけのようなものがでてくれば、それはそれでよかったということになるのかな? 一般にはあまり起こらないできごとが起こっているし、ふつう志望大学を諦めるとしたら、諦めると自分で決めなくてはいけないよね。3浪もしていればそれだけ想いも強くなっているだろうし(そんなこともない?)、決断するのはけっこう大変かもしれない。この小説のように応援してくれている家族とかがいたりすれば、なおさらのこと。いまも昔も、やっぱり3浪くらいが上限なのかな? T大(東大)でも京大でも、そのほかの医学部でも。のちの就職のさいの年齢的なこともあるし、なんていうか、頭がおかしくならないにしても、精神的にかなり擦り減ってしまいそうな気が…。ほかの小説を読んでいてもやっぱり3浪くらいが上限であるような…。4浪や5浪の大学浪人生が出てくる小説もあるにはあるけれど。浪人生の代名詞的存在(このブログ的には神である?)勉三さんなんて6浪もしているらしいし。諦めるきっかけといえば、この小説のように(でもちょっとずれてしまうか)、実際にT大生を体験してみて(だからどうやって?)あぁ別にたいしたことないな、と思えれば諦めもつくのかもしれないよね。小さい頃にご近所にとても尊敬できないタイプの東大生が存在していた、とかでもいいか。――なんだか今回も小説とはあまり関係のない、しかもぬるい話ばかり書いてしまったよ(涙)。
[追記]初出は『小説セブン』1969年10月号のようだ(あってる?)。あと『ブキミな人びと』(福武文庫、ランダムハウス講談社文庫)というアンソロジーにも収録されているらしい。
浪人3年目でT大の受験に失敗した「俺」は、でも、「病人の附添婦」をしている母親の、やつれた顔が浮かんだりなどして、新潟の家に「ゴウカクス」と電報を送ってしまう。――現在でもいそうだけれど、T大生と偽って家庭教師をしてしまうと、詐欺罪に当たるのか、知らなかったです(というか、考えたことがなかった)。“ニセ学生”の常として(?)この「俺」も、翌年合格して嘘を真に、みたいに考えているのだけれど、実家が裕福でないと仕送りも頼めないし(嘘を付いているから頼みにくいし)、アルバイトしないといけないしね。家庭教師はやっぱり短時間で高収入? 「土方やキャンディー売り」(p.308)とかだと疲れて勉強に支障をきたすのかな?(飴を売るだけならそれほどでもないか…、わからないけれど)。話としては、その家庭教師がほったんで知り合った1人のT大生(角田)に嘘がばれてしまい、全共闘のスト(時代が時代だよね)に巻き込まれて……という感じ。内容をあまり書きすぎてもあれだけれど、ニセ者がさらにニセ者に、みたいなことに。……それはともかくとして、最後の1文を引用してみると、
<俺はその時、心のなかでもう来年はこんな大学を受けるのをよそう、故郷に戻り、叔父の家で農作を手伝おうとぼんやり考えていた。>(p.325)
とのことで、浪人生がT大を諦めるまでが描かれている短篇、と言えるかもしれない。あ、叔父さんというのは父親のいない主人公の後見人、とのこと。この小説のように3浪してダメだったあと、何か諦めるきっかけのようなものがでてくれば、それはそれでよかったということになるのかな? 一般にはあまり起こらないできごとが起こっているし、ふつう志望大学を諦めるとしたら、諦めると自分で決めなくてはいけないよね。3浪もしていればそれだけ想いも強くなっているだろうし(そんなこともない?)、決断するのはけっこう大変かもしれない。この小説のように応援してくれている家族とかがいたりすれば、なおさらのこと。いまも昔も、やっぱり3浪くらいが上限なのかな? T大(東大)でも京大でも、そのほかの医学部でも。のちの就職のさいの年齢的なこともあるし、なんていうか、頭がおかしくならないにしても、精神的にかなり擦り減ってしまいそうな気が…。ほかの小説を読んでいてもやっぱり3浪くらいが上限であるような…。4浪や5浪の大学浪人生が出てくる小説もあるにはあるけれど。浪人生の代名詞的存在(このブログ的には神である?)勉三さんなんて6浪もしているらしいし。諦めるきっかけといえば、この小説のように(でもちょっとずれてしまうか)、実際にT大生を体験してみて(だからどうやって?)あぁ別にたいしたことないな、と思えれば諦めもつくのかもしれないよね。小さい頃にご近所にとても尊敬できないタイプの東大生が存在していた、とかでもいいか。――なんだか今回も小説とはあまり関係のない、しかもぬるい話ばかり書いてしまったよ(涙)。
[追記]初出は『小説セブン』1969年10月号のようだ(あってる?)。あと『ブキミな人びと』(福武文庫、ランダムハウス講談社文庫)というアンソロジーにも収録されているらしい。
岡松和夫 「百合鴎」
2008年4月30日 読書漢字が出せない、「ゆりかもめ」の「かもめ」の左側の真ん中は「メ」ではなくて「品」。以前触れた「新宿仲通り」(『人間の火』文藝春秋、1981)のなかに、「私」(=作者?)は以前「百合鴎」という小説を書いた、みたいなことが書かれているので、収録されている本を探してはいたのだけれど、よくわからず。インターネットで検索してみたら初出というか掲載誌がわかったので(『新潮』1974年2月号)、いま手元にあるのは図書館でとってきたそれのコピーです。
それでこれも“和風喫茶店もの”の1つというか、従兄夫婦が新宿に開いたお汁粉などを出す店で住み込みで働く「彼」の、肉欲というか性愛というかに関しての葛藤、苦悩みたいなことが描かれている小説。主に2人の体を売っている女性(シノブとアケミ)が出てきて「彼」を悩ませるというか、考えさせたりするのだけれど、それはそれとして。読み終わって個人的にちょっと印象に残っているのは、新宿駅の近くで若い女性からガリ版刷りの詩集を買う、という箇所。まぁ、そんなの確率的にいって、読んでがっかりするのは決まっているわけだけれど、そのあと「彼」は――引用してみようか、
<しかし、考えてみれば、彼のような青年を満足させる詩はむずかしいに違いなかった。彼の望む詩は接吻や更に性愛と同じくらい、なめらかで快楽的でなければならず、しかもそれらの肉欲を清めるように作用するものでなければならなかった。>(p.75、下段)
矛盾した欲求というか、だいぶ無理を言っているよね?(汗)。肉体と精神を逆にすれば(?)女性に対しても無理なものを求めている、ということがわかる箇所。
浪人生小説としては、あまり読みどころはないかと思うのだけれど、冒頭、従兄のところに引っ越す途中、警察に呼び止められて、参考書が詰まった風呂敷包みを指さされて、それはなんだ? みたいなことを訊かれている。浪人生が嫌うことの1つは、社会的な身分を問われて浪人生であることを自覚させられる……ことなのかな、やっぱり。
(詩集を路上で女の子から買う場面は、小池真理子「彼方へ」(『恋する男たち』)にもあったような気がするけれど、本がどこかへ行ってしまって確認できない(涙)。買うのではなくて、主人公の予備校の友達が詩を売っている女の子をナンパするんだっけな? ……やっぱり思い出せない、違っていたらすみません。)
それでこれも“和風喫茶店もの”の1つというか、従兄夫婦が新宿に開いたお汁粉などを出す店で住み込みで働く「彼」の、肉欲というか性愛というかに関しての葛藤、苦悩みたいなことが描かれている小説。主に2人の体を売っている女性(シノブとアケミ)が出てきて「彼」を悩ませるというか、考えさせたりするのだけれど、それはそれとして。読み終わって個人的にちょっと印象に残っているのは、新宿駅の近くで若い女性からガリ版刷りの詩集を買う、という箇所。まぁ、そんなの確率的にいって、読んでがっかりするのは決まっているわけだけれど、そのあと「彼」は――引用してみようか、
<しかし、考えてみれば、彼のような青年を満足させる詩はむずかしいに違いなかった。彼の望む詩は接吻や更に性愛と同じくらい、なめらかで快楽的でなければならず、しかもそれらの肉欲を清めるように作用するものでなければならなかった。>(p.75、下段)
矛盾した欲求というか、だいぶ無理を言っているよね?(汗)。肉体と精神を逆にすれば(?)女性に対しても無理なものを求めている、ということがわかる箇所。
浪人生小説としては、あまり読みどころはないかと思うのだけれど、冒頭、従兄のところに引っ越す途中、警察に呼び止められて、参考書が詰まった風呂敷包みを指さされて、それはなんだ? みたいなことを訊かれている。浪人生が嫌うことの1つは、社会的な身分を問われて浪人生であることを自覚させられる……ことなのかな、やっぱり。
(詩集を路上で女の子から買う場面は、小池真理子「彼方へ」(『恋する男たち』)にもあったような気がするけれど、本がどこかへ行ってしまって確認できない(涙)。買うのではなくて、主人公の予備校の友達が詩を売っている女の子をナンパするんだっけな? ……やっぱり思い出せない、違っていたらすみません。)
睦月影郎 「淫ら隷嬢」
2008年4月7日 読書
アンソロジー『妄想 Imagine』(双葉文庫、2007)所収、5篇中の5篇目。官○小説はやっぱり無理(涙)。短篇にもかかわらず最後まで読み通せず。内容はまずは“アタリ屋”みたいな感じ? 両親だけ引っ越してしまい、アパートを借りて1人暮らしをしている浪人生、鈴木浩樹(18歳)は、短大に通っている高校のときの同級生、山沢美由紀のことが好きで(というかストーカーに近い感じ?)、その美由紀が運転する自動車の前に飛び出して…、みたいな感じ。あとは入院先で右手が使えないから、とかなんとか言いながらうんぬん、お母さん(淳子)ともうんぬん、みたいな…。白衣は着ていないけれど、病院だから“看護婦もの”みたいな感じ?(○能小説にそんな下位ジャンルはないのかな)。文体は、この作者もけっこう軽い文章を書くなぁ、というか。でも、やっぱりエ○用語はたくさん出てくるね(ふつうの小説と比べたらあかんのか)。なんていうか、無駄な設定も多いかもしれない。例えば、浪人がらみのことでは、主人公が夏期講習を最後に予備校には行っていないとか、居酒屋でアルバイトをしているとか。最後まで読んでいないからわからないけれど、話の展開とまったく関係がないような。
櫻木充 「双子の兄嫁」
2008年4月7日 読書
アンソロジー『七つの甘い吐息』(「小説新潮」編集部編、新潮文庫、2007)所収。1篇目。官○小説であるのはいいとしても、文章がなんていうか、ちょっとおっさんくさいかな。例えば、冒頭は、
<「ただいま」/ある夕暮れ時のこと。藤本司郎は玄関の扉を開けると、左手に見えるリビングを窺いながら帰宅の挨拶を告げた。/しばし耳を傾けるも返事はない。(略)>(p.9
となっているのだけれど、語彙でいえば「夕暮れ時」とか、「しばし」とか。3人称で書かれてはいるけれど、18、19歳の男の子の視点というよりは、読者(層)に合わせた感じになっているのかもしれない。要するに浪人生が読んでも、ちょっとアレ(?)な感じかもしれない。
なんていうか、短篇であると2人くらいがふつう? 相手が1人くらいだとあれこれやっても(?)ちょっと買って損した感じがするのかな。予備校に通うために兄夫婦のもとに下宿している司郎くんが、兄嫁の麻美(のことが好きらしいのだけれど)の洗濯物を物色して、それ(=レオタード、というあたりもおっさんくさい?)をおかずに義姉の名前を叫んだりしている、ところを麻美の双子の妹である夏樹(姉ともちろん同じ歳の27歳、性格は正反対)に見られ、まずはその夏樹と。童○喪失です、はい。で、その場面を帰宅して部屋の外から見てしまった麻美は、なんていうか(顔が同じなので)自分もやりたくなって、後日、妹(夏樹)のふりをして司郎をホテルに呼び出して…、みたいな感じ。←この話に創造性があるのかないのか、よくわからん(涙)。どうでもいいけれど、この作者、登場人物の名前の付け方がちょっとでたらめ? 双子なのに「麻美」と「夏樹」だし、兄弟なのに(お兄さんは31歳でけっこう離れているのだけれど)「一樹」と「司郎」だし。そういう姉妹、兄弟がいていけないわけではないけれど。
<「ただいま」/ある夕暮れ時のこと。藤本司郎は玄関の扉を開けると、左手に見えるリビングを窺いながら帰宅の挨拶を告げた。/しばし耳を傾けるも返事はない。(略)>(p.9
となっているのだけれど、語彙でいえば「夕暮れ時」とか、「しばし」とか。3人称で書かれてはいるけれど、18、19歳の男の子の視点というよりは、読者(層)に合わせた感じになっているのかもしれない。要するに浪人生が読んでも、ちょっとアレ(?)な感じかもしれない。
なんていうか、短篇であると2人くらいがふつう? 相手が1人くらいだとあれこれやっても(?)ちょっと買って損した感じがするのかな。予備校に通うために兄夫婦のもとに下宿している司郎くんが、兄嫁の麻美(のことが好きらしいのだけれど)の洗濯物を物色して、それ(=レオタード、というあたりもおっさんくさい?)をおかずに義姉の名前を叫んだりしている、ところを麻美の双子の妹である夏樹(姉ともちろん同じ歳の27歳、性格は正反対)に見られ、まずはその夏樹と。童○喪失です、はい。で、その場面を帰宅して部屋の外から見てしまった麻美は、なんていうか(顔が同じなので)自分もやりたくなって、後日、妹(夏樹)のふりをして司郎をホテルに呼び出して…、みたいな感じ。←この話に創造性があるのかないのか、よくわからん(涙)。どうでもいいけれど、この作者、登場人物の名前の付け方がちょっとでたらめ? 双子なのに「麻美」と「夏樹」だし、兄弟なのに(お兄さんは31歳でけっこう離れているのだけれど)「一樹」と「司郎」だし。そういう姉妹、兄弟がいていけないわけではないけれど。
原作(脚本)・中園健司。TVドラマをノベライズした短篇集『世にも奇妙な物語8』(OHTA NOVELS、1991)に収録されている1篇。7篇中の4篇目(7篇目だけは作者のオリジナル小説)。いまでもときどき放送されているけれど、『世にも奇妙な物語』(オムニバス形式のドラマ、フジテレビ系)って、1本あたりの時間はどれくらいだったっけ? 数十分? 短いものでは十数分くらいかな。※以下、ネタバレご注意です、すみません。
文章・文体は“1人称饒舌体”といった感じ。読みやすくてよかったけれど、でも、ちょっと短すぎるかな。なのに、途中、なかだるみしているような…。最後のオチもちょっと弱い気が。でも、全体的には、意外と面白かったです。内容は、予備校生で1浪の「オレ」(高田修平)は家族から…なんていうか“バカ”扱いされている。お兄さんは東大生、妹は受験の心配のいらない私立高校3年生、両親もいいところの大学卒……。家のなかで肩身が狭かったり、居場所がなかったりするのは、受験生としてはつらいやね。成績的にバカ(というか)であることは本人も認めていて、模試での結果とかもよろしくない。そんなある日(秋)、路地のすき間に怪しげな(?)占い屋が出ていて、そこのおじいさん占い師から、140億個の脳細胞がフル回転するというヘアバンドをもらう、みたいな話。“天才”になったことで、家族や、予備校の講師やほかの生徒たちから見直されるというか、ちやほやされるというか。本人も、そこのけそこのけ天才が通る(?)みたいな気分に。そして、でも、最後にしっぺ返し的なオチが待っている、といった感じ。
自分も予備校に通っているとき、何かの授業が1つ終わって、近くの席の女の子が「あー、どこかに頭のよくなる薬、売ってないかな」とつぶやくのを聞いたことがあって(実話です)、なんていうか、ある種の願望充足的なお話になっている、のかも。こういうのは受験にかぎらないか、たぶんときどき誰しもが思う、例えば「ドラえもんがいたら」みたいな? そう、その占い師はそのヘア・バンドを「仮にエジソン・バンドと名づけよう」(p.112、上段)と言っているのだけれど、「エジソン・バンド」という商品って、実在していなかったっけ? どこかで聞いたことがあるような…(思い出せない)。作中には数学の問題と解答が出てくる、というか、「オレ」は数学の問題を解いているのだけれど、やっぱり頭がいい、というと数学が得意、みたいなイメージなのかな。主人公の志望は文系なのに。志望大学・学部はもともと私立文系っぽくて、ヘアバンドを手に入れてからは、東大文科一類?
関係ないけれど、似た偏差値の私立大学をグルーピングした“日東駒専”、“大東亜帝国”なんかは、何か本などを読んでいたりするとたまに見かけるし、(この小説には出てこないけれど)“関関同立”とか“MARCH”というのも見かけるけれど、今回“JAL”というのは初めて目にしたな。「上智・青山学院・立教」であると、後ろの2つはMARCHとかぶっているのか。あと、これも細かいところだけれど、ちょっとおもしろいなと思ったのは、ジンクスというか縁起担ぎというか。「オレ」は、煙草の箱を開けるときに(1浪なら本当は吸ったらダメだろうけれど、それはそれとして)「入」となっているほうを破らずに、「人」となっているほうを破るらしい。大学に入学(合格)できなくなるから、みたいな。――私は初めて聞いたのだけれど、受験生で同じことを実行している人はけっこういるのかな?
(あ、ジンクスで思い出した。以前読んでいた小説……なんだっけ? ――山口雅也『続・垂里冴子のお見合いと推理』か。そのなかで表札を4軒ぶんとると、“試験(しけん)に通る”みたいなおまじない(?)がある、みたいなことが書かれていたと思うけれど(売ってはいないけれど、本がどこかに行ってしまったです(涙))、この前、最相葉月著『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮社、2007)という、いろいろな賞をとったらしい評伝本を図書館から借りて読んでいたら、星新一は実際に盗まれたことがあるらしい、家の表札を。バリエーションというか、4軒ではなく、尊敬する人の家の表札を手に入れると合格する、みたいなことになっていて、それだと全然だじゃれになっていないよね、それでもいいの?)
これも細かいところだけれど、最初のあたりで、「オレ」は、もちろん冗談で両親に対して「金属バットをふりまわすぞ」(p.104、下段)と言っているのだけれど、例の事件っていつあったんだっけ? ――1980年か。私は生まれてはいるけれど、よく知らなくてあたりまえな歳かな。ちなみに、作者は1963年生まれらしい。
今回も話がまとまらないな。まぁいいか(汗)。――以下、“ヘアバンド”についてもう少し。もちろん、“日東駒専”志望くらいの人が、すぐに東大を受験できるほどの学力が得られるわけはないと思うけれど、その手のちょっとあやしげな商品は、かなり昔からあるんだよね。竹内洋著『立志・苦学・出世』(講談現代新書、1991)という本には――ちょっと引用してみると、
<(略)。受験雑誌には、いかにして記憶力を鍛錬するかの記事がしばしば掲載されたし、記憶力をよくする薬や器具の広告も多かった。「記憶力増進丸」とか「胃腸蠕動器」とかがこれである。後者はヘアバンドみたいなものであるが、神経と血行をよくし記憶力を増進すると書かれてある。>(p.122)
これが大正くらいの話。「胃腸蠕動(ぜんどう)器」ってすごい名前だな(汗)。科学的、医学的にはちゃんと理屈が通っているの? 外側から頭部を刺激して頭脳を活性化させる、とかではなくて、いったん胃や腸を蠕動させて全身の血行をよくして、脳も、みたいなことなのか(へぇ〜)。林真理子の『本を読む女』(新潮社、1990/新潮文庫、1993)という小説では、普通名詞というか一般名称として「頭脳ベルト」という言葉が使われている。――これもちゃんと引用しておいたほうがいいかな。主人公の小川万亀(まき)は上京して神田にある、受験生向けの通信添削をしている出版社(「蛍学社」)に勤めている。
<雑誌と一緒に、頭脳ベルトも売り出したらどうかという案も本気で討議されていた。なんでもこのベルトを頭に巻くと、とたんに記憶力がよくなるのだそうだ。>(文庫、pp.187-8)
戦争の影響で紙の統制が噂されている頃(昭和十何年か、10年代の後半)。作者の母親がモデルになっているらしいのだけれど、作者は絶対に何か資料を見て書いているはずで、その点(事実関係というかは)あまり面白くないと思うけれど、それはともかく。頭脳というか記憶力が、本当に“とたんに”よくなったりするのかな?(胃腸は関係なしか?)。いずれにしても、出版社がそんな商品を扱うようになったら出版社じゃなくなっちゃうよね(汗)。
あと、薬に関しては、自分が実際に浪人しているとき、知り合いと話していて、私が「チ○ビタとかリ○ビタンDを飲んでいる」みたいなことを言ったら、ドリンク剤よりも錠剤を飲んだほうがいいよ、そのほうが効き目が持続するから、みたいなアドバイス(?)をもらったことがあるのだけれど、そういうのもどうなのかな、医学的な(?)事実はともかく、その手の会話をすること自体がなんとなく、浪人生である自分とっては、苛立ちの原因の1つになっていたような…。
文章・文体は“1人称饒舌体”といった感じ。読みやすくてよかったけれど、でも、ちょっと短すぎるかな。なのに、途中、なかだるみしているような…。最後のオチもちょっと弱い気が。でも、全体的には、意外と面白かったです。内容は、予備校生で1浪の「オレ」(高田修平)は家族から…なんていうか“バカ”扱いされている。お兄さんは東大生、妹は受験の心配のいらない私立高校3年生、両親もいいところの大学卒……。家のなかで肩身が狭かったり、居場所がなかったりするのは、受験生としてはつらいやね。成績的にバカ(というか)であることは本人も認めていて、模試での結果とかもよろしくない。そんなある日(秋)、路地のすき間に怪しげな(?)占い屋が出ていて、そこのおじいさん占い師から、140億個の脳細胞がフル回転するというヘアバンドをもらう、みたいな話。“天才”になったことで、家族や、予備校の講師やほかの生徒たちから見直されるというか、ちやほやされるというか。本人も、そこのけそこのけ天才が通る(?)みたいな気分に。そして、でも、最後にしっぺ返し的なオチが待っている、といった感じ。
自分も予備校に通っているとき、何かの授業が1つ終わって、近くの席の女の子が「あー、どこかに頭のよくなる薬、売ってないかな」とつぶやくのを聞いたことがあって(実話です)、なんていうか、ある種の願望充足的なお話になっている、のかも。こういうのは受験にかぎらないか、たぶんときどき誰しもが思う、例えば「ドラえもんがいたら」みたいな? そう、その占い師はそのヘア・バンドを「仮にエジソン・バンドと名づけよう」(p.112、上段)と言っているのだけれど、「エジソン・バンド」という商品って、実在していなかったっけ? どこかで聞いたことがあるような…(思い出せない)。作中には数学の問題と解答が出てくる、というか、「オレ」は数学の問題を解いているのだけれど、やっぱり頭がいい、というと数学が得意、みたいなイメージなのかな。主人公の志望は文系なのに。志望大学・学部はもともと私立文系っぽくて、ヘアバンドを手に入れてからは、東大文科一類?
関係ないけれど、似た偏差値の私立大学をグルーピングした“日東駒専”、“大東亜帝国”なんかは、何か本などを読んでいたりするとたまに見かけるし、(この小説には出てこないけれど)“関関同立”とか“MARCH”というのも見かけるけれど、今回“JAL”というのは初めて目にしたな。「上智・青山学院・立教」であると、後ろの2つはMARCHとかぶっているのか。あと、これも細かいところだけれど、ちょっとおもしろいなと思ったのは、ジンクスというか縁起担ぎというか。「オレ」は、煙草の箱を開けるときに(1浪なら本当は吸ったらダメだろうけれど、それはそれとして)「入」となっているほうを破らずに、「人」となっているほうを破るらしい。大学に入学(合格)できなくなるから、みたいな。――私は初めて聞いたのだけれど、受験生で同じことを実行している人はけっこういるのかな?
(あ、ジンクスで思い出した。以前読んでいた小説……なんだっけ? ――山口雅也『続・垂里冴子のお見合いと推理』か。そのなかで表札を4軒ぶんとると、“試験(しけん)に通る”みたいなおまじない(?)がある、みたいなことが書かれていたと思うけれど(売ってはいないけれど、本がどこかに行ってしまったです(涙))、この前、最相葉月著『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮社、2007)という、いろいろな賞をとったらしい評伝本を図書館から借りて読んでいたら、星新一は実際に盗まれたことがあるらしい、家の表札を。バリエーションというか、4軒ではなく、尊敬する人の家の表札を手に入れると合格する、みたいなことになっていて、それだと全然だじゃれになっていないよね、それでもいいの?)
これも細かいところだけれど、最初のあたりで、「オレ」は、もちろん冗談で両親に対して「金属バットをふりまわすぞ」(p.104、下段)と言っているのだけれど、例の事件っていつあったんだっけ? ――1980年か。私は生まれてはいるけれど、よく知らなくてあたりまえな歳かな。ちなみに、作者は1963年生まれらしい。
今回も話がまとまらないな。まぁいいか(汗)。――以下、“ヘアバンド”についてもう少し。もちろん、“日東駒専”志望くらいの人が、すぐに東大を受験できるほどの学力が得られるわけはないと思うけれど、その手のちょっとあやしげな商品は、かなり昔からあるんだよね。竹内洋著『立志・苦学・出世』(講談現代新書、1991)という本には――ちょっと引用してみると、
<(略)。受験雑誌には、いかにして記憶力を鍛錬するかの記事がしばしば掲載されたし、記憶力をよくする薬や器具の広告も多かった。「記憶力増進丸」とか「胃腸蠕動器」とかがこれである。後者はヘアバンドみたいなものであるが、神経と血行をよくし記憶力を増進すると書かれてある。>(p.122)
これが大正くらいの話。「胃腸蠕動(ぜんどう)器」ってすごい名前だな(汗)。科学的、医学的にはちゃんと理屈が通っているの? 外側から頭部を刺激して頭脳を活性化させる、とかではなくて、いったん胃や腸を蠕動させて全身の血行をよくして、脳も、みたいなことなのか(へぇ〜)。林真理子の『本を読む女』(新潮社、1990/新潮文庫、1993)という小説では、普通名詞というか一般名称として「頭脳ベルト」という言葉が使われている。――これもちゃんと引用しておいたほうがいいかな。主人公の小川万亀(まき)は上京して神田にある、受験生向けの通信添削をしている出版社(「蛍学社」)に勤めている。
<雑誌と一緒に、頭脳ベルトも売り出したらどうかという案も本気で討議されていた。なんでもこのベルトを頭に巻くと、とたんに記憶力がよくなるのだそうだ。>(文庫、pp.187-8)
戦争の影響で紙の統制が噂されている頃(昭和十何年か、10年代の後半)。作者の母親がモデルになっているらしいのだけれど、作者は絶対に何か資料を見て書いているはずで、その点(事実関係というかは)あまり面白くないと思うけれど、それはともかく。頭脳というか記憶力が、本当に“とたんに”よくなったりするのかな?(胃腸は関係なしか?)。いずれにしても、出版社がそんな商品を扱うようになったら出版社じゃなくなっちゃうよね(汗)。
あと、薬に関しては、自分が実際に浪人しているとき、知り合いと話していて、私が「チ○ビタとかリ○ビタンDを飲んでいる」みたいなことを言ったら、ドリンク剤よりも錠剤を飲んだほうがいいよ、そのほうが効き目が持続するから、みたいなアドバイス(?)をもらったことがあるのだけれど、そういうのもどうなのかな、医学的な(?)事実はともかく、その手の会話をすること自体がなんとなく、浪人生である自分とっては、苛立ちの原因の1つになっていたような…。
藤堂絆 「雨の土曜日」
2008年4月4日 読書
『アシタ』(ピュアフル文庫、2008)所収、5篇中の4篇目。(※ちょっと愚痴や文句が多めだったので、いったん削除しました。もし再読できたら(たぶん当面は無理だと思いますが)また改めて感想を書きたいです。2015.12.13)
サンプラザ中野 「青春ピコピコポコポコ」
2008年4月4日 読書同名書の表題作(頭痛が痛いみたいな日本語だな…)。手元にあるのは文庫(ソニー・マガジンズ文庫、1993)なのだけれど、奥付の手前のページには、<本書は一九九二年十二月(「終わる恋じゃねぇだろ」は一九八七年)小社より刊行されました。>と書かれているので、文庫化のさいにエッセイ集(『終わる〜』)を合わせて合本にしたのかもしれない。タイトルはあれだよね、芦原すなお『青春デンデケデケデケ』のもじりというか。読んだことがないのでわからないけれど、内容的には無関係じゃないかと思う。「ピコピコ〜」は電子音らしい。で、読んだ感想は、といえば、けっこう面白かったです。文章的にはちょっと…だけれど、ユーモアがあってちょくちょく笑える感じ。作者自身が「あとがきにかえて」で<青春時代。それはタクロウと彼女とロックを抜きには語れない。>(p.330)と書いているけれど、そのままというか、この表題作で描かれているのは、浪人のときのこと(1979年)、大学入学後、参加したロックバンド(「パンクフロイド」)でコンテストに出場したり、あと、時間的に平行して1人の彼女のこと。1〜5の番号が振られて小分けされているのだけれど、その最初の1が浪人生。んで、“浪人生小説”としてはどうかな…、模擬テストで合格判定がAだったり、参考書や問題集の間違いを探して出版社に知らせるのが趣味だったり、「ぼく」(仲野。下の名前は…裕志か)がW大に合格できるのは、当然といった感じ? 気が変になるくらい勉強したらしいけれど、それほど勉強ができるというのも才能というか、性格というか。勉強の動機が、大学に合格することで心が離れてしまった彼女(国立大学に合格して通っている)とよりを戻したいから、みたいなことはどう? 似た話がいままでに読んだ小説の中にあったっけな、思い出せない。ありそうでなかったかもしれない。なんていうか、自伝的な小説(であるらしい)はある程度、具体的でいいよね、ノンフィクション(不)合格体験記みたいなものになってしまうと、具体的すぎるけれど。ほかに浪人がらみのことでは…、そう、「ぼく」はいわゆる宅浪なのだけれど、高校のときの友達でのちにバンド仲間になる川井は、いちおう代々木の「Yゼミナール」に通っているらしい。
鷹見一幸 『小さな国の救世主5 オツカレ賢者の巻』
2008年4月3日 読書
電撃文庫、2007。シリーズものの最終巻(第5巻)。外国人の目を通しての日本(再)発見みたいな感じ、日本人の読者としては? 意外と中学校の図書館とかに置いておくといいような小説かも。文章はけっこう説明的。地の文だけでなく会話部分もけっこう長いところがある。ただ、説明的なのは親切なことでもあるので、何らかの予備知識がなくても読めていいかもしれない。例えば主人公たちは広島や秋葉原にも行くのだけれど、そうした場所を1度も訪れたことがない人が読んでも、理解できる感じ。ちょっと気になったのは、「……」と「!」の2つの記号ばかり使われていること。いいか悪いかは別として、文体がけっこう安定している? 内容というかは――、小国セリカスタンでは「英雄」、日本では「ただの浪人生」である天山龍也(あまやま・たつや)が、日本にやってきたおなじみの(?)“セリカスタン3人娘”――リューカ姫、サラサ、シーデ――を案内してまわる、というか。それと平行して、北の某国から生物テロを企ているテロリストが日本に侵入してくる、みたいな話。日本人の祖父に教わったというサラサさんの広島弁がちょっとすごいな。でも、あれか、そのサラサがいわゆる“戦闘美少女”担当な感じ?(リューカ姫たちは血はつながっていないけれど、藤島康介の漫画『ああっ女神さまっ』でいえば、主人公のことが好きでおとなしい感じのリューカがベルダンディーで、ちょっと粗暴でグラマラスな感じのサラサがウルドで、無邪気で子どもっぽいシーデがスクルド、みたいな感じでしょ? よくある性格配分パターン?)。あと、そう、この小説でも、テロリストの情報をつかんでそれを食いとめようとする、肯定的に描かれた警察官僚(大泉参事官)が出てくる。あ、「も」というのは、最近読んだ今野敏『隠蔽捜査』が頭にあります(すみません)。で、浪人生小説としての読みどころは、うーん…、ゼロかな(涙)。リューカ姫たちの話を聞いてお父さんが「ただの浪人生」である息子を見直す場面は、ちょっとよいかも。ちなみに、描かれているのは、序章を除いて5月の17日から23日まで。家は、三鷹らしい。兄弟はいないのかな? 予備校はどこあたりに通っているのだろう?(わからん)。そう、何巻目から浪人しているのかな、この主人公? やっぱりシリーズものは1巻目から読まないとあかんな(汗)。
日日日 『蟲と眼球とダメージヘア』
2008年4月3日 読書
MF文庫J、2007。いきなりシリーズものの6巻目(しかも別巻にして最終巻)を読んでも、踏まえている(らしき)ことが多すぎて…。話の流れはわからなくないけれど。第1章ならぬRagnarok-01(oはウムラウト、というか、単語の意味わからん(涙))のタイトルが「十九歳浪人生趣味はTVゲーム」。「あたし」=眼球抉子(がんきゅう・えぐりこ)改め偽原栗子(いつはら・くりこ)は、再構築された世界で浪人生として暮らしている。高校から学校に通い始めたのであれば、大学受験はやっぱり厳しいか(うーん…)。高校が同じで同じ予備校ともだち、越前海月(えちぜん・くらげ)さんが教えてくれる、野球拳ならぬ“受験拳”というのがちょっと面白いな(「受験〜するぅならぁ〜♪」)。というか、本当にみのさんが言っていたの? だとしたらろくなこと言わないな、みのもんた(汗)。作者の日日日(あきら)って男性だよね? こういう女の子の1人称(だけ)で書かれた、読みきれる浪人生小説(できれば長め)ってどこかにないかな、あれば読みたい。
妹尾ゆふ子 『NAGA 蛇神の巫』
2008年4月2日 読書
ハルキ文庫、2000。タイトルは伸ばして「ナーガ」。※以下、すみません、ネタバレにはご注意ください。
<受験に失敗した従兄弟[いとこ]を励まそうとメールを書いている涼子の前に、当の渉[わたる]がCRTから出現! 一体、渉に何が起こっているの!? それは二人が正月に経験した神儀を契機とした、蛇神と巫[みこ]の不思議な物語の始まりだった……。渉と涼子は、秘せられし神、言織比売[ことおりひめ]を見出せるか? 妹尾ゆふ子が巧みな筆致で、世紀末に舞う古き神々を描いた現代SFファンタジー、書き下ろし。>([ ]はルビ、表紙カバーより。)
↑これだけだとなんのことやら、かな(汗)。「Aを契機としたBの始まり」って日本語としてちょっと複雑?(そうでもないか)。読んでいても、因果関係というかが意外とわかりにくかったかな、この小説。たんに私の頭がよくないせいかもしれないけれど。そういえば、日本の神話(みたいなもの)が絡んだ小説と、自分はどうも相性がよくない気がする。以前読んだ、瀬川ことび『7』にしても、竹本健治『クレシェンド』にしてもハズレだったし。
序章の次、第一章は、お母さんが主人公(中森涼子・高校2年生)に「本家の渉さん、浪人だって」と言う場面から始まっている。ただ、でも、それが(2000年の)3月27日の話で、そのあといとこの渉(森宮渉)がパソコンのなかから出てきたりするのだけれど、小説は、その1日のことと、話が1月1日に戻って、なんていうかその3月27日にいたるまで(日付はとびとび)が交互に書かれている。←説明が下手でもうしわけない(汗)。なので、渉くんに関しては、浪人生活が描かれているわけではなく、浪人(生活)にいたるまでが描かれている感じ。“受験生小説”としては、主人公も今年は高校3年生、どうして大学に行くのか、みたいな話(やりとり)は書かれていたと思う。
ネタバレしてしまうけれど、最後に時間が飛んで、ゴールデン・ウィークの5月5日に。渉は4月から「代々木にある予備校」に通っているとのこと。そういえば、渉の家ってどこにあるんだっけ?(読み直さないとわからないな…、付箋くらい貼っておけよ、自分(涙))。
[追記(2016.09.06)]知らなかったんだけど、作者のサイトに後日談がある。「NAGA 紙飛行機の行方」という作品。
<受験に失敗した従兄弟[いとこ]を励まそうとメールを書いている涼子の前に、当の渉[わたる]がCRTから出現! 一体、渉に何が起こっているの!? それは二人が正月に経験した神儀を契機とした、蛇神と巫[みこ]の不思議な物語の始まりだった……。渉と涼子は、秘せられし神、言織比売[ことおりひめ]を見出せるか? 妹尾ゆふ子が巧みな筆致で、世紀末に舞う古き神々を描いた現代SFファンタジー、書き下ろし。>([ ]はルビ、表紙カバーより。)
↑これだけだとなんのことやら、かな(汗)。「Aを契機としたBの始まり」って日本語としてちょっと複雑?(そうでもないか)。読んでいても、因果関係というかが意外とわかりにくかったかな、この小説。たんに私の頭がよくないせいかもしれないけれど。そういえば、日本の神話(みたいなもの)が絡んだ小説と、自分はどうも相性がよくない気がする。以前読んだ、瀬川ことび『7』にしても、竹本健治『クレシェンド』にしてもハズレだったし。
序章の次、第一章は、お母さんが主人公(中森涼子・高校2年生)に「本家の渉さん、浪人だって」と言う場面から始まっている。ただ、でも、それが(2000年の)3月27日の話で、そのあといとこの渉(森宮渉)がパソコンのなかから出てきたりするのだけれど、小説は、その1日のことと、話が1月1日に戻って、なんていうかその3月27日にいたるまで(日付はとびとび)が交互に書かれている。←説明が下手でもうしわけない(汗)。なので、渉くんに関しては、浪人生活が描かれているわけではなく、浪人(生活)にいたるまでが描かれている感じ。“受験生小説”としては、主人公も今年は高校3年生、どうして大学に行くのか、みたいな話(やりとり)は書かれていたと思う。
ネタバレしてしまうけれど、最後に時間が飛んで、ゴールデン・ウィークの5月5日に。渉は4月から「代々木にある予備校」に通っているとのこと。そういえば、渉の家ってどこにあるんだっけ?(読み直さないとわからないな…、付箋くらい貼っておけよ、自分(涙))。
[追記(2016.09.06)]知らなかったんだけど、作者のサイトに後日談がある。「NAGA 紙飛行機の行方」という作品。
小沢章友 『荒野狼 破壊神リリス』
2008年4月2日 読書トクマ・ノベルズ(TOKUMA NOVELS)、2002。シリーズものっぽいのだけれど、2冊目は出ているの? ――まぁいいか。感想というかは、けっこう読ませられることは読ませられるけれど、読んでいてめんどくさいというかうざいというか。評価は2つ星くらい、おすすめ度は1くらいで(5段階で)。※以下、すみません、いつものようにネタバレにはご注意ください。
<尾崎龍一は十九歳の予備校生。ある日、不良たちにからまれていた真っ赤なコートの美少女を助けようとするが、逆に叩きのめされ、気を失ってしまう。正気に返り、彼らを追った龍一が見たものは、下半身をさらけ出し、性器をちぎり取られた三人の無残な死体だった! 一方、四姉妹の末娘で女子高に通う千家桜子は、悪魔に憑かれた母と姉たちの残虐なふるまいに目を背けながらも、いずれ同じになるであろう、自らの呪われた運命と必死に戦っていた。そして桜子の姉たちの標的となる龍一。龍一の中の狼が覚醒する!>(表紙カバーの折り返しより。)
人間は99%の“羊”と1%の“狼”から成っている、らしいけれど、“狼”が多すぎ(汗)。それじゃ、千家リリなんとか3姉妹(桜子除く)がいくらウルフ狩りをしても減らないよね。主人公の名前は「宇崎竜童」をもじったのか? 全体的に名前の付け方がいらいらするけれど、それはともかく。設定的には、主人公の“覚醒”うんぬんとか、時を越えた“光と闇(神と悪魔)の戦い”っぽい感じとか、この前読んだ丘野ゆうじ『星魔バスター』(の1冊目)とちょっと似ているかも、しれないけれど、それよりは耽美的というか、宗教・芸術がかっている感じ。それで、なんていうか、読んでいて心がすさんでくるというか、描かれている世界・人物がすさんでいるというか。例えば、予備校がらみのことでいえば――龍一はお茶の水にある予備校(「早慶予備校」)に通っているのだけれど――、校舎の前で女子高校生たちが座り込んで煙草を吸っているわ、高校のときの同級生(=笠間裕樹、高校は「静岡高校」)は金を貸してくれ貸してくれとせびってくるわ、不良予備校生3人組は授業中に目を付けた女の子を使われていない部屋(通称“怪談部屋”)に連れ込んで葉っぱを嗅がせたりしてやっている(らしい)わ……。主人公の龍一だけでなく桜子もだけれど、もっと常識的な考えをもった人物であれば(あるいは強い意志やら凛々しさやらを持ち合わせていれば)共感できたりするんだろうけど、そうではない感じだし。龍一くんは意固地というか、ひとの話をあまり聞かない性格。
ちなみに、描かれているのは2002年4月某日から、最後はサッカーのW杯が終わっている……ので、いつ? 龍一は荻窪のアパート(築30年、4畳半の部屋)で1人暮らし。両親は亡くなっていて伯父が仕送りをしているらしい。そういえば、桜子が通っている高校が四ッ谷(「四つ葉学園高校」)だし、JR中央線な感じ? そう、第1章(「第一の書」)では予備校へ行くまでの、御茶ノ水駅の近くが描かれている。ドラッグ・ストアとか楽器店とか。(元)S台生とかは多少、「あぁ」(?)とか思ったりするかもしれない。そう、ちょっと忘れていたけれど、お茶の水といえば楽器屋だよね。あと、どうでもいいけれど、この小説を読むかぎり、作者は中央線(の特定の駅の周辺)だけでなく、花とか木とかいった植物にも詳しそう。龍一の奥底に眠っているのが“アカシヤ・クロニクル”(神々の年代記)だし。
+++++++++++
※ しばらくなのか、ずっとなのか、「ブックレビュー」(アマゾンの)が使えなくなっている。「楽天製品レビュー」では出てこない本もあるみたい(涙)。
<尾崎龍一は十九歳の予備校生。ある日、不良たちにからまれていた真っ赤なコートの美少女を助けようとするが、逆に叩きのめされ、気を失ってしまう。正気に返り、彼らを追った龍一が見たものは、下半身をさらけ出し、性器をちぎり取られた三人の無残な死体だった! 一方、四姉妹の末娘で女子高に通う千家桜子は、悪魔に憑かれた母と姉たちの残虐なふるまいに目を背けながらも、いずれ同じになるであろう、自らの呪われた運命と必死に戦っていた。そして桜子の姉たちの標的となる龍一。龍一の中の狼が覚醒する!>(表紙カバーの折り返しより。)
人間は99%の“羊”と1%の“狼”から成っている、らしいけれど、“狼”が多すぎ(汗)。それじゃ、千家リリなんとか3姉妹(桜子除く)がいくらウルフ狩りをしても減らないよね。主人公の名前は「宇崎竜童」をもじったのか? 全体的に名前の付け方がいらいらするけれど、それはともかく。設定的には、主人公の“覚醒”うんぬんとか、時を越えた“光と闇(神と悪魔)の戦い”っぽい感じとか、この前読んだ丘野ゆうじ『星魔バスター』(の1冊目)とちょっと似ているかも、しれないけれど、それよりは耽美的というか、宗教・芸術がかっている感じ。それで、なんていうか、読んでいて心がすさんでくるというか、描かれている世界・人物がすさんでいるというか。例えば、予備校がらみのことでいえば――龍一はお茶の水にある予備校(「早慶予備校」)に通っているのだけれど――、校舎の前で女子高校生たちが座り込んで煙草を吸っているわ、高校のときの同級生(=笠間裕樹、高校は「静岡高校」)は金を貸してくれ貸してくれとせびってくるわ、不良予備校生3人組は授業中に目を付けた女の子を使われていない部屋(通称“怪談部屋”)に連れ込んで葉っぱを嗅がせたりしてやっている(らしい)わ……。主人公の龍一だけでなく桜子もだけれど、もっと常識的な考えをもった人物であれば(あるいは強い意志やら凛々しさやらを持ち合わせていれば)共感できたりするんだろうけど、そうではない感じだし。龍一くんは意固地というか、ひとの話をあまり聞かない性格。
ちなみに、描かれているのは2002年4月某日から、最後はサッカーのW杯が終わっている……ので、いつ? 龍一は荻窪のアパート(築30年、4畳半の部屋)で1人暮らし。両親は亡くなっていて伯父が仕送りをしているらしい。そういえば、桜子が通っている高校が四ッ谷(「四つ葉学園高校」)だし、JR中央線な感じ? そう、第1章(「第一の書」)では予備校へ行くまでの、御茶ノ水駅の近くが描かれている。ドラッグ・ストアとか楽器店とか。(元)S台生とかは多少、「あぁ」(?)とか思ったりするかもしれない。そう、ちょっと忘れていたけれど、お茶の水といえば楽器屋だよね。あと、どうでもいいけれど、この小説を読むかぎり、作者は中央線(の特定の駅の周辺)だけでなく、花とか木とかいった植物にも詳しそう。龍一の奥底に眠っているのが“アカシヤ・クロニクル”(神々の年代記)だし。
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※ しばらくなのか、ずっとなのか、「ブックレビュー」(アマゾンの)が使えなくなっている。「楽天製品レビュー」では出てこない本もあるみたい(涙)。
皆川ゆか 『太陽系アイドル伝説――ALICE-SOS――』
2008年3月12日 読書上・下、朝日ソノラマ文庫、1995。正直に言って読んでいる途中からこれはあまり面白くない、と思ってしまって、最後まで読み通すのがかなりしんどかったです(涙)。文体というか文章は読んでいてあまり苛々しないのだけれど、なんでだろう、何かが足りないのかな。だとしたら何が足りないの?(うーん…)。※以下、ネタバレにはご注意ください。
<予備校をサボってのんびりと芝生の上で横になっていると、突然、上空をぷかぷかと漂っていた飛行船からステージ衣装をまとった美少女が落ちてきた――これが僕と明ノ星ありすとの出会いだった。人目もはばからずありすを襲う戦闘ヘリに、見るからに怪しげな黒スーツの男たち。そして、≪紙の魔術師≫瑞希と名乗るみょうちくりんな女や、≪アンタッチャブル≫もどきの荒っぽそうな連中もありす追跡に加わって、彼女を助けようとかけずり回る僕は、いつしか太陽系規模の巨大な陰謀の渦へと巻き込まれるのだった……。果たして連中が狙う、ありすの秘密とは――?>(上巻の後ろのところより。)
かわいい女の子が空から降ってくる落ちもの系、受身的で巻き込まれ型の主人公(1人称「僕」)、ややイモヅル式で女の子たくさんな(それほど多くないか)お花畑状態――漫画的、ライトノベル的なお約束小説というか?(よくわからないけれど)。内容・ストーリー的なことでは、個人的には(以前にも書いたような気がするけれど)追ったり追われたりするようなハリウッド映画っぽい話があまり好きではなくて…。あ、追われてはいるけれど、追いはしていないか。最初のへんでヘリコプターから銃撃されたりしているけれど、そういう場面とかも。(ふつうなら逃げられずにとっくに死んでいるよな。)
内容的なことでは、伏線がわかりやすすぎるきらいはあるかな。例えば(ネタバレしてしまうけれど)「僕」(本名不明、1浪)の予備校での唯一の知り合いで、「僕」が窮地に陥っているときにしばしば助けてくれる諸戸さん(いちおう2浪)の素性、正体とか。だいたいこんな感じかなと思っていると、だいたいそんな感じであるし。≪アンタッチャブル≫たち(=水星コネクション)とそのボスが、別に、ありすから彼女が封印している『船』(=『宇宙(そら)翔ける美姫(びき)』)を手に入れようとしているわけではないこととか、そんなに早くからわからなくてもいいと思う。あ、そうか、わかりやすいだけではなく、ひっぱりすぎなのかもしれない。“答え”(“謎”に対する種あかし)までがかなり長くなっている。でも、中学生くらいの人が読むなら(ソノラマ文庫だし)わかりやすいほうがかえっていいのかも。(かなしいかな、あたしゃ気の短いおっさんですから(涙)。)
あと、時代的なせいもあるのかもしれないけれど、ほとんどのキャラクターがうす味な気も。人の言葉を好意的に誤解する、思い込みキャラであるヒロインのありす(苗字の「明ノ星」は「あけのほし」と読む)にしても、ぜんぜん萌えないような…。ひまわりを思わせるアイドル衣装……この小説本が出版された1995年くらいは、どんな時代だったっけ? 思い出せないや(汗)。globe(小室ファミリー)はそれくらいじゃなかったっけ? アイドルじゃないけれど。そう、相川七瀬が♪夢見る少女じゃいられない、とか歌っていた気も。←あくまで個人的な記憶です(間違っていたらすみません)。作中で「僕」がツッコミを入れていたかどうかは覚えていないけれど、服が黄色いのはたぶん、最近まで本当にアイドルだったありすが、実は金星大統領(金星の象徴的な存在らしい)だから。金星→黄色みたいな感じ?
ほかにも、時代だけでなくイラストのせいもあるかもしれないけれど、登場人物たちが着ているものが、微妙にダサいような…。黒スーツの男たちの女性リーダーというか、彼らから「お嬢様」と呼ばれている女の人なんて、喪服(!)を着ているし。色白の美人とか言われても、喪服はちょっと…(萌える人は萌えるのかな、私の感覚がおかしいのか)。そもそもどうして喪服を着ているのかという説明はあったっけ、作中で?(なかったような気がするのだけれど)。その喪服美女に雇われている、冥王星魔術師組合に所属する≪紙の魔術師≫である瑞希(みずき)――いま風にいえばツンデレ・キャラだろうけど、デレ化するまでが長い長い(涙)――にしても、どうして露出の多い巫女さん風な服装をしているのか、よくわからない。しかも、これもいまいち“萌え”に欠けているような。あ、和服もしくは和風の服が多いのか。もう1人、大正時代の女学生風の服を着た女の子(とりあえず名前なし)も出てくるし。――というか、そういう服装よりもキャラクターの性格や言動が魅力に欠けているのかな?(うーん…)。
いつも書いているようなことも書いておかないと。描かれているのは、5月のある1日(午前から夜まで)の出来事。通っている予備校(たぶん以降、通わなくなるのではないかと思うけれど)があるのは、駅の1つ隣りが神宮、みたいなことを言っているから、たぶんお約束な代々木とか、新宿とかそのへんであると思う(やっぱりYゼミが確率的には高い?)。「僕」は、「一介の浪人生」という言葉を何かできないことの言い訳として(?)繰り返し使っているのだけれど、読んでいてそれほど浪人生という感じはしないかな、やっぱり。たいていの“浪人生小説”がそうだけれど。ちなみに、「僕」は物理も生物も、英語も苦手らしい(『出る単』に汲々としているらしい)。「僕」の家族は、どうなっているのやら、ぜんぜん語られていない(出版年が1995年……関係ないか)。そういえば、「たいていのことができる」というオール・マイティな感じの諸戸さんが、2浪している理由は作中であきらかになるけれど、1浪している(していた)理由がわからないな。諸戸さんがマンションに住めているのは、親がお金持ちだからではなく、浪人生以外になにがしかの副業をしているから?(違うか)。作中の時代は、下巻の「あとがき」によれば、この世界(舞台)は同じ作者の“ティー・パーティーシリーズ”(講談社X文庫ティーンズハート)とつながっていて、その数年前であるらしい。そちらを読んでいないのでわからないけれど、『出る単』も出てきているし、そんなに昔ではないと思う。
(ぜんぜん関係ないけれど、そういえば、『ルドイア星惑』(日本テレビ系)の人たちって今どうしているの? あの番組(土曜日の深夜)、『カウントダウンTV』とかとザッピングしながらけっこう見ていたんだけど。)
<予備校をサボってのんびりと芝生の上で横になっていると、突然、上空をぷかぷかと漂っていた飛行船からステージ衣装をまとった美少女が落ちてきた――これが僕と明ノ星ありすとの出会いだった。人目もはばからずありすを襲う戦闘ヘリに、見るからに怪しげな黒スーツの男たち。そして、≪紙の魔術師≫瑞希と名乗るみょうちくりんな女や、≪アンタッチャブル≫もどきの荒っぽそうな連中もありす追跡に加わって、彼女を助けようとかけずり回る僕は、いつしか太陽系規模の巨大な陰謀の渦へと巻き込まれるのだった……。果たして連中が狙う、ありすの秘密とは――?>(上巻の後ろのところより。)
かわいい女の子が空から降ってくる落ちもの系、受身的で巻き込まれ型の主人公(1人称「僕」)、ややイモヅル式で女の子たくさんな(それほど多くないか)お花畑状態――漫画的、ライトノベル的なお約束小説というか?(よくわからないけれど)。内容・ストーリー的なことでは、個人的には(以前にも書いたような気がするけれど)追ったり追われたりするようなハリウッド映画っぽい話があまり好きではなくて…。あ、追われてはいるけれど、追いはしていないか。最初のへんでヘリコプターから銃撃されたりしているけれど、そういう場面とかも。(ふつうなら逃げられずにとっくに死んでいるよな。)
内容的なことでは、伏線がわかりやすすぎるきらいはあるかな。例えば(ネタバレしてしまうけれど)「僕」(本名不明、1浪)の予備校での唯一の知り合いで、「僕」が窮地に陥っているときにしばしば助けてくれる諸戸さん(いちおう2浪)の素性、正体とか。だいたいこんな感じかなと思っていると、だいたいそんな感じであるし。≪アンタッチャブル≫たち(=水星コネクション)とそのボスが、別に、ありすから彼女が封印している『船』(=『宇宙(そら)翔ける美姫(びき)』)を手に入れようとしているわけではないこととか、そんなに早くからわからなくてもいいと思う。あ、そうか、わかりやすいだけではなく、ひっぱりすぎなのかもしれない。“答え”(“謎”に対する種あかし)までがかなり長くなっている。でも、中学生くらいの人が読むなら(ソノラマ文庫だし)わかりやすいほうがかえっていいのかも。(かなしいかな、あたしゃ気の短いおっさんですから(涙)。)
あと、時代的なせいもあるのかもしれないけれど、ほとんどのキャラクターがうす味な気も。人の言葉を好意的に誤解する、思い込みキャラであるヒロインのありす(苗字の「明ノ星」は「あけのほし」と読む)にしても、ぜんぜん萌えないような…。ひまわりを思わせるアイドル衣装……この小説本が出版された1995年くらいは、どんな時代だったっけ? 思い出せないや(汗)。globe(小室ファミリー)はそれくらいじゃなかったっけ? アイドルじゃないけれど。そう、相川七瀬が♪夢見る少女じゃいられない、とか歌っていた気も。←あくまで個人的な記憶です(間違っていたらすみません)。作中で「僕」がツッコミを入れていたかどうかは覚えていないけれど、服が黄色いのはたぶん、最近まで本当にアイドルだったありすが、実は金星大統領(金星の象徴的な存在らしい)だから。金星→黄色みたいな感じ?
ほかにも、時代だけでなくイラストのせいもあるかもしれないけれど、登場人物たちが着ているものが、微妙にダサいような…。黒スーツの男たちの女性リーダーというか、彼らから「お嬢様」と呼ばれている女の人なんて、喪服(!)を着ているし。色白の美人とか言われても、喪服はちょっと…(萌える人は萌えるのかな、私の感覚がおかしいのか)。そもそもどうして喪服を着ているのかという説明はあったっけ、作中で?(なかったような気がするのだけれど)。その喪服美女に雇われている、冥王星魔術師組合に所属する≪紙の魔術師≫である瑞希(みずき)――いま風にいえばツンデレ・キャラだろうけど、デレ化するまでが長い長い(涙)――にしても、どうして露出の多い巫女さん風な服装をしているのか、よくわからない。しかも、これもいまいち“萌え”に欠けているような。あ、和服もしくは和風の服が多いのか。もう1人、大正時代の女学生風の服を着た女の子(とりあえず名前なし)も出てくるし。――というか、そういう服装よりもキャラクターの性格や言動が魅力に欠けているのかな?(うーん…)。
いつも書いているようなことも書いておかないと。描かれているのは、5月のある1日(午前から夜まで)の出来事。通っている予備校(たぶん以降、通わなくなるのではないかと思うけれど)があるのは、駅の1つ隣りが神宮、みたいなことを言っているから、たぶんお約束な代々木とか、新宿とかそのへんであると思う(やっぱりYゼミが確率的には高い?)。「僕」は、「一介の浪人生」という言葉を何かできないことの言い訳として(?)繰り返し使っているのだけれど、読んでいてそれほど浪人生という感じはしないかな、やっぱり。たいていの“浪人生小説”がそうだけれど。ちなみに、「僕」は物理も生物も、英語も苦手らしい(『出る単』に汲々としているらしい)。「僕」の家族は、どうなっているのやら、ぜんぜん語られていない(出版年が1995年……関係ないか)。そういえば、「たいていのことができる」というオール・マイティな感じの諸戸さんが、2浪している理由は作中であきらかになるけれど、1浪している(していた)理由がわからないな。諸戸さんがマンションに住めているのは、親がお金持ちだからではなく、浪人生以外になにがしかの副業をしているから?(違うか)。作中の時代は、下巻の「あとがき」によれば、この世界(舞台)は同じ作者の“ティー・パーティーシリーズ”(講談社X文庫ティーンズハート)とつながっていて、その数年前であるらしい。そちらを読んでいないのでわからないけれど、『出る単』も出てきているし、そんなに昔ではないと思う。
(ぜんぜん関係ないけれど、そういえば、『ルドイア星惑』(日本テレビ系)の人たちって今どうしているの? あの番組(土曜日の深夜)、『カウントダウンTV』とかとザッピングしながらけっこう見ていたんだけど。)
丘野ゆうじ 『星魔バスター 闘士覚醒』
2008年3月12日 読書
集英社スーパーファンタジー文庫、1991。何冊(何巻)出ているのか知らないけれど、シリーズものの1冊目。※毎度ご迷惑をおかけしております、以下ネタバレにはご注意ください。例によって期待せずに読み始めたのだけれど、けっこう面白かったです。最後のほうまで飽きずに読めました。スピード感がある気がするし、(その理由とも関係するかもしれないけれど)場面転換みたいなものもうまいなと思ったです。でも、内容は男の子向けな感じかな、女の子が読んで面白いと思うかどうかはわからない。あと、個人的にグロいというか、スプラッターな場面が苦手なので、人の首とか腕とかがもがれたりとか、血の海とか、そういうのはちょっとダメです。挿し絵(イラスト)が入っていても、それを無視して、頭の中で実写で想像していることが多い、のがいけないのかもしれないけれど。
<時は現代の20世紀末、日本では謎のバラバラ殺人事件が続発していた。人々を震えあがらせたこの残虐かつ異常な事件は、実は地球の侵略をもくろむ、魔界の異形の一族『デーヴァ』のしわざだった。彼らに立ち向かうべく、神より地上に使わされた『サファイ』の一員、香山美奈子と、彼女の手足となって働く三人の『星の者』たち、八神和生、ニャン、天坊が今ここに結束し、『デーヴァ』との、血で血を洗う凄絶な戦いが、始まろうとしている。>(表紙の後ろより。)
おおざっぱに言えば、時代を超えた光サイドと闇サイドの闘い、みたいな感じ? 1視点小説(1元小説)ではないけれど、主人公と言ってもいい和生(かずお)は、もちろん光=善人サイドであるわけだけれど、なんていうか、この小説もかなりひっぱるよねー、“闘士”として“覚醒”するまでに(前世の記憶?を思い出すまでに)だいぶ読まないとあかんです(涙)。そう、タイトルをもうちょっとひねってくれたらよかったのに。って、そういう問題でもないか(ま、時間がかかるのは、スーパーサイヤ人@『ドラゴンボール』でもそうだから)。関係ないけれど、名前といえば、和生が一緒に闘ったりすることになる、ニャンと天坊(てんぼう)――香港出身で武術系のリ・ニャンリー(梨若玲、17歳)と坊主頭で呪文を唱える系の三命院天坊(12歳)――というのは、ちょっとアレを思い出すな、ヤン坊・マー坊。……似ていないですかそうですか(汗)。
浪人生の和生くん(19歳)が通っているのが、御茶ノ水の「大手S予備校」とのこと。でも、たぶん実在している某予備校(S台)とは異なっていると思う。本部校舎が10階建てのビルで、地下には食堂があるらしい。←S台の3号館(だっけ?)とはだいぶ違っているんじゃないですか、S台生の方? あ、でも、いまのS台生に聞いてもわからないかもしれない、199X年(20世紀末)10月の話なので。そう、御茶ノ水のあのへんにはゲームセンターってある(あった)の? 浪人生小説のお約束だけれど、和生はお昼を食べたあと、悪友の2人(吉村・佐竹)と午後の授業をさぼっている。
あと、受験がらみのことでは、和生くんは、模擬試験、模擬試験、と騒いでいる(?)。浪人生にとっての模試の重要性というのは、ふつうどれくらい? 10月の時点でまだ志望大学が決まっていないのか、この人は。模試を目標に勉強するのではなく、大学(特定の大学)合格を目指して勉強したほうが、モチベーションとしてはいいのではないか、と個人的には思うけれど。でも、非日常的なことが起こっても、まだ模擬試験には行こうとしていたり、浪人生としては偉い(?)ほうかもしれない。最後まだ(ネタバレしてしまうかな)当日の明け方、行こうと思えば時間的にも間に合うし。そう、自分の通う予備校で模試の申し込みをしているのだけれど、予備校主催の模試であれば、ふつう授業の年間カリキュラム(というか)に組み込まれているのではないか、と思うのだけれど、どうなのかな(小さい予備校ならわからないけれど、「大手」であるし)。そういえば、物語(ストーリー)に関係がないのだからしかたがないかもしれないけれど、前年度に受験した大学・学部とか、受験に失敗した理由とかについても、ぜんぜん書かれていないな。予備校の所属コース・クラスとか、理系なのか文系なのかについても。
家(マンションの1階らしい)は、どこにあるのかわかりそうでわからないな。両親と祖母が亡くなっていて、唯一の家族であるおじいちゃん(八神オブライエン、アメリカ生まれの日系二世)が入院しているので、1人暮らしになっている。予備校帰りはいつも直接、祖父の病院(F医科大付属病院)に行くらしい(御茶ノ水の駅から地下鉄丸ノ内線で、池袋で乗り換えて……結局どこ?)。そう、浪人生の定番アイテム(?)バイクというか、原付(スクーター)にも乗っている。
で、まじめに勉強している浪人生におすすめできる小説か? といえば、うーん…、できないかな、やっぱり。小説としては面白くても、それだけではちょっと…。和生(と友達2人)の翌年の合否については、2巻目以降を読めばわかるのかもしれない(けれど、まだ読んでいないです)。でも、よくわからないけれど、“覚醒”してしまったのでは、大学受験どころじゃないよね…、大学に行く意味もなくなってしまうし。
<時は現代の20世紀末、日本では謎のバラバラ殺人事件が続発していた。人々を震えあがらせたこの残虐かつ異常な事件は、実は地球の侵略をもくろむ、魔界の異形の一族『デーヴァ』のしわざだった。彼らに立ち向かうべく、神より地上に使わされた『サファイ』の一員、香山美奈子と、彼女の手足となって働く三人の『星の者』たち、八神和生、ニャン、天坊が今ここに結束し、『デーヴァ』との、血で血を洗う凄絶な戦いが、始まろうとしている。>(表紙の後ろより。)
おおざっぱに言えば、時代を超えた光サイドと闇サイドの闘い、みたいな感じ? 1視点小説(1元小説)ではないけれど、主人公と言ってもいい和生(かずお)は、もちろん光=善人サイドであるわけだけれど、なんていうか、この小説もかなりひっぱるよねー、“闘士”として“覚醒”するまでに(前世の記憶?を思い出すまでに)だいぶ読まないとあかんです(涙)。そう、タイトルをもうちょっとひねってくれたらよかったのに。って、そういう問題でもないか(ま、時間がかかるのは、スーパーサイヤ人@『ドラゴンボール』でもそうだから)。関係ないけれど、名前といえば、和生が一緒に闘ったりすることになる、ニャンと天坊(てんぼう)――香港出身で武術系のリ・ニャンリー(梨若玲、17歳)と坊主頭で呪文を唱える系の三命院天坊(12歳)――というのは、ちょっとアレを思い出すな、ヤン坊・マー坊。……似ていないですかそうですか(汗)。
浪人生の和生くん(19歳)が通っているのが、御茶ノ水の「大手S予備校」とのこと。でも、たぶん実在している某予備校(S台)とは異なっていると思う。本部校舎が10階建てのビルで、地下には食堂があるらしい。←S台の3号館(だっけ?)とはだいぶ違っているんじゃないですか、S台生の方? あ、でも、いまのS台生に聞いてもわからないかもしれない、199X年(20世紀末)10月の話なので。そう、御茶ノ水のあのへんにはゲームセンターってある(あった)の? 浪人生小説のお約束だけれど、和生はお昼を食べたあと、悪友の2人(吉村・佐竹)と午後の授業をさぼっている。
あと、受験がらみのことでは、和生くんは、模擬試験、模擬試験、と騒いでいる(?)。浪人生にとっての模試の重要性というのは、ふつうどれくらい? 10月の時点でまだ志望大学が決まっていないのか、この人は。模試を目標に勉強するのではなく、大学(特定の大学)合格を目指して勉強したほうが、モチベーションとしてはいいのではないか、と個人的には思うけれど。でも、非日常的なことが起こっても、まだ模擬試験には行こうとしていたり、浪人生としては偉い(?)ほうかもしれない。最後まだ(ネタバレしてしまうかな)当日の明け方、行こうと思えば時間的にも間に合うし。そう、自分の通う予備校で模試の申し込みをしているのだけれど、予備校主催の模試であれば、ふつう授業の年間カリキュラム(というか)に組み込まれているのではないか、と思うのだけれど、どうなのかな(小さい予備校ならわからないけれど、「大手」であるし)。そういえば、物語(ストーリー)に関係がないのだからしかたがないかもしれないけれど、前年度に受験した大学・学部とか、受験に失敗した理由とかについても、ぜんぜん書かれていないな。予備校の所属コース・クラスとか、理系なのか文系なのかについても。
家(マンションの1階らしい)は、どこにあるのかわかりそうでわからないな。両親と祖母が亡くなっていて、唯一の家族であるおじいちゃん(八神オブライエン、アメリカ生まれの日系二世)が入院しているので、1人暮らしになっている。予備校帰りはいつも直接、祖父の病院(F医科大付属病院)に行くらしい(御茶ノ水の駅から地下鉄丸ノ内線で、池袋で乗り換えて……結局どこ?)。そう、浪人生の定番アイテム(?)バイクというか、原付(スクーター)にも乗っている。
で、まじめに勉強している浪人生におすすめできる小説か? といえば、うーん…、できないかな、やっぱり。小説としては面白くても、それだけではちょっと…。和生(と友達2人)の翌年の合否については、2巻目以降を読めばわかるのかもしれない(けれど、まだ読んでいないです)。でも、よくわからないけれど、“覚醒”してしまったのでは、大学受験どころじゃないよね…、大学に行く意味もなくなってしまうし。
式貴士 「窓鴉」ほか
2008年3月11日 読書
同じ作者の、浪人生が出てくる小説はほかにもあるかもしれないけれど、とりあえず3篇とりあげておきます。※以下、ネタバレ注意です、すみません。
「日本が眠った日」(『カンタン形』CBSソニー出版、1979/角川文庫、1982。*9篇中の7篇目。)
けっこう面白かったです。タイトルとは逆に日本中が眠らなくなる。「眠らなくなる」ということは“夜”がなくなること? 子持ちの夫婦が営みに困ったり、泥棒が困ったり。睡眠時間がゼロになると、いわゆる受験競争/戦争は激化するものらしい(うーん…)。3人称複数視点の小説なので、主人公とは言えないかもしれないけれど、登場人物の1人が浪人生。小説の冒頭は次のように始まっている。
<敏彦は浪人二年生。地方から出てきて東京に下宿している。深夜の三時まで“パック”なんとかいう深夜放送を聞いてから眠る。ところがその晩はちがっていた。(略)>(文庫、p.203)
個人的にはぴんと来ないけれど、受験生といえばやっぱりラジオの深夜放送? 「パック・イン・ミュージック」……作家の川上弘美(1958-)は投稿して景品をもらったことがあるらしい。姫野カオルコ(1958-)の小説『終業式』では、高校3年生(受験生)の2人が「セイ・ヤング」に投稿している(作中には「オール・ナイト・ニッポン」の名前も出てくる)。受験生にとっての深夜放送が下火になるのは、いつくらいから?(私にはわからない)。ちなみに「その晩」というのは、198X年6月10日のこと(正確には日付が替わって11日か)。そういえば、矛盾はしていないかもしれないけれど、あとのほうで(眠らなくなる前の)睡眠時間は8時間、と書かれていて、午前3時に寝ているのだから、起床は午前11時になってしまう。予備校には午後からの出席しているの? 敏彦くん、志望は医学部らしい。書かれてはいなかったと思うけれど、父親は医者かもしれない。お金には困っていない感じ(アパートの隣の部屋のカップル――万年大学生とホステス――の、なんていうか、やっている音、が勉強のさまたげになるということで、父親に言ってアパートから1DKのマンションに引っ越している)。ネタバレしてしまうけれど、最後3年後になっていて、敏彦はまだ浪人生のまま(5浪?)。そういえば、「(和文英訳の)難問集」という言葉が出てくる。「難問集」というのは、ちょっと古めかしい感じがする。しないですか?(あとがきに書かれているけれど、作者は1933年生まれ)。
「不思議の国のマドンナ」(同。*8篇目。)
最後まで読むと、取りあげる必要はなかったかなとも思ったけれど、一応。予備校生の次郎はいつも電車(小田急線)で乗り合わせる女の子のことが好きで、口をきくまでにだいぶ時間がかかったりしたけれど(2ヶ月)、その子=碓氷有美香(高校2年生)とスケートのデートに。そのさわやか青春恋愛ストーリーな(?)次郎の世界を「不思議の国」のジロは夢としてみている……。最後はなんていうか、個人的にはちょっとついていけないというか、えー!?という感じでした(説明になっていないか(汗))。
「窓鴉」(『イースター菌』CBSソニー出版、1979/角川文庫、1982。*6篇中の1篇目。)
瀬名秀明編『贈る物語 Wonder すこしふしぎの驚きをあなたに』(光文社、2002/光文社文庫、2006)というアンソロジー本でも読めて、いま手元にあるのはそれ(の文庫のほう)です。おすすめというか、とても面白かったです。「ぼく」が予備校の宿題でエドガー・アラン・ポーの詩‘The Raven’(「大鴉」)を訳していると(予備校はそんな宿題は出さないと思うけれど)、部屋の窓ガラスのなかに烏が現れる。で、なんというか、その「窓鴉」はいろいろな意味ですごい存在で、「ぼく」に勉強を教えてくれたり、恋愛の相談にも乗ってくれたりする。――ひと言でいえば“青春恋愛小説”かな、やっぱり。恋愛についてはだいぶ一方的な感じだけれど。
<予備校に入って三か月目に、総合学力テストがあった。その成績で、志望校別、成績別の組分けがある。ぼくの入った組に彼女がいたのだ。>(p.85)
「彼女」の名前は、依光麗奈(よりみつ・れいな)。実際、↑みたいに入ってから組が「編成」される予備校ってあるの?(ありそうな感じはするけれど)。舞台は東京だっけ? 予備校は高台にあるらしい(教室が6階らしいので、校舎は推定6階以上)。主人公(の設定)はどうなのかな、浪人生っぽいといえば浪人生っぽいかもしれない。英詩の和訳についてもハテナだけれど、ほかにも、「ぼく」は買ってもらって「ランダムハウスの大英和辞典」を持っているらしい。――大学受験生には不要な大型辞典だよね、たぶん。ただ、そういう細かいところはつっこめるかもしれないけれど、全体としては(浪人生小説としても)おすすめであると思う。窓鴉のアドバイスを受けながら、最後、いちおう成長している感じになっているからかな(“成長小説”万歳!?)。あと、同じ本の中で編者が、式貴士のSFについて、「エロ・グロのなかに時折り現れる、おそらく作者の根っこであろう過剰なほどのペダンティズムとセンチメンタリズムがたまらないのです」(p.26)と書いている、けれど、ペダンティックというか、この短篇に関しては(E.A.ポー以外にも)英米文学を踏まえていたり、それからのちょっとした引用があったりして、個人的には(あらかた忘れてしまったけれど、大学のときに一応勉強しているので)ちょっとうれしい感じ。関係ないけれど、オチにも関係していくことで、「ぼく」はバイク(ホンダXL125S)に乗っている。小説中の浪人生のバイク乗車率はやっぱり高い。
「日本が眠った日」(『カンタン形』CBSソニー出版、1979/角川文庫、1982。*9篇中の7篇目。)
けっこう面白かったです。タイトルとは逆に日本中が眠らなくなる。「眠らなくなる」ということは“夜”がなくなること? 子持ちの夫婦が営みに困ったり、泥棒が困ったり。睡眠時間がゼロになると、いわゆる受験競争/戦争は激化するものらしい(うーん…)。3人称複数視点の小説なので、主人公とは言えないかもしれないけれど、登場人物の1人が浪人生。小説の冒頭は次のように始まっている。
<敏彦は浪人二年生。地方から出てきて東京に下宿している。深夜の三時まで“パック”なんとかいう深夜放送を聞いてから眠る。ところがその晩はちがっていた。(略)>(文庫、p.203)
個人的にはぴんと来ないけれど、受験生といえばやっぱりラジオの深夜放送? 「パック・イン・ミュージック」……作家の川上弘美(1958-)は投稿して景品をもらったことがあるらしい。姫野カオルコ(1958-)の小説『終業式』では、高校3年生(受験生)の2人が「セイ・ヤング」に投稿している(作中には「オール・ナイト・ニッポン」の名前も出てくる)。受験生にとっての深夜放送が下火になるのは、いつくらいから?(私にはわからない)。ちなみに「その晩」というのは、198X年6月10日のこと(正確には日付が替わって11日か)。そういえば、矛盾はしていないかもしれないけれど、あとのほうで(眠らなくなる前の)睡眠時間は8時間、と書かれていて、午前3時に寝ているのだから、起床は午前11時になってしまう。予備校には午後からの出席しているの? 敏彦くん、志望は医学部らしい。書かれてはいなかったと思うけれど、父親は医者かもしれない。お金には困っていない感じ(アパートの隣の部屋のカップル――万年大学生とホステス――の、なんていうか、やっている音、が勉強のさまたげになるということで、父親に言ってアパートから1DKのマンションに引っ越している)。ネタバレしてしまうけれど、最後3年後になっていて、敏彦はまだ浪人生のまま(5浪?)。そういえば、「(和文英訳の)難問集」という言葉が出てくる。「難問集」というのは、ちょっと古めかしい感じがする。しないですか?(あとがきに書かれているけれど、作者は1933年生まれ)。
「不思議の国のマドンナ」(同。*8篇目。)
最後まで読むと、取りあげる必要はなかったかなとも思ったけれど、一応。予備校生の次郎はいつも電車(小田急線)で乗り合わせる女の子のことが好きで、口をきくまでにだいぶ時間がかかったりしたけれど(2ヶ月)、その子=碓氷有美香(高校2年生)とスケートのデートに。そのさわやか青春恋愛ストーリーな(?)次郎の世界を「不思議の国」のジロは夢としてみている……。最後はなんていうか、個人的にはちょっとついていけないというか、えー!?という感じでした(説明になっていないか(汗))。
「窓鴉」(『イースター菌』CBSソニー出版、1979/角川文庫、1982。*6篇中の1篇目。)
瀬名秀明編『贈る物語 Wonder すこしふしぎの驚きをあなたに』(光文社、2002/光文社文庫、2006)というアンソロジー本でも読めて、いま手元にあるのはそれ(の文庫のほう)です。おすすめというか、とても面白かったです。「ぼく」が予備校の宿題でエドガー・アラン・ポーの詩‘The Raven’(「大鴉」)を訳していると(予備校はそんな宿題は出さないと思うけれど)、部屋の窓ガラスのなかに烏が現れる。で、なんというか、その「窓鴉」はいろいろな意味ですごい存在で、「ぼく」に勉強を教えてくれたり、恋愛の相談にも乗ってくれたりする。――ひと言でいえば“青春恋愛小説”かな、やっぱり。恋愛についてはだいぶ一方的な感じだけれど。
<予備校に入って三か月目に、総合学力テストがあった。その成績で、志望校別、成績別の組分けがある。ぼくの入った組に彼女がいたのだ。>(p.85)
「彼女」の名前は、依光麗奈(よりみつ・れいな)。実際、↑みたいに入ってから組が「編成」される予備校ってあるの?(ありそうな感じはするけれど)。舞台は東京だっけ? 予備校は高台にあるらしい(教室が6階らしいので、校舎は推定6階以上)。主人公(の設定)はどうなのかな、浪人生っぽいといえば浪人生っぽいかもしれない。英詩の和訳についてもハテナだけれど、ほかにも、「ぼく」は買ってもらって「ランダムハウスの大英和辞典」を持っているらしい。――大学受験生には不要な大型辞典だよね、たぶん。ただ、そういう細かいところはつっこめるかもしれないけれど、全体としては(浪人生小説としても)おすすめであると思う。窓鴉のアドバイスを受けながら、最後、いちおう成長している感じになっているからかな(“成長小説”万歳!?)。あと、同じ本の中で編者が、式貴士のSFについて、「エロ・グロのなかに時折り現れる、おそらく作者の根っこであろう過剰なほどのペダンティズムとセンチメンタリズムがたまらないのです」(p.26)と書いている、けれど、ペダンティックというか、この短篇に関しては(E.A.ポー以外にも)英米文学を踏まえていたり、それからのちょっとした引用があったりして、個人的には(あらかた忘れてしまったけれど、大学のときに一応勉強しているので)ちょっとうれしい感じ。関係ないけれど、オチにも関係していくことで、「ぼく」はバイク(ホンダXL125S)に乗っている。小説中の浪人生のバイク乗車率はやっぱり高い。
山田正紀 「閃光」/「真夜中のビリヤード」
2008年3月11日 読書連作とかではないけれど、作者が同じなので2篇一緒に取りあげておきます。※以下、けっこうネタバレしていると思うので、まだ読まれていない方はご注意ください。
「閃光」(『剥製の島』徳間書店、1978/徳間文庫、1985。8篇中の2篇目)
青春小説というか。季節は夏。プロの暗殺者(殺し屋)である「男」が銃で誰かを暗殺しようとしている一方で、2人の浪人生がいて、大使館(「K国大使館」)でのアルバイトのさいに「暗号」を見つけてそれを解こうとする、みたいな話。暗号が数学のように解けていくのはちょっとよいと思ったけれど、解けてみれば、何これ?なしょぼさである(これじゃかなり限定された言葉しか暗号化できないだろう)。あと、日雇い(日払い)のものであっても、予備校の掲示板でアルバイトの募集をしていてはダメだよね。お金に困っている生徒もいるだろうけれど、学校ぜんたいの勉強意欲がそがれそう。2人の予備校生――痩せている高木義雄と太っている北野康二は、高校のときからの友達で志望校も同じ、家も中流サラリーマン家庭で同じ、であるとのこと。
<二人とも、来年はなんとしてでも大学に入る必要があった。志望校に落ちれば、大学のランクを下げてでも入るしかないのだ。義雄も康二も、二浪が許されるほど、家庭が裕福ではなかった。>(文庫、p.70)
小説中浪人生としては若干シビアかな。本の出版年はいつだっけ? 1978年か。70年代後半の中流サラリーマン家庭の平均年収って? ――そんなことどうでもいいか(汗)。ランク下の大学(いわゆる滑り止め)も落ちたら、もう就職? そういえば、浪人生コンビの精神年齢がちょっと幼いなと感じて読んでいたら、最後のほうの伏線になっていたっぽい。青春小説=成長小説? 浪人生小説としての読みどころとしては、ほかには……どこ? 暗号が解けないことと、浪人生であることの両者からくる義雄くんの苛立ち、には、青春灰色中な浪人生であれば、多かれ少なかれ共感できるかも。
「真夜中のビリヤード」(『五つの標的』光風社、1991/光風社文庫、1995。5話中の「第ニ話」)
これも青春小説というか。浪人生の1視点であるし、どちらかといえばこちらのほうがお薦めかな。午前2時、店主も帰ったあとのビリアード場(南青山の奥まったところ)で主人公の予備校生、村上裕二(2浪、20歳)が、氷川という男(三十男、顔見知りではあるけれど、素性はよく知らない)と2人でビリアードをしていると、中年の男が入ってきて……みたいな始まり。これも大使館とか諜報(スパイ)活動とかが絡んでいる話で、裕二くんは女とともに逃げることになるのだけれど、……それはそれとして。予備校生の設定は「閃光」とほとんど重なっていない。裕二くんは茨城から上京していて、渋谷のアパートから「代々木にある予備校」に通っているらしい。父親は開業医で、頭も悪くなく、跡を継ぐために医学部志望であったけれど、2浪したことでこのままでいいのか、と疑問を持ち始めたらしい(でも、自分が本当にしたいことがわからないという状況らしい)。とりあえず、経済的には義雄&康二よりも恵まれているよね。浪人がらみの話では、ほかには、個人的によくわかるなと思ったのが、街(六本木・赤坂・青山)をただ歩き回ったり、図書館(「赤坂図書館」)に寄って勉強するわけではなく小説を読んだり、とかいう話。私の場合、浪人中、予備校とは逆方向の電車に乗って、知らない街で降りてただ歩き回ったりしたことがあります。そう、どうでもいいけれど、ビリアード屋なら代々木のあたりのところに行けばいいのにね、そうしたら千波くんたち(@高田崇史『試験に出るパズル』)と対決できるかも!? ちなみに季節はこれも夏で、作中の時間は翌朝まで進む。
なんていうか、2篇とも男の子が好みそうな話になっているのかな。ゲーム(暗号解読、玉突き)をすることが、何か大袈裟な背景(国だのスパイ組織だの)を持つ現実の一端につながっている、みたいな。
「閃光」(『剥製の島』徳間書店、1978/徳間文庫、1985。8篇中の2篇目)
青春小説というか。季節は夏。プロの暗殺者(殺し屋)である「男」が銃で誰かを暗殺しようとしている一方で、2人の浪人生がいて、大使館(「K国大使館」)でのアルバイトのさいに「暗号」を見つけてそれを解こうとする、みたいな話。暗号が数学のように解けていくのはちょっとよいと思ったけれど、解けてみれば、何これ?なしょぼさである(これじゃかなり限定された言葉しか暗号化できないだろう)。あと、日雇い(日払い)のものであっても、予備校の掲示板でアルバイトの募集をしていてはダメだよね。お金に困っている生徒もいるだろうけれど、学校ぜんたいの勉強意欲がそがれそう。2人の予備校生――痩せている高木義雄と太っている北野康二は、高校のときからの友達で志望校も同じ、家も中流サラリーマン家庭で同じ、であるとのこと。
<二人とも、来年はなんとしてでも大学に入る必要があった。志望校に落ちれば、大学のランクを下げてでも入るしかないのだ。義雄も康二も、二浪が許されるほど、家庭が裕福ではなかった。>(文庫、p.70)
小説中浪人生としては若干シビアかな。本の出版年はいつだっけ? 1978年か。70年代後半の中流サラリーマン家庭の平均年収って? ――そんなことどうでもいいか(汗)。ランク下の大学(いわゆる滑り止め)も落ちたら、もう就職? そういえば、浪人生コンビの精神年齢がちょっと幼いなと感じて読んでいたら、最後のほうの伏線になっていたっぽい。青春小説=成長小説? 浪人生小説としての読みどころとしては、ほかには……どこ? 暗号が解けないことと、浪人生であることの両者からくる義雄くんの苛立ち、には、青春灰色中な浪人生であれば、多かれ少なかれ共感できるかも。
「真夜中のビリヤード」(『五つの標的』光風社、1991/光風社文庫、1995。5話中の「第ニ話」)
これも青春小説というか。浪人生の1視点であるし、どちらかといえばこちらのほうがお薦めかな。午前2時、店主も帰ったあとのビリアード場(南青山の奥まったところ)で主人公の予備校生、村上裕二(2浪、20歳)が、氷川という男(三十男、顔見知りではあるけれど、素性はよく知らない)と2人でビリアードをしていると、中年の男が入ってきて……みたいな始まり。これも大使館とか諜報(スパイ)活動とかが絡んでいる話で、裕二くんは女とともに逃げることになるのだけれど、……それはそれとして。予備校生の設定は「閃光」とほとんど重なっていない。裕二くんは茨城から上京していて、渋谷のアパートから「代々木にある予備校」に通っているらしい。父親は開業医で、頭も悪くなく、跡を継ぐために医学部志望であったけれど、2浪したことでこのままでいいのか、と疑問を持ち始めたらしい(でも、自分が本当にしたいことがわからないという状況らしい)。とりあえず、経済的には義雄&康二よりも恵まれているよね。浪人がらみの話では、ほかには、個人的によくわかるなと思ったのが、街(六本木・赤坂・青山)をただ歩き回ったり、図書館(「赤坂図書館」)に寄って勉強するわけではなく小説を読んだり、とかいう話。私の場合、浪人中、予備校とは逆方向の電車に乗って、知らない街で降りてただ歩き回ったりしたことがあります。そう、どうでもいいけれど、ビリアード屋なら代々木のあたりのところに行けばいいのにね、そうしたら千波くんたち(@高田崇史『試験に出るパズル』)と対決できるかも!? ちなみに季節はこれも夏で、作中の時間は翌朝まで進む。
なんていうか、2篇とも男の子が好みそうな話になっているのかな。ゲーム(暗号解読、玉突き)をすることが、何か大袈裟な背景(国だのスパイ組織だの)を持つ現実の一端につながっている、みたいな。
乾くるみ 『リピート』
2008年3月10日 読書
文藝春秋、2004/文春文庫、2007。いまいちだったかな、星は3つくらい、おすすめ度は2くらいで(ともに最高は5)。※以下、内容にまでちょっと踏み込んでいますので、読まれていない方はご注意ください。いちおうミステリなので、特に。
大学4年生の「僕」(毛利圭介)のアパートに、見知らぬ男から地震を予知する電話がかかってきて(ベタな始まりだよね、電話)、実際にその時刻に地震が起こる。で、次のかかってきた電話で、意識そのままに過去に戻れるのだけれど、そのツアーに参加しますか、みたいなことを言われ、なんだかんだで結局、参加することに。――それはいいのだけれど(よくないか)、毛利くんたちが時間移動するまでに、なんとページにして150ページを超えている! ちょっと紙の無駄ではないかと思う(あ、手もとにあるのは文庫本)。あいかわらず文章を読むのが遅いので、削れるなら削ってほしい。(あとで、同じ作者の『イニシエーション・ラブ』も読んだけれど、そちらのほうが面白かったし、無駄もないと思ったです。)
毛利くんや、電話をかけてきたガイド役の風間のほかにも、そのツアーに参加する人は数人いるのだけれど(合計10人)、そのなかで注目すべき人物はもちろん、浪人生である坪井くん(19歳。下の名前は漢字不明で「カナメ」)。作中年は1991年らしいのだけれど、坪井くんの髪型は<長髪を、茶髪というより金髪といったほうが近いほどまで脱色している>(p.51)とのことで、その当時としては浪人生というよりは、ヤンキー風? 着ているものは……まぁいいか。それより「全体の印象」(もちろん「僕」目線)は、――少し引用しても大丈夫かな、
<全体の印象は、どこか不健康で弱々しいといったものだったが、前髪の隙間から覗く眼差しには、反抗的な色が窺えた。>(p.52)
不健康で弱々しい、というのは、浪人生の描写としてはちょっとステレオタイプな気もする。
この小説でも、東大にいわゆる“足切り”があることが忘れられている気がする(1991年ってあったのでは?)。忘れているのは、時間移動後に東大を受験しようとしている坪井くんかもしれないけれど。ツアーというかは、10月30日から同じ年の1月13日の夜に戻れる、という時間的に限定されたものなのだけれど――主人公のもとに電話がかかってきたのが9月1日で、たぶん坪井の場合もそれくらい――、その1月13日がセンター試験の2日目(最終日)にあたっているので、その試験は受けることができない。で、センターの結果が悪かったという坪井くんが、足切りされずに東京大学の2次試験を受けることは、たぶん無理ではないかと思う。もちろん、もともと東大を目指していて(時間を戻る前の話だけれど)1次はクリアして2次で失敗したという浪人生であるというなら、話は別だけれど。足切りがクリアできたとしても、2ヶ月弱くらいで、東大2次試験の模範解答をほとんどすべて暗記できるのだろうか、この浪人生に?(うーん…)。あ、解答が暗記できなかった場合、とりあえず問題だけ暗記しておいて、時間を戻ったあと、参考書などを見ながら自分で解いたり、人に尋ねたりして答案を作る(それから暗記する)という手もあるか。ただその場合、ゲームセンターで遊んでいる暇はないと思うけれど。
時間を戻ったあとは、浪人生ではなくなってしまうから、どうでもいいのだけれど、少し触れておくと、(『そして誰もいなくなった』ということで?)ほかの参加者と同様、坪井くんも2次試験を受ける前に死んでしまう。ただ、その死に方が「勉強部屋」(離れ)で首をつっての自殺に見せかけられて、みたいな……。これも微妙にステレオタイプな、ある種の受験生像をなぞっている感じがする。殺害のされ方は別に、家を放火されてとか、通り魔に刺されてとか、何でもいいはずなのに。まぁ「高校生の自殺」なんて、雑誌に特集されてしまうくらいありふれた出来事なのかもしれないけれど。ちなみに、坪井くんの家は、足立区の梅島というところにあるらしい(なんとなくアパートで1人暮らしをしている感じがしないでもない。「僕」が電話をかけると、友達だという女の子が出る場面があるからかな)。あと、出てこないけれど、お兄さんがいるらしい。
浪人生がらみのことでは、あと、大学生の「僕」が、時間を戻ったあとで何をするかがはっきりと決まっている坪井くんがうらやましい、みたいなことをどこかで語っていたと思う。毛利くん(あるいは作者)の頭の中では、浪人生というのは、大学に入りたいだけの存在なのか(うーん…)。自分が受験生だったときのことをちゃんと思い出せ? あ、そういえば(話が変わるけれど)センター試験っていつ始まったんだっけ? ――1990年? であれば、1991年はまだ2年目か。風間も「僕」も、自然に「センター試験」と口にしているけれど、ちょっとどうなのかな、いまだに(今年は2008年、になっても)センター試験のことを「共通一次」と言う人っているよね。同じ年を繰り返している風間はともかく、大学4年生の「僕」のほうは、通っている大学が国公立なのか私立なのかわからないけれど(どこかに書かれていたかな)、受けているとすれば、センターではなく共通一次のほうだろうし。
※やけに検索にかかっていたので、ざっと書き直しました(2008/05/28)。
大学4年生の「僕」(毛利圭介)のアパートに、見知らぬ男から地震を予知する電話がかかってきて(ベタな始まりだよね、電話)、実際にその時刻に地震が起こる。で、次のかかってきた電話で、意識そのままに過去に戻れるのだけれど、そのツアーに参加しますか、みたいなことを言われ、なんだかんだで結局、参加することに。――それはいいのだけれど(よくないか)、毛利くんたちが時間移動するまでに、なんとページにして150ページを超えている! ちょっと紙の無駄ではないかと思う(あ、手もとにあるのは文庫本)。あいかわらず文章を読むのが遅いので、削れるなら削ってほしい。(あとで、同じ作者の『イニシエーション・ラブ』も読んだけれど、そちらのほうが面白かったし、無駄もないと思ったです。)
毛利くんや、電話をかけてきたガイド役の風間のほかにも、そのツアーに参加する人は数人いるのだけれど(合計10人)、そのなかで注目すべき人物はもちろん、浪人生である坪井くん(19歳。下の名前は漢字不明で「カナメ」)。作中年は1991年らしいのだけれど、坪井くんの髪型は<長髪を、茶髪というより金髪といったほうが近いほどまで脱色している>(p.51)とのことで、その当時としては浪人生というよりは、ヤンキー風? 着ているものは……まぁいいか。それより「全体の印象」(もちろん「僕」目線)は、――少し引用しても大丈夫かな、
<全体の印象は、どこか不健康で弱々しいといったものだったが、前髪の隙間から覗く眼差しには、反抗的な色が窺えた。>(p.52)
不健康で弱々しい、というのは、浪人生の描写としてはちょっとステレオタイプな気もする。
この小説でも、東大にいわゆる“足切り”があることが忘れられている気がする(1991年ってあったのでは?)。忘れているのは、時間移動後に東大を受験しようとしている坪井くんかもしれないけれど。ツアーというかは、10月30日から同じ年の1月13日の夜に戻れる、という時間的に限定されたものなのだけれど――主人公のもとに電話がかかってきたのが9月1日で、たぶん坪井の場合もそれくらい――、その1月13日がセンター試験の2日目(最終日)にあたっているので、その試験は受けることができない。で、センターの結果が悪かったという坪井くんが、足切りされずに東京大学の2次試験を受けることは、たぶん無理ではないかと思う。もちろん、もともと東大を目指していて(時間を戻る前の話だけれど)1次はクリアして2次で失敗したという浪人生であるというなら、話は別だけれど。足切りがクリアできたとしても、2ヶ月弱くらいで、東大2次試験の模範解答をほとんどすべて暗記できるのだろうか、この浪人生に?(うーん…)。あ、解答が暗記できなかった場合、とりあえず問題だけ暗記しておいて、時間を戻ったあと、参考書などを見ながら自分で解いたり、人に尋ねたりして答案を作る(それから暗記する)という手もあるか。ただその場合、ゲームセンターで遊んでいる暇はないと思うけれど。
時間を戻ったあとは、浪人生ではなくなってしまうから、どうでもいいのだけれど、少し触れておくと、(『そして誰もいなくなった』ということで?)ほかの参加者と同様、坪井くんも2次試験を受ける前に死んでしまう。ただ、その死に方が「勉強部屋」(離れ)で首をつっての自殺に見せかけられて、みたいな……。これも微妙にステレオタイプな、ある種の受験生像をなぞっている感じがする。殺害のされ方は別に、家を放火されてとか、通り魔に刺されてとか、何でもいいはずなのに。まぁ「高校生の自殺」なんて、雑誌に特集されてしまうくらいありふれた出来事なのかもしれないけれど。ちなみに、坪井くんの家は、足立区の梅島というところにあるらしい(なんとなくアパートで1人暮らしをしている感じがしないでもない。「僕」が電話をかけると、友達だという女の子が出る場面があるからかな)。あと、出てこないけれど、お兄さんがいるらしい。
浪人生がらみのことでは、あと、大学生の「僕」が、時間を戻ったあとで何をするかがはっきりと決まっている坪井くんがうらやましい、みたいなことをどこかで語っていたと思う。毛利くん(あるいは作者)の頭の中では、浪人生というのは、大学に入りたいだけの存在なのか(うーん…)。自分が受験生だったときのことをちゃんと思い出せ? あ、そういえば(話が変わるけれど)センター試験っていつ始まったんだっけ? ――1990年? であれば、1991年はまだ2年目か。風間も「僕」も、自然に「センター試験」と口にしているけれど、ちょっとどうなのかな、いまだに(今年は2008年、になっても)センター試験のことを「共通一次」と言う人っているよね。同じ年を繰り返している風間はともかく、大学4年生の「僕」のほうは、通っている大学が国公立なのか私立なのかわからないけれど(どこかに書かれていたかな)、受けているとすれば、センターではなく共通一次のほうだろうし。
※やけに検索にかかっていたので、ざっと書き直しました(2008/05/28)。
黒川博行 「飛び降りた男」
2008年3月10日 読書
『てとろどときしん 大阪府警・捜査一課事件報告書』(講談社、1991/講談社文庫、2003)所収、6篇中の3篇目。舞台が大阪で会話が大阪弁な“ご夫婦小説”であるけれど、どぎつい、こてこてとした感じはなくて、こういう小説(短篇)ならけっこう好きかもしれない。「私」というか旦那さんは(喜んで?)振り回されている感じだけれど、ちょっといたずらっぽい奥さんは、なんていうか、チャーミングです。※以下、内容を少し書いてしまいますので、まだ読まれていない方は、ネタバレにはご注意ください。
大阪府警に勤める「私」(吉永誠一)は、奥さんのデコ(照子)が連れてきた酒井辰子――デコが手伝っている父親の塩干店が泉尾の公設市場にあって、辰子はその近くにある酒井材木店の奥さん――から予備校生の息子(酒井保彦)が巻き込まれた事故というか事件というかに関する相談を受ける、みたいなことから本筋の話が始まる。受験に関することで気になるところは、……ほとんどないかな(涙)。あ、保彦くんはふだんは夜のラジオ番組を聴いているようだ(「ミッドナイト・リクエスト」「オールナイト・オーサカ」)。受験生といえば、夜遅くまで起きていて深夜ラジオを聴いている、みたいなイメージ? なんとなく浪人生よりも現役受験生(高校生)のほうが聴いていそうな気もするけれど、でも、そういえば自分もけっこう聴いていたっけな、番組名が思い出せないけど。
あとのほうでわかるのだけれど、保彦くんは3浪(20歳)である、とのこと。OLのお姉さん(23歳)がいるのだけれど、長男なのだから、2浪してダメだった時点で、家を継ぐことを考えて材木店(従業員は10人近くいるらしい)で働き始めればよかったのにね。……他人事だと思っていいかげんなことを言ってはいけないか。そういえば、志望大学・学部はどこ? ――どこでもいいけれど、浪人生活も長引くとろくなことが起こらない?
大阪府警に勤める「私」(吉永誠一)は、奥さんのデコ(照子)が連れてきた酒井辰子――デコが手伝っている父親の塩干店が泉尾の公設市場にあって、辰子はその近くにある酒井材木店の奥さん――から予備校生の息子(酒井保彦)が巻き込まれた事故というか事件というかに関する相談を受ける、みたいなことから本筋の話が始まる。受験に関することで気になるところは、……ほとんどないかな(涙)。あ、保彦くんはふだんは夜のラジオ番組を聴いているようだ(「ミッドナイト・リクエスト」「オールナイト・オーサカ」)。受験生といえば、夜遅くまで起きていて深夜ラジオを聴いている、みたいなイメージ? なんとなく浪人生よりも現役受験生(高校生)のほうが聴いていそうな気もするけれど、でも、そういえば自分もけっこう聴いていたっけな、番組名が思い出せないけど。
あとのほうでわかるのだけれど、保彦くんは3浪(20歳)である、とのこと。OLのお姉さん(23歳)がいるのだけれど、長男なのだから、2浪してダメだった時点で、家を継ぐことを考えて材木店(従業員は10人近くいるらしい)で働き始めればよかったのにね。……他人事だと思っていいかげんなことを言ってはいけないか。そういえば、志望大学・学部はどこ? ――どこでもいいけれど、浪人生活も長引くとろくなことが起こらない?
今野敏 『隠蔽捜査』
2008年3月10日 読書
新潮社、2005/新潮文庫、2008。読みやすかったし、面白かったといえば面白かったけれど、なんとなく不満足感が残っているのは、なぜ? シリアスさがちょっと足りない気がするからかな。※以下、いつものように内容にまで触れていますので、ご注意ください。
<竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は<変人>という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。>(「警察官僚」に「キャリア」とルビ。文庫カバーより。)
推理小説(ミステリー)かと思って読んでいたら、ほとんどそうではなくて、↑にあるようにどうやら“警察小説”らしい、と気づく。というか、TVのニュースとかを見ていると、あいかわらず省庁の問題は絶えることがなくて(最近では厚生労働省、防衛省、国土交通省あたり)、なもんだから、こういう小説を読むと、なんていうか、ちょっとぬるさというか、ゆるさというかを感じてしまう。うまくいきすぎというか。ある意味でほのぼのとしていて、それはそれでいいと思うのだけれど。竜崎は「正義」の人ではなく「正論」の人らしい。でも、「正論」は「正論」でも、その論理がゆるい…気がする。でも、例えば「現実を見よ」みたいなことを言ってしまうと、私のほうが負け(負け組、負け犬)になってしまうのか。←意味不明?
ちょっとネタが割れてしまうけれど、警察組織内での問題と平行して別の問題が起こる。すなわち、竜崎は、息子の邦彦が部屋でヘ○インを吸っているところを、見つけてしまう。ふつうの(?)お父さんと違うところは、自分が警察関係者であるということ。ふつうの父親であれば、通報するかしないか、自首させるかしないか、みたいなことで悩んだりはしないかと思う、たいていそのまま「隠蔽」してしまう(?)。というか、ふつうの(?)警察関係者であれば、それこそ悩まずに、見て見ぬふりをしてしまう事態なのかもしれない、けれど、「変人」である竜崎はどうすべきかと悩む(1週間以上だっけ? 仕事のほうが忙しかったにしても、意外と長くない?)。でも(“家族小説”としてはパターンかもしれないけれど)それ=犯罪行為というかをきっかけにして、息子は父親に対して本音をぶつけることができて、なんていうか、よかったといえばよかったというか(文庫、pp.205-212のへん)。
<「いつも父さんはそうだ。自分だけが正しい考えを持っていると思っていて、それを俺たちに押しつける」>(p.206)
父親と浪人生の息子の関係が描かれた小説は、過去にもけっこう取りあげてあるので、過去記事(過去ログ)のほうを参照されたし、です。あ、書き忘れていたけれど、竜崎一家にはあと、1つ年上の奥さん(冴子)と就職活動中の大学生(上智大学)の娘(美紀)がいる。お父さん、例によって(?)この娘とのあいだにもちょっとした問題が発生する感じ。それはそれとして、男女1人ずつの子どもがいる場合、やっぱり浪人生は息子のほう、になってしまうのか(うーん…)。ちなみに、家はもちろん(?)警察官僚が安く住めてしまえるマンション。
話が戻ってしまうけれど、息子にしてみれば、有名な私立の一流大学に合格していたのに、東大卒の父親から東大以外は大学じゃない、浪人して東大に行きなさい(卒業後は国家公務員に)、みたいなことを言われれば、やっぱりちょっとぐれるというか、心がささくれだっちゃうよね? お父さんの受験制度肯定論みたいなものも書かれているけれど、やっぱり論理としてはゆるいかな。どうして息子に東大に入って欲しいのか、についても、それほど真剣さが感じられないというか。
そう、そんなことよりも(?)、予備校に売りに来る人(20歳前後くらい)がいてクスリを買ったらしいのだけれど、そんな人が出入りできて(予備校の卒業生?)そんなものが買えてしまう予備校っていったい? 士気が乱れるというか、みんなが落ち着いて勉強できる環境じゃないやね(誰か事務の人とかにチクちゃえばいいのにね。というか、直接警察に電話したほうが早いか)。邦彦くんの東大の合否に関しては、2(続編)が出ているらしいので(3とかも出るのかな?)、そちらを読んでみればわかるのかもしれない。
(感想がだんだんといいかげんになってきているので、もっとがんばって書かないとなぁ…。はぁ〜。)
<竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は<変人>という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。>(「警察官僚」に「キャリア」とルビ。文庫カバーより。)
推理小説(ミステリー)かと思って読んでいたら、ほとんどそうではなくて、↑にあるようにどうやら“警察小説”らしい、と気づく。というか、TVのニュースとかを見ていると、あいかわらず省庁の問題は絶えることがなくて(最近では厚生労働省、防衛省、国土交通省あたり)、なもんだから、こういう小説を読むと、なんていうか、ちょっとぬるさというか、ゆるさというかを感じてしまう。うまくいきすぎというか。ある意味でほのぼのとしていて、それはそれでいいと思うのだけれど。竜崎は「正義」の人ではなく「正論」の人らしい。でも、「正論」は「正論」でも、その論理がゆるい…気がする。でも、例えば「現実を見よ」みたいなことを言ってしまうと、私のほうが負け(負け組、負け犬)になってしまうのか。←意味不明?
ちょっとネタが割れてしまうけれど、警察組織内での問題と平行して別の問題が起こる。すなわち、竜崎は、息子の邦彦が部屋でヘ○インを吸っているところを、見つけてしまう。ふつうの(?)お父さんと違うところは、自分が警察関係者であるということ。ふつうの父親であれば、通報するかしないか、自首させるかしないか、みたいなことで悩んだりはしないかと思う、たいていそのまま「隠蔽」してしまう(?)。というか、ふつうの(?)警察関係者であれば、それこそ悩まずに、見て見ぬふりをしてしまう事態なのかもしれない、けれど、「変人」である竜崎はどうすべきかと悩む(1週間以上だっけ? 仕事のほうが忙しかったにしても、意外と長くない?)。でも(“家族小説”としてはパターンかもしれないけれど)それ=犯罪行為というかをきっかけにして、息子は父親に対して本音をぶつけることができて、なんていうか、よかったといえばよかったというか(文庫、pp.205-212のへん)。
<「いつも父さんはそうだ。自分だけが正しい考えを持っていると思っていて、それを俺たちに押しつける」>(p.206)
父親と浪人生の息子の関係が描かれた小説は、過去にもけっこう取りあげてあるので、過去記事(過去ログ)のほうを参照されたし、です。あ、書き忘れていたけれど、竜崎一家にはあと、1つ年上の奥さん(冴子)と就職活動中の大学生(上智大学)の娘(美紀)がいる。お父さん、例によって(?)この娘とのあいだにもちょっとした問題が発生する感じ。それはそれとして、男女1人ずつの子どもがいる場合、やっぱり浪人生は息子のほう、になってしまうのか(うーん…)。ちなみに、家はもちろん(?)警察官僚が安く住めてしまえるマンション。
話が戻ってしまうけれど、息子にしてみれば、有名な私立の一流大学に合格していたのに、東大卒の父親から東大以外は大学じゃない、浪人して東大に行きなさい(卒業後は国家公務員に)、みたいなことを言われれば、やっぱりちょっとぐれるというか、心がささくれだっちゃうよね? お父さんの受験制度肯定論みたいなものも書かれているけれど、やっぱり論理としてはゆるいかな。どうして息子に東大に入って欲しいのか、についても、それほど真剣さが感じられないというか。
そう、そんなことよりも(?)、予備校に売りに来る人(20歳前後くらい)がいてクスリを買ったらしいのだけれど、そんな人が出入りできて(予備校の卒業生?)そんなものが買えてしまう予備校っていったい? 士気が乱れるというか、みんなが落ち着いて勉強できる環境じゃないやね(誰か事務の人とかにチクちゃえばいいのにね。というか、直接警察に電話したほうが早いか)。邦彦くんの東大の合否に関しては、2(続編)が出ているらしいので(3とかも出るのかな?)、そちらを読んでみればわかるのかもしれない。
(感想がだんだんといいかげんになってきているので、もっとがんばって書かないとなぁ…。はぁ〜。)
梶龍雄 『我が青春に殺意あり』
2008年3月9日 読書徳間文庫、1989。『青春迷路殺人事件』(講談社、1985)が改題されたもの。この作者の小説を読むのはこれで2冊目なのだけれど、なんていうか、さわやかなのとは違うと思うけれど、ちょっとさらさらとしている、というか。少なくともべたついた感じはしないかな。つまらなくはないけれど、どうなんだろう、おすすめ度は2.8くらいで?(100点満点なら56点……、もう少し高くてもいいかもしれない)。※以下、ネタバレにはご注意ください。
<昭和十一年春、京都の老舗の御曹司で慶大生の亀富修一が、東京・芝で殺された。容疑者は二人。一人は被害者の実弟で高校浪人の浩二、もう一人は腹違いの弟で一高野球部の投手・守人。動機は相続争いか、恋のもつれか。折りしも一高と三高の野球対抗戦があり、それぞれの高校の生徒が探偵役となって事件の解明にあたる……。/ニ・ニ六事件に揺れる世相を背景に、モダーンに生きる青春群像を描く推理長篇。>(カバー後ろより。)
だいぶ前に古本屋で↑これを見て、浪人生が出てくる、と思って買ってみたのだけれど、読んでみたら例によって(?)なかなか出てこなくて…(涙)。話には出てくるけれど、本人が登場してきたのが100ページをだいぶ超えてから、だったと思う。(というか、最近、小説を読むことに疲れているので、しばらく読むのをやめようかな…。小説だけでなく本というか、文章全体に対して疲れぎみ。)
野球はもちろん、2校のぶつかる対決だけれど、推理のほうは、最初、独立して調べていた高校生、一高生の宮寺冬樹(文丙、3年)と三高生の芝崎英彦(理乙、2年)の2人が合流して(出会って)協力して調査したり、推理したりしていく。あ、でも、最後のほう、お互いが推理を披露する、みたいな感じにもなっている。「解説」(大内茂男)で初版本(単行本のこと?)にはあるらしい“著者の言葉”が引用されていて、それを読むと、あえて書いているみたいなのだけれど、登場人物やストーリーなどがかなり図式的に整理できてしまう感じ。死体の第一発見者である冬樹くんは、東京で遊びも知っている文学青年で、一方の、京都から上京してくる英彦くん(岐阜出身)は純朴な、医者を目指している理系思考な青年、みたいな。主な犯人候補である2人も、かたやスポーツ青年の一高生(亀富守人)、かたやあまり運動はしていないだろう浪人生(亀富浩二)であるし。その2人には1人ずつアリバイを証明してくれる女の子がいるのだけれど(金藤智子、江川真弓)、その2人も社会的な身分や性格が対照的といえば対照的な感じになっている。
で、注目したいのはいつものように浪人生であるわけだけれど、この小説もなぁ…。浩二くん、まず何浪目なのかがよくわからない(涙)。最初のほうで英彦にもたらされる情報で、「2、3浪」みたいに書かれていたと思うけれど、亀富兄弟のニ男の浩二と、父親の後妻の連れ子(…なんか差別用語っぽくて嫌だな、ほかの日本語はないの?)である三男の守人は、誕生日が数ヶ月違いの同じ年齢なんだっけな…、それも不確かな情報だっけ? でも、もしそうであるなら、守人が3年生(理甲)であるから(その守人がいわゆる“四修”でなければ)、浩二はたぶん(中学を卒業して)浪人3年目であると思う。(なんとなく、この小説の世界では四修での受験、が忘れ去られているような感じがしないでもない。)
志望校は(これも不確かな情報だけれど)一高らしい。三高志望なら実家の京都にそのままいれるのにね。というか、長男の修一(雑誌にすでに小説を発表したりしている、慶應大学国文学科の3年生)は死んでしまうけれど、亀富3兄弟は東京でばらばらに暮らしていたわけか。アルバイトをしているわけでもなく、上の2人はカフェに行ったりとか、遊び歩いてもいるわけで、なんていうか、自分が親だったらみんな一緒に暮らせや、みたいなことは思っちゃうけどね(貧乏人思考ですかそうですか(汗))。
実家は呉服問屋だっけ?(違うか、西陣の着物の問屋? ――同じか)。なのに、和装ではない“モボ”(=モダンボーイ)な格好。銀座のカフェに出入りしていたり、そこの女給と付き合っていたり、金持ちの息子の甘やかされ遊蕩浪人生か、みたいなことも思ってしまうけど(家には「ばあや」がいるし。自炊くらいしろ?)、そう思っていると、読者も裏切られてしまうというか。大学…じゃなかった、高校(旧制)に受からない理由は、これも本人が言っているわけではないので不確かな感じだけれど、勉強ができないからではなく、運が悪いから、不運ゆえ、らしい。――でも、運が悪いというのは、具体的にどういうこと?(本番に弱い…のとはまた違うか)。探偵役の冬樹&英彦が一度、浩二の家に行く場面があるのだけれど、部屋には「一日最低四時間勉学!」と書かれた紙が貼ってある。冬樹たちはそうは思っていないみたいだけれど、4時間って少ないよね? まぁ「最低…」であるし、勉強時間なんて人それぞれかもしれないけれど。そう、この人は予備校には通っていないのかな? 予備校に通っていないなら、東京(「都」ではなく「府」?)にいる意味もあまりないんじゃないかな。
ちなみに、「解説」にも書かれているけれど、作中の時間は……引用してしまうか、「殺人事件が起こるのが昭和十一年五月二日、それが解決されるのが三ヵ月後の八月八日」。冒頭の「第一章」では、前年(昭和10年=1935年)の一高対三高の野球対抗戦などが描かれたりしているけれど。“浪人生小説”では、安岡章太郎の「青葉しげれる」がたぶん1940年の話で、主人公(阿部順太郎)が3浪だから、……時期が重なっているかと思ったら重なっていないや(汗)。昭和11年=1936年というのは、いわゆる“第三の新人”の作家が高校を受験する年よりも、ちょっと前になるのかな。あ、あれ? でも、小島信夫は(中学卒業後3浪して?)1935年に一高(文甲)に入っているのか。小島信夫(1915年生まれ)ってほかの人たち(安岡章太郎とか遠藤周作とか)よりもちょっと歳が上?
関係ないけれど、最後に「蛇足」というのが書かれていて、それがとてもよかったです。
<昭和十一年春、京都の老舗の御曹司で慶大生の亀富修一が、東京・芝で殺された。容疑者は二人。一人は被害者の実弟で高校浪人の浩二、もう一人は腹違いの弟で一高野球部の投手・守人。動機は相続争いか、恋のもつれか。折りしも一高と三高の野球対抗戦があり、それぞれの高校の生徒が探偵役となって事件の解明にあたる……。/ニ・ニ六事件に揺れる世相を背景に、モダーンに生きる青春群像を描く推理長篇。>(カバー後ろより。)
だいぶ前に古本屋で↑これを見て、浪人生が出てくる、と思って買ってみたのだけれど、読んでみたら例によって(?)なかなか出てこなくて…(涙)。話には出てくるけれど、本人が登場してきたのが100ページをだいぶ超えてから、だったと思う。(というか、最近、小説を読むことに疲れているので、しばらく読むのをやめようかな…。小説だけでなく本というか、文章全体に対して疲れぎみ。)
野球はもちろん、2校のぶつかる対決だけれど、推理のほうは、最初、独立して調べていた高校生、一高生の宮寺冬樹(文丙、3年)と三高生の芝崎英彦(理乙、2年)の2人が合流して(出会って)協力して調査したり、推理したりしていく。あ、でも、最後のほう、お互いが推理を披露する、みたいな感じにもなっている。「解説」(大内茂男)で初版本(単行本のこと?)にはあるらしい“著者の言葉”が引用されていて、それを読むと、あえて書いているみたいなのだけれど、登場人物やストーリーなどがかなり図式的に整理できてしまう感じ。死体の第一発見者である冬樹くんは、東京で遊びも知っている文学青年で、一方の、京都から上京してくる英彦くん(岐阜出身)は純朴な、医者を目指している理系思考な青年、みたいな。主な犯人候補である2人も、かたやスポーツ青年の一高生(亀富守人)、かたやあまり運動はしていないだろう浪人生(亀富浩二)であるし。その2人には1人ずつアリバイを証明してくれる女の子がいるのだけれど(金藤智子、江川真弓)、その2人も社会的な身分や性格が対照的といえば対照的な感じになっている。
で、注目したいのはいつものように浪人生であるわけだけれど、この小説もなぁ…。浩二くん、まず何浪目なのかがよくわからない(涙)。最初のほうで英彦にもたらされる情報で、「2、3浪」みたいに書かれていたと思うけれど、亀富兄弟のニ男の浩二と、父親の後妻の連れ子(…なんか差別用語っぽくて嫌だな、ほかの日本語はないの?)である三男の守人は、誕生日が数ヶ月違いの同じ年齢なんだっけな…、それも不確かな情報だっけ? でも、もしそうであるなら、守人が3年生(理甲)であるから(その守人がいわゆる“四修”でなければ)、浩二はたぶん(中学を卒業して)浪人3年目であると思う。(なんとなく、この小説の世界では四修での受験、が忘れ去られているような感じがしないでもない。)
志望校は(これも不確かな情報だけれど)一高らしい。三高志望なら実家の京都にそのままいれるのにね。というか、長男の修一(雑誌にすでに小説を発表したりしている、慶應大学国文学科の3年生)は死んでしまうけれど、亀富3兄弟は東京でばらばらに暮らしていたわけか。アルバイトをしているわけでもなく、上の2人はカフェに行ったりとか、遊び歩いてもいるわけで、なんていうか、自分が親だったらみんな一緒に暮らせや、みたいなことは思っちゃうけどね(貧乏人思考ですかそうですか(汗))。
実家は呉服問屋だっけ?(違うか、西陣の着物の問屋? ――同じか)。なのに、和装ではない“モボ”(=モダンボーイ)な格好。銀座のカフェに出入りしていたり、そこの女給と付き合っていたり、金持ちの息子の甘やかされ遊蕩浪人生か、みたいなことも思ってしまうけど(家には「ばあや」がいるし。自炊くらいしろ?)、そう思っていると、読者も裏切られてしまうというか。大学…じゃなかった、高校(旧制)に受からない理由は、これも本人が言っているわけではないので不確かな感じだけれど、勉強ができないからではなく、運が悪いから、不運ゆえ、らしい。――でも、運が悪いというのは、具体的にどういうこと?(本番に弱い…のとはまた違うか)。探偵役の冬樹&英彦が一度、浩二の家に行く場面があるのだけれど、部屋には「一日最低四時間勉学!」と書かれた紙が貼ってある。冬樹たちはそうは思っていないみたいだけれど、4時間って少ないよね? まぁ「最低…」であるし、勉強時間なんて人それぞれかもしれないけれど。そう、この人は予備校には通っていないのかな? 予備校に通っていないなら、東京(「都」ではなく「府」?)にいる意味もあまりないんじゃないかな。
ちなみに、「解説」にも書かれているけれど、作中の時間は……引用してしまうか、「殺人事件が起こるのが昭和十一年五月二日、それが解決されるのが三ヵ月後の八月八日」。冒頭の「第一章」では、前年(昭和10年=1935年)の一高対三高の野球対抗戦などが描かれたりしているけれど。“浪人生小説”では、安岡章太郎の「青葉しげれる」がたぶん1940年の話で、主人公(阿部順太郎)が3浪だから、……時期が重なっているかと思ったら重なっていないや(汗)。昭和11年=1936年というのは、いわゆる“第三の新人”の作家が高校を受験する年よりも、ちょっと前になるのかな。あ、あれ? でも、小島信夫は(中学卒業後3浪して?)1935年に一高(文甲)に入っているのか。小島信夫(1915年生まれ)ってほかの人たち(安岡章太郎とか遠藤周作とか)よりもちょっと歳が上?
関係ないけれど、最後に「蛇足」というのが書かれていて、それがとてもよかったです。